- gosakuandyeti
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稲川淳二
@Junji_Inagawa
「女の悲鳴が聞えたってさァ」 と言いながらまた、携帯電話を高架橋の下に向けてしばらくかざしてから、 「どうだ、まだ聞えるかァ?」 と聞くと、
2015-05-30 21:29:27
稲川淳二
@Junji_Inagawa
「やだァ、怖いよォ、聞えてるよォ、女の悲鳴だよ・・・・。 これ生きている女の悲鳴じゃないよ。ねえ、何所にいるのォ?」 と、声が震えている。
2015-05-30 21:30:01
稲川淳二
@Junji_Inagawa
B君も何だか気味が悪くなってきて、 「本当に聞えてんのかァ・・・、風の音じゃないのか? 俺達には全く・・・・」 と、携帯が切れてしまった。
2015-05-30 21:30:29
稲川淳二
@Junji_Inagawa
谷底へ行くには、下流から、流れを遡って来る以外、道は無いんですが、 ふたりは懐中電灯の小さな明かりを頼りに、 渓谷の急な岩肌を、僅かな足場を探して一歩一歩、 降りてゆく。
2015-05-30 21:32:36
稲川淳二
@Junji_Inagawa
恐らく、ビルの20階程の高さを、30分ぐらいかけて、 谷底に辿り着くと、 ザアァー、ザ、ザー、ザアァー 勢いよく谷間をぬって流れる水音が、峡谷の岩肌にこだましている。
2015-05-30 21:33:30
稲川淳二
@Junji_Inagawa
ふたりが恐る恐る頭上を見上げると、 遥か上空に高架橋が見えて、 その高架と自分達の中間辺りの、黒い闇の中に、何かの物体があった。
2015-05-30 21:37:26
稲川淳二
@Junji_Inagawa
「ハア ハア ハア ハア ハア ハア」 ふたりはジッと見詰めたまま、何も言わず荒い息遣いをしている。 背筋の辺りがゾクゾクしている。
2015-05-30 21:38:27