ミイラレ!第一話:幼馴染と蛇神のこと(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女が久しぶりに再会してなんかするお話。なんかかさばっていたので圧縮しました。 こちらは原文のみとなります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/829522
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

首を傾げ、四季は視線で怜に解説を求める。彼女は小さく溜息をついた。「簡単に言うと、御前さまの分身を憑依させてるの」「朽縄さん、分身できるの?」「条件が揃えばね。今は私に憑依してもらって、私の力を元に分身を作り出す形になるかな」8 #4215tk

2015-03-20 19:40:25
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……それ、怜は大丈夫なの?」眉をひそめ、四季は問いかける。怜は少しだけ目を丸くし、小さく吹き出した。「大丈夫だよ。伊達に今まで修行してきたわけじゃないから」「修行?」「うん。……あ、そっか。まずそこから話した方がよかったか」9 #4215tk

2015-03-20 19:45:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜が居住まいを正し、咳払いをする。そして真っ直ぐに四季を見据えた。「あのね、四季。真面目な話なんだけど」「うん」その真剣さに、四季は思わず唾を飲む。「あの日からずっと、私は怪異に対抗する術を学んできた」「……うん?」「今日から退魔師として四季を守る。よろしく」10 #4215tk

2015-03-20 19:50:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は思わず怜を見つめ返した。彼女の表情は至極真剣だ。彼は額に手を当て、思考を整理する。退魔師とはなんだ。文脈からして怪異と戦う何かか。成る程、怪異がいるのだからそうした……職業?の人間がいてもおかしくはない。わかる。ここまではいい。11 #4215tk

2015-03-20 19:55:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「俺を守るってのはどういうことさ」目を開いた四季は開口一番そう聞いた。「その……これから行く高校って、都会だろ?そういうとこには怪異なんていないんじゃ」「考えが甘すぎる」ぴしゃりとした言葉に、四季は口を噤んだ。怜が呆れたように息を吐く。12 #4215tk

2015-03-20 20:00:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「怪異なんてどこにでもいるよ。そりゃあ、力の強い連中はあそこみたいな田舎にしかいないだろうけど」怜が言葉を続ける。その首元で、朽縄御膳が頷いて同意を示していた。「それでも、人に危害を加える怪異は都会にもいる。向こうに行って、そういうのに襲われたら困るでしょ?」13 #4215tk

2015-03-20 20:03:31
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜の言葉に、四季は何も答えられない。とても残念なことに、向こうにも怪異がいるとしたら間違いなく遭遇するのが目に見えているからだ。怪異を集める体質はともかくとして、彼自身は喧嘩の経験もないただの人間である。敵意のある怪異に絡まれたらなす術がない。14 #4215tk

2015-03-20 20:06:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「四季の体質は退魔師の間でも知られてさ。これは何か対策が必要だって話になってて」「待って。そんな評判になってるの?」「そりゃあ……天狗とか山姫とか、そういう精霊級の怪異を引き寄せる人間ってそうはいないしね」あっさりと同意の意見。四季は小さく肩を落とす。15 #4215tk

2015-03-20 20:14:24
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「だから対策の一環としてまず私が四季を守る。で、それでも寄ってくるであろう怪異は周辺の退魔師が対応する!そういう段取りになったから」「なったから、って。そんな勝手に決められても」『妾の管轄内で退魔師が下手に動くと、近隣の怪異を刺激しかねんからの』16 #4215tk

2015-03-20 20:15:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は朽縄御前にしかめ面を向ける。『それにお主はまだ運のいい方じゃ。隔離しようなどどいう案も出ておったようじゃからの。退魔師の内では』「えー……」顔を歪める四季に、慌てて怜が口を開く。「そ、そういうのは一部の過激な奴だけだから!他の人たちはもっとまともだよ」17 #4215tk

2015-03-20 20:18:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ、実際どれくらい怪異が騒ぎ出すかは向こうに行かないとわからないし。大したことがないようだったら、すぐにでも……四季?」怜が訝る。不意に四季が反物から身を乗り出したからだ。「どうかした?」「……いや。やっぱお世話にならなきゃダメそうだなって」18 #4215tk

2015-03-20 20:21:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季はすぐに頭を引っ込める。一拍遅れて、反物が揺れた。かろうじて反物を掠めて急上昇していった影が見えた。怜が厳しい顔つきで頭上を見やる。彼らの頭上で、人型の影が大きくその手を……否、翼を広げていた。腕の代わりに生えた翼は、その体躯に比べて不釣り合いに大きい。19 #4215tk

2015-03-20 20:24:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「四季」「なに?」突如出現した怪異を見上げていた四季は、振り向くことなく怜に答える。「あれは知り合い?」「……いや。初めて見る奴だ」「そう」彼女は無感情に言った。「振り切れるかやってみる。掴まってて」四季は慌てて反物を握りしめる。20 #4215tk

2015-03-20 20:27:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

同時に反物が加速!四季は必死にしがみつき、吹き飛ばされぬよう持ちこたえる。対する怜は片膝を突き、上を見上げていた。その視線の先では大翼の怪異が食らい付いてきている。嘲るかの如く、ぴたりと付いて離れる気配がない。彼女は小さく舌打ちした。21 #4215tk

2015-03-20 20:30:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『来るぞ』「わかってる!」朽縄御前の言葉に怜が答える。途端、反物が急停止した。その鼻先を、頭上から降ってきた怪異が掠めていく。続いて反物が急旋回。紙一重で上昇してきた怪異を回避!「四季、大丈夫?酔ってない?」「な、なんとか」顔を上げ、彼はそれだけ答えた。22 #4215tk

2015-03-20 20:33:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……しつこい。迎撃するよ」「えっ、ちょっと!」四季の制止に構うことなく、怜は左腕を大きく振り上げた。腕から赤帯が解け、急降下せんとしていた怪異めがけて飛んでいく!怪異が回避するより早く、赤帯はその体に巻きつき、締め上げ始めた。怪異が苦悶する。23 #4215tk

2015-03-20 20:36:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「よし。どうかな、御前さま」『問題ない。あの程度の怪異なら縛り付けておけるの』怜と朽縄御前の言葉を聞きながら、四季はもがく怪異を眺めていた。翼を封じられたわけではないので、落下することはないだろう。余程きつく縛り上げられたか、こちらを追う余裕はなさそうだ。24 #4215tk

2015-03-20 20:39:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

不意に動き始めた反物に、四季は危うくバランスを崩しかけた。先ほどではないものの、かなりの速度で反物が飛行を再開する。ぐんぐん引き離されていく怪異を、四季は尚も見続けていた。見続けて……異常に気づく。怪異の形が崩れ、赤帯の隙間から零れ落ち始めている。25 #4215tk

2015-03-20 20:42:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ねえ、怜」「どうかした?」「後ろの怪異の様子が」その言葉に怜が怪訝な顔で振り向く。その頃には、怪異は原型を失い、砂状となって落下を始めていた。怪異の塵は四季たちと同じ高度で不自然に停止。どんどんと降り積もり、先ほどと同じ翼腕の人型を取る。26 #4215tk

2015-03-20 20:45:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「伏せて!」怜の声。咄嗟に身を沈めたその上を、怪異の翼が撫でていく。身を起こし、振り向いたその先には怪異の姿。こちらへと向き直り、進路を塞ぐようにその場で羽ばたいている。その段階になって、ようやく怪異の全貌を見ることができた。27 #4215tk

2015-03-20 20:48:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

腕だけを除くなら、ほとんど人間と変わらない体格。燕尾服を身に纏い、シルクハットを被っている。その顔はうかがい知れない。夕日の中であるにも関わらず、不自然な影がかかっているからだ。両腕から伸びるのは、体全体を覆わんほどに巨大な黒い翼。28 #4215tk

2015-03-20 20:51:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

後方から舞い戻ってきた赤帯が怜の左腕に巻きつく。彼女は朽縄御前とともに怪異と対峙した。燕尾服の怪異が言葉を発する様子はない。退魔師と怪異の間に緊迫した空気が流れる。どちらかが動けば、戦いが始まる。四季にさえそうわかる空気が。29 #4215tk

2015-03-20 20:54:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!:幼馴染と蛇神のこと】♯2終わり。♯3へ続く #4215tk

2015-03-20 20:54:27
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

(やー、こんにちは。久しぶりだね。この話覚えてる人、いる?更新したのもう二週間以上前だからね……ああ、ボクのことはどうでもいいよ。初対面だしね、キミらとは。早くボクにも出番が欲しいとこだ。まったくいつになることやら!……ああいけない。あらすじを読みに来たんだった) #4215tk

2015-04-10 22:09:49
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

(まず、そうだな。これは四季の話なんだ。覚えてる?日条四季。そう、怪異にやたら好かれるあの人間の男の子。ボクみたいのから見ればすごく魅力的なんだけど、人間からすればどうなんだろうね?……話が逸れた。ともかく、今あいつ高校に通うため引越しの最中なんだよ) #4215tk

2015-04-10 22:12:07