魂命を継ぐ幽朧の境界:一日目昼

* 邂逅。其れから──、 *
0
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──境界に着けど、人が居ないのでは謳う事すら出来ないが、ふむ。此れは私が早すぎたのだろうか?  それとも、私が夢を見ているのだろうか。だとしたら、私はとんだお間抜けさんなわけだが、しかして、此処が其処で有る事を証明するに、何かいい方法があっただろうか?」

2015-06-01 12:17:03
【鞘】エピカ @Epica_AO

真白の空間に、ぽつりと影一つ。 片腕には「吟遊詩人っぽい」という至極単純な理由で持ち合わせたハープを担いで、落ち着きなく、忙しなく、辺りを見回している。 「乞えば現れるのだったか。思えば顕れるのだったか」 わくわく、そわそわ。

2015-06-01 12:17:09
【鞘】エピカ @Epica_AO

「……私よ、今はまだ我慢の時だ。  然るべき時が何れ訪れる。今は大人しく、詩人の真似事をしながら竪琴を掻き鳴らし、人を待つのだ──」 白魚の指先が弦に触れれば、辺りに美しい音色が響く。 それは、自分を知らしめる為だろうか。此処に在ると知らせる為だろうか。

2015-06-01 12:17:18
【刃】ペンデ @pende_AO

自身は、光に呑まれた、と認識をした。 故に、伸ばしていた腕をおり、目元を隠し、何かあった時のためにもう片腕は体を起こすために草が生える土の上において力を込めたところだった。 人間の意識とは不思議なものである。

2015-06-01 12:28:21
【刃】ペンデ @pende_AO

コーヒーだと思って飲んだものがココアだった場合、とても不味く感じるのと同じように。 もう一段あると思っていた階段がなかった時に、かくんと脚がなるように。 そう。 手をついているそこは地面じゃない。 草は生えていない。 故に。

2015-06-01 12:28:25
【刃】ペンデ @pende_AO

滑った。 ――ゴッ! 「い゛……!!!!」 後頭部を強打する音と痛みを訴える音はほぼ同時に空間に放たれた。わけで。 結果的に折角の演奏を妨害した、 気がする。すごく。

2015-06-01 12:28:31
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

ひた、ひた、ひたり。 ぺたぺた。 泥だらけの足をひきずるように少女は歩く。 ひたひた。ぺたぺた。 足取りはとても危なっかしいものだった。一歩を踏み出すたびに少女の頭が左右に揺れる。長い髪も、つられるようにゆらゆらと揺れる。

2015-06-01 12:33:07
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

ひた、ひたひた。ぺた。ぺた。 どこへ向かっているのかもわからぬまま、少女は歩く。 ぺたぺたと足音を鳴らしながら、ただただまっすぐに歩いてくる。 少女は今は、それしか考えていない。 歩かなくちゃ。たどり着かなくちゃ。 私が、私であるために──

2015-06-01 12:35:02
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

少女は、それしか考えてない。 だから、ゴッ、なんて、 「ふぇっ」 突然、そんな大きな音が聞こえてくるなんて、もちろん、思ってもいなかった。 素っ頓狂な声を上げた少女は驚きのあまりバランスを完全に崩し、泥まみれの足を滑らせて。 べしょり、と、うつ伏せにその場に盛大に突っ伏した。

2015-06-01 12:37:46
【鞘】ヌシ @nushi_AO

――――ズズッ 耳障りな音が響いた。 真白の空間に、人影が一つ。 ぼさぼさとした緑の髪に、薄汚れた貫頭衣。 やせ細った手足と合わさって、伏したまま、行き倒れのような形でそこに『来た』

2015-06-01 12:40:22
【鞘】ヌシ @nushi_AO

そして、それが勢いよく跳ね起きる。 「新しい土地神様を募集してんですよ! あなたもすぐに神様になれる!」 そのままの勢いで咳き込んで泥を吐く。 しばし沈黙。辺りを見回す。 「まだ、ほとんどいねーじゃねーですか!!」 再び、叫んだ。 泥も吐いた。

2015-06-01 12:40:39
【鞘】ヌシ @nushi_AO

むせて泥を吐きながら辺りを見回す。 「そこの美人のあんたも、探しに来たんですかぃ」 詩人へと一瞥を寄越して、残りの二人を見る。 「そっちの二人は『消えかけ』ですかぃ……ちょっと、まだ消えんでくださいよ」 頭をぶつけたのと、伏せったのを見て半目になる。

2015-06-01 12:40:58
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

空も大地も何もかもが白い『境界』の、純白の空気を震わせる、美しい竪琴の音色。 ーーァァァァ…… そこへ、何処からともなく、雑音が混ざりはじめる。 「ぁぁああああああ〜〜〜!!」 ……男の、絶叫だった。

2015-06-01 12:41:58
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

あのクソバカ……もとい、師、ネリウメの目の前で、境界の揺らぎに飲まれたご老体は、目も眩むような白の世界を、今まさに、頭をおさえながら自然落下していた。 「ぁぁあ!っく、そっ!!《疾風よ!緑の加護よ!我に従え!》」 風圧に、杖を取り落とさなかったことだけが、唯一の救いであった。

2015-06-01 12:42:00
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

男の叫んだ『詠唱』に従い、手にした杖の輝きが増す。 若かりし頃に『契約』を取り交わした、偉大なる風の霊王の魂の欠片が、それに応え。 ーーブワァッ!! 吹き荒れる、一陣の風に乗り。 からくも、登場早々に大地を血に染める事態だけは逃れたものの、強かに腰を打ち付けて。

2015-06-01 12:42:01
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

「ぐ、うぅ、おのれ……」 この場にいない誰かさんへの悪態を心の中で喚きながら、視線を巡らせれば。 「……おい、そこの若人ども!ここが『幽朧の境界』で、違い無いな!!」 不躾に、不機嫌さを隠そうともせず、周囲にいる者たちを一括りに『若人』と呼びつけて。

2015-06-01 12:42:02
【刃】エプタ @ept_Ao

べちゃり 白い空間に小さな音が響く 水──と言うには少々蒼すぎる液体が、放射線状に床に広がりソレがかなりの高所から落ちてきたことを物語っていた 溢れた水は留まることを知らず 慣性のままに 緩やかに動き 穏やかに走り 闇色の髪を濡らし 泥を飲み込んで とまる

2015-06-01 12:42:33
【刃】エプタ @ept_Ao

うぞり、と風もないのに水面が波打つ それは、混乱していた 空になった器に注ぎ込まれた未知のデータはウィルスのように抗体の無い体を 蹂躙し彼にその『場』を学習させていく。 激流のようなソレに壊れた痕も残滓も覆い隠され埋もれていく それはとてもとても苦痛な経験だった

2015-06-01 12:43:22
【刃】エナ @snow___wind

「…っ」 目を開いた、という感覚を得た瞬間。 音を、聴いた… 流れるような、誘うような。だけど、遠いのか近いのか、響く音は儚い。 現状が、把握できず、呆然とする間も、その音の連なりは届いていて。 うとうと…緩やかな眠気を感じて、再び瞳を閉じようとした、その瞬間。

2015-06-01 12:44:19
【刃】エプタ @ept_Ao

それは、えぷたは混乱していた 広すぎる視界に 体液を揺らして伝わる音に 制御しきれない体の剥離に 総じて感じる違和感に 自らの、名に 故に、エプタは もっとも、単純な問題から解決を始めた 体を集める 気化した水蒸気も 髪の隙間に入り込んだ水滴も 泥に混じった体を土ごと運ぶ

2015-06-01 12:45:28
【刃】ペンデ @pende_AO

頭を抱えて悶えていたら、他所から転んだ音が、何か嘔吐音もきこえて、今突風が吹いてついでに水音まで聞こえてきた。 一人だったはずの場所に人の気配がひのふの沢山。 顔を上げれば夜の丘だった場所が真っ白で。 瞬きを数度繰り返し。 「あー…なんだろう、これ」 理解が追い付いていない、現状

2015-06-01 12:47:19
【刃】エプタ @ept_Ao

出来上がったのは小さな水溜まりだった。 咳き込むように水面が波打ち不純物の土や抜け毛を床に吐き出す。 「あーあー、テステス。ほんじつはーせいてんなりーー」 水面に浮かぶ泡が弾ける度に アルトの声が空間を揺らす。

2015-06-01 12:48:43
【刃】エナ @snow___wind

ゴッ べしょり。 「……」 …正直、嫌な予感しかしない音に、再び瞳を開く。 あの音には、覚えがある。 よく、あの子が発していた音だ。 仕方がなく、何らかの対処をしようと、ゆるりと起きあがった。 そこで、自身は横たわっていたのだと気づきつつ、音のない動作で歩き出す。

2015-06-01 12:49:53
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

「はう、あうう」 じたばた。少女はもがく。 まだこの姿に慣れていないから──前がどんな姿だったかなどこの少女は憶えていないけれど──ひとつひとつの動作が稚拙で、覚束ない。 そのうちにぺしゃりと冷たい感触。 はぷー、と間抜けな声を上げながら、じたばた。しばし。

2015-06-01 12:52:31
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──、」 ぱしりとまばたき。額に手を宛てて、目を伏せる。 うーん、うーんと悩むような、考えるような素振りをしてから、再び目を開く。 「──うん、夢では無いらしい」 竪琴の音が不意に止む。エピカはそのまま転んだままの少女へと手を差し伸べた。 「刃鳴りが聞こえる少女、大事無いかな」

2015-06-01 12:54:10
1 ・・ 42 次へ