ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鉄条網が傷口を縫合しようともがく。無益だ。アナイアレイターの左肩、左腕、左腿はごっそりと失われていた。粉塵で満たされたヤグラ337展望部。多量の血と重金属を撒き散らしながら、たたらを踏み、弱々しく明滅する金色の眼で、稲妻めいた速度のアンブッシュを仕掛けた敵を捉えようとした。 25

2015-06-13 17:22:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

落下と共に一撃くわえたのち、ドラゴンベインは回転跳躍で距離を取り、大業物ツラナイテタオスを背負い、左手左膝右足の三点で着地した。フルメンポの奥で古強者英雄めいた眼光がギラリと閃いた。勇気、決断、油断の無さ、無慈悲を兼ね備えた戦士の眼だ。「アバッ……」アナイアレイターが震える。26

2015-06-13 17:27:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

致命傷であることは間違いない。だがドラゴンベインはそもそもアナイアレイターを一撃で槍の染みに変えるつもりであったのだ。死に際のアーチニンジャ憑依者がいかなる悪あがきに出るか知れたものでなく、慎重なザンシンを必要とした。「アバッ」鉄条網が露出した肋骨に巻き付き、断裂面を這う。27

2015-06-13 17:33:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アナイアレイターの足元から展望部の床の四方八方に伸びていた鉄条網が崩れながら収縮する。本体の命を繋ごうとしているのだろう。それらは見る間に乾き、散ってゆく。展望部の端から外を見渡せば、おそらくニチョームの隔壁を覆っていた攻性の鉄条網防備が衰えてゆく瞬間を目にできるはずだ。 28

2015-06-13 17:38:30
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「ヤン……ナルネ……」人ならぬ声がアナイアレイターの口から発せられた。「卑しきニンジャ……下がりおれ……我はフマー・ニンジャなり……三界にその名轟かせ……アバッ……かような……」「滅びよ、闇の獣め」ドラゴンベインが言った。アナイアレイターは後ろに倒れかかり、踏みとどまる。 29

2015-06-13 17:44:18
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「イヤーッ!」ドラゴンベインはスリケンを投げた。「アバーッ!」アナイアレイターはよろめく。効きが悪い。ドラゴンベインの知らぬ事だが、フマー・ニンジャ、すなわちマスタースリケンなのだ。「シューッ……」ドラゴンベインはアフリカのアセガイ投擲者めいてツラナイテタオスを構えた。30

2015-06-13 17:47:59
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「イヤーッ!」そして、投げた!ナムサン!ツラナイテタオスは投げ槍である!槍の柄から伸びる長い鎖は投擲者の手首と繋がっており、巨大質量投擲で敵を粉砕したのち、鎖を引いて手元に戻す、まさにニンジャにのみ使用が許される武器だ!だがその時、ドラゴンベインの右踵は削げて飛んだ! 31

2015-06-13 17:53:28
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「アバーッ!」アナイアレイターの身体をツラナイテタオスがかすめた。引き裂かれた巨体は吹き飛び、ガラスの爆ぜた窓から零れるようにして塔外へ転落した。ドラゴンベインはバランスを崩しながら、粉塵の中、アンブッシュ者を見極めんとする。その者は低く床に伏せている。その手にククリナイフ。32

2015-06-13 17:56:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドラゴンベインは瞬時に状況判断した。右足の負傷は軽くはなさそうだった。ツラナイテタオスを引き戻す力を得られるか?彼は迷わず手首のリングを脱落させた。ツラナイテタオスは失われた。「イヤーッ!」ドラゴンベインはカワラ割りを打ち下ろす。「イヤーッ!」アンブッシュ者は転がって回避!33

2015-06-13 18:01:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

転がって躱しながら、その者はドラゴンベインの手首をナイフで裂きにいく。手甲がこれを防いだ。ドラゴンベインもまた床を横へ転がり、ひとまずの間合いを取る。粉塵が空へ逃れて薄れるにつれ、敵の姿が明らかになる。メンポをせず、顔には迷彩ペイント。「ドーモ。フォレスト・サワタリです」34

2015-06-13 18:06:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ドラゴンベインです」「司令部へ単騎突入とは、後先かえりみぬヤバレカバレのイクサよ。我が軍の勝利は近いと見える」フォレストはブツブツと呟く。「サイゴン・ロアはお前の踵を奪った。そう容易くは動けぬぞ。ジャングルはお前を呑み込み、暗い沼の底に捕えて逃す事はない……」35

2015-06-13 18:10:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブリキの城の守りは剥がれた」ドラゴンベインは無感情に言った。「サラバだ」「サイゴン!」フォレストはナイフを投擲!「イヤーッ!」ドラゴンベインは側転回避!「サイゴン!」フォレストはマチェーテを投擲!「イヤーッ!」ドラゴンベインは連続側転回避!「サイゴン!」「イヤーッ!」 36

2015-06-13 18:16:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その逃げ足は負傷ゆえに十分ではない!フォレストは床を蹴り、新たなマチェーテを引き抜きながら一気に間合いを詰める。「サイゴン!」「イヤーッ!」ドラゴンベインはフリップジャンプを繰り出し、展望部から脱出!フォレストはなおも追う!しかしここでIRC通信が入った!『通信が戻ったわ!』37

2015-06-13 18:19:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!別働隊がミッションを成功させたのだ。フォレストは展望部の淵まで走り、屋上から屋上へぎこちなく跳びわたるドラゴンベインを見た。『深追いはしないで!状況がマズい事に……』「視認できる」フォレストは通信に応えた。彼は鉄条網の失われた隔壁と……突破される南北のゲートを見た。38

2015-06-13 18:25:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストコココピロペペー。パーオウー。展望部、破壊された調度に混じったディジタル時計が液晶表示を光らせ、緊張感に欠ける時報を鳴らした。フォレストは身を翻した。10101600。『望みはまだ……望みは……繋がないと』ネザークイーンの通信に、フォレストは答えを返さなかった。 39

2015-06-13 18:33:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストコココピロペペー。パーオウー。展望部、破壊された調度に混じったディジタル時計が液晶表示を光らせ、緊張感に欠ける時報を鳴らした。フォレストは身を翻した。10101600。『望みはまだ……望みは……繋がないと』ネザークイーンの通信に、フォレストは答えを返さなかった。 39

2015-06-14 17:35:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「壁が!」ヤモトは目を見張った。然り、それはニチョームの反撃を支えた鉄条網壁が無力化される瞬間であった。セントールの背に立つ彼女は頭を巡らせ、粉塵を噴き上げるヤグラ337ビルディングをもう一度見た。ジツの主……アナイアレイターの身に何かが起こったのだ。 41

2015-06-14 17:41:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニイイーッ!」セントールが嘶き、前足を高く上げた。透明ヤクザがバリケードじみて前方に集まっていることを、その嗅覚でかろうじて察知したのだ。「「ザッケンナコラー!」」透明ヤクザはセントールとヤモトめがけ、サイレンサー付きチャカ・ガンの一斉射撃を行う。「ニイイーッ!」 42

2015-06-14 17:43:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セントールはサスマタを風車めいて動かし、ヤクザサイレンサー銃弾を弾き返す。しかし防ぎきれるものではない!数発がその巨体をかすめ、バイオ血液が散る。ヤモトは放物線を描くサクラ・エンハンスト・オリガミ弾を撃ち返した。「「「グワーッ!」」」透明ヤクザが爆発を受けて姿を現し、倒れる!43

2015-06-14 17:45:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ありがとう」ヤモトは呟く。セントールは彼女への銃弾をも防いだ。その言葉無き行動には、共に戦う者に対するリスペクトが感じられた。過酷なこのイクサの中で、その感覚は想像以上にヤモトの気力を支えた。「スッゾオラー!」生存透明ヤクザが第二射を構える。「イヤーッ!」「グワーッ!」44

2015-06-14 17:52:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

付近の雑居ビルから落下してきたファーリーマンがヤクザの頭上から襲い掛かり、素早いボー・カラテで生き残りにトドメをさした。「ニイイーッ!」セントールは地を蹴り、再び走り出す。「イヤーッ!」ファーリーマンは巨大な毛玉めいて回転ジャンプし、その脇腹にしがみついた。 45

2015-06-14 17:54:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ZZOOOOOM……DDDDOOOOM……セントールの背で、ヤモトは遠く破滅的な地響きを聴く。「ゲート、破られた」脇腹にしがみつくファーリーマンが言った。「北と南、どちらも。棘の悪魔。倒されたか」その声音には隠しようのない苛立ちがある。彼はヤモトに対してもよそよそしいままだ。46

2015-06-14 17:59:05