艦これ二次創作【バーニング・コオリヤマ】#5

世界全土を深海棲艦が分断し、海上交通が途絶した未来。人々は原始的共同社会に回帰し、そこに馴染めぬアウトローは洋上のフロンティアへと掃き捨てられた。ヤクザ同士の抗争を大企業群の非合法技術開発試験が加速する。ここはチバシティ。世界に見捨てられ、国土再編を強いられた日本の番外地だ。
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けろきゃ @k6ky

それを確かめるためには、再び指輪を使ってみるしかない。そのためには当然、一緒に指輪を使う艦娘が必要だ。ざわついて冴えない頭でそこまで考えたところで、外を警戒していた不知火が入ってきた。「元マキノ研の方もそろそろ落ち着いてきたようです。急な話だというのに、手際のいいことです」 22

2015-06-14 11:55:23
けろきゃ @k6ky

「データ上もコオリヤマの資産や構成員は概ね片付いたようだ。俺達が二人してよほどのヘマをやってない限り、もう安心だろう」「そうですね」不知火が曖昧な会話を続けているので、ナカムラは自分から切り出すことにした。「今後のことなんだが」 23

2015-06-14 12:00:18
けろきゃ @k6ky

「契約の期間を決めてなかったな。急いでいたし」不知火がナカムラを護衛し、ナカムラが不知火の経済面を支える契約。まさか一晩で事態が解決するとは思わなかったため、期間の設定を後回しにしてしまった。護衛という需要がなくなったナカムラに対し、不知火の雇用は宙に浮いたままだ。 24

2015-06-14 12:05:34
けろきゃ @k6ky

不知火はコオリヤマ・ヤクザクランからの一方的な契約を嫌ってナカムラの元へ来た。1隻だけの艦隊という経験は今後のキャリアにも有利に働くと思ったし、たまには集団行動から離れて思うままに動きたいという気持ちもあった。 25

2015-06-14 12:10:17
けろきゃ @k6ky

ナカムラの助けがあったとはいえ、結果的に1隻で"ニンジャ"川内の攻撃を凌ぎ、6隻の艦隊を突破した。冗談のような戦果だが、コオリヤマ残党を警戒して公表はできない。不知火の境遇は、破滅した研究所に所属していたフリーの艦娘という、足元を見られる状態のままだ。 26

2015-06-14 12:15:31
けろきゃ @k6ky

「ええと、そのう…」当初の予定通りにするためには、ナカムラに雇い続けてもらうしかない。だがナカムラにはその必要がもうない。何か説得材料はないかと焦る不知火の目が泳ぐ。「艦娘との共同作戦はなかなか面白かった。仕事の幅も広がりそうだし、お前さえよければもう少し継続したいが」 27

2015-06-14 12:20:45
けろきゃ @k6ky

「え? あ、はい、不知火は構いません」思いもよらない言葉に不知火はますます動揺を見せる。「とりあえず一年間でどうだ。補給や整備なんかは分からんから、必要なことがあれば言ってくれ。あとは衣食住があればいいんだったな?」「はい」不知火はもはやコクコクとうなずくだけだ。 28

2015-06-14 12:25:45
けろきゃ @k6ky

困っているところに付け込んだようで、ナカムラは気が引けた。共同作戦が面白かったのは嘘ではないが、突きつめれば人体実験まがいの行為へ繋がる指輪への興味は伏せたままだ。仕事の幅云々に関しては大嘘もいいところで、ナカムラの基本方針と真っ向から反する。これはいずれ気付かれるだろう。 29

2015-06-14 12:30:18
けろきゃ @k6ky

「17番メガフロートに前から勧められてた部屋があるんだ。広すぎるんで断わってたが、二人で住むならちょうどいい。まずはそこへ移動しよう」後ろめたさを振り切るように、ナカムラは不知火を急かす。「わかりました。では司令、あらためてご指導ご鞭撻、よろしくです」 30

2015-06-14 12:35:14
けろきゃ @k6ky

【バーニング・コオリヤマ】終わり。【サプライ・エクスパティション】に続く。

2015-06-14 12:35:24