ビラ配りのアルバイトをしていたところ、昔首になった会社の社員に嘲笑された話

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アトレティコ・アドリー @rrrt77

自殺男は持ち前の発達障害ぶりが災いし 勤務先を解雇された後2ヶ月近くに渡る半ホームレス生活を経験 自害の一歩手前までいった段階でようやく最底辺アルバイト(ビラ配り)にありついた

2015-06-17 12:53:07
アトレティコ・アドリー @rrrt77

その現場が悪いことに、以前首になった会社の目と鼻の先なので (これはしかしよくよく考えれば偶然というわけでもなく 結局のところ自殺男のくすぶっている地方小都市においては どのような形態のどのような職種であろうと、勤め先となりうる エリアは極めて限定されてしまうのだ)

2015-06-17 12:53:59
アトレティコ・アドリー @rrrt77

自殺男は嫌な胸騒ぎを抱きながらも 何千もの迷惑げな視線にさらされつつ ひたすら恥と罪過を重ね、小銭を集める日々を送っていた

2015-06-17 12:55:13
アトレティコ・アドリー @rrrt77

ある日、現場の収まるショッピングモールに ある小太りの中年女性が入ってくるのが目に入った 自殺男はとてもとても嫌なものを見た気がした

2015-06-17 12:57:54
アトレティコ・アドリー @rrrt77

その女性は以前の勤め先の社員で 個人的な接触は少なかったものの 嗜虐性を持った人物であることは、会ってものの1分弱で把握できた 人を見かけで判断してはならないと言うフレーズは 善人そうな人間の裏を疑う際に使うべき教訓であり

2015-06-17 13:03:15
アトレティコ・アドリー @rrrt77

悪そうに見える人間は実際のところまず間違いなく悪であることを 自殺男は賎陋きわまる人生から理解できていた。 その出来損ない様が祟って人の悪意にさらされ続け、 人間の害心の一種ソムリエと化していた、 自殺男の鋭敏化されたレーダーが

2015-06-17 13:09:59
アトレティコ・アドリー @rrrt77

この女とだけは深く係わり合いになってはならないと 強く警告を発していた。 その女は常日頃から自殺男の惨めな過去や 日々の失敗の原因、その際の精神状態などを善人顔で問いただしては

2015-06-17 13:12:32
アトレティコ・アドリー @rrrt77

その都度今語り聞いた内容を 即座に他の従業員の前で面白おかしくコント仕立てに話して 笑いを取る歪んだ嗜好を持っていた。 これに対し自殺男は、彼女の毒牙にかけられていると自覚できてはいるものの、 一度その会社に収められてしまっている以上

2015-06-17 13:15:02
アトレティコ・アドリー @rrrt77

場がもたらす強制力が元凶で ただただ卑屈なピエロとなり下り、相手の思うがまま すべての情報を吐き出し もてあそばれ続けるより他なかった。

2015-06-17 13:26:33
アトレティコ・アドリー @rrrt77

首になる直前などは、 中年女性は自殺男を社会で生きていくことが根本的にできない失敗作と嘲笑し 現実問題奴にできる仕事はビラ配り程度だろうから ここで雇用されている意味が理解できないと 社内における群集攻撃意識を扇動していた。

2015-06-17 13:27:23
アトレティコ・アドリー @rrrt77

それが滑稽なことに現実の類となってしまっており  汚辱にまみれた生涯を送り続け、恥も何もなくした  自殺男を持ってすら  彼女にだけはあわせる顔がなかったのだ。

2015-06-17 13:29:04
アトレティコ・アドリー @rrrt77

その女が、また現れたのだ。 自殺男は冷たい絶望に打ち震えた。 ただその日は、それだけで終わった。 彼女は自殺男から20メートルほど離れたスペースを 何か探しているのかぶよぶよ移動し そのまま表に去っていった。

2015-06-17 13:39:41
アトレティコ・アドリー @rrrt77

しかしながら自殺男は不安でならなかった。 彼が絶えず衆目の目にさらされ続ける身でありながら彼女の 存在を察っせた以上、 向こうは向こうで既に自殺男に気づいているのではないかと懸念されたためだ。

2015-06-17 13:42:45
アトレティコ・アドリー @rrrt77

自殺男はその生来の挙動不審振りが災いして プライベートで街中にいる姿を発見したと 数少ない知人達(決して友人ではない)から後に報告されることが多かった。

2015-06-17 13:46:18
アトレティコ・アドリー @rrrt77

「どこそこでお前をみた、『特徴的』だからすぐにわかったと」せせら笑われ そしてそのつど自殺男は己の業と向き合わねばならなかった。 だが逆に彼が外界で他者の存在を察知できたケースは 皆無と言っていいほどなかった。 それはそれで彼の注意欠陥性に由来していた。

2015-06-17 13:50:34
アトレティコ・アドリー @rrrt77

だから自殺男はこれまでその発見効率の不平等性を 彼というゴミの象徴的現象と捕らえ 深くうらみ続けて生きてきた。 その自殺男が、向こうの存在に気が付けたのである。 ならば相手が本物の中年女性社員あった場合 向こうもまた自殺男に気づいていないわけがなかった。

2015-06-17 13:58:29
アトレティコ・アドリー @rrrt77

だから自殺男はそれが他人の空にであることをひたすらにこいねがったが 過去の経験上、おそらくはその祈りが無残に踏みにじられるであろうことを 薄々理解できていた。

2015-06-17 14:00:48
アトレティコ・アドリー @rrrt77

はたして中年女性は一週間後またやってきた。 確かに確かに同じ女であった。 あんな小太りの中年女性など、よく考えれば日本中のどこにでもいるではないか 自殺男は必死で自分に言い聞かせた。

2015-06-17 14:06:15
アトレティコ・アドリー @rrrt77

女性はあちらこちらに顔を現しては消えた。 仕事中の自殺男が感知できている範囲内でそれであるので 実際彼と中年女性を結ぶ空間に遮蔽物が存在しない時間帯はずっと長くあったはずで

2015-06-17 14:11:17
アトレティコ・アドリー @rrrt77

自殺男は邪悪なもぐら叩きのごときその存在に怯えた。 すでに仕事どころではなくなっていた。 最終的に、自殺男は背後から何者かに、名前を呼ばれた気がした。

2015-06-17 14:13:53
アトレティコ・アドリー @rrrt77

嫌な予感に拍車がかかった。 振り向いてはならないのだ。 自殺男は相手の邪意に勘付いていた。 話があるなら、直接目の前にやってくればいい、そんなやり方をするのを見るに 結局それはただの「鎌かけ」なのである。

2015-06-17 14:20:57
アトレティコ・アドリー @rrrt77

その呼びかけに自殺男が反応するかどうか 中年女性は試したのだ。 それは実にその女らしい陰湿な手法であった。 結局のところ自殺男によく似たゴミがいるとまでは 彼女は見抜けていたようであったが 遠めに見守る段階で、本人であるとの確証は得られようがないのだ。

2015-06-17 14:26:47
アトレティコ・アドリー @rrrt77

それは実際には懐から身分証明書を強奪して確認でもせぬ限り困難な作業であるはずだった。 ゆえにそうやって遠く背後からの声かけで実験し 万一ターゲットが思い浮かべたゴミ本人でなかろうと 恥をかかぬよう逃げ道を用意したのだ。

2015-06-17 14:29:05
アトレティコ・アドリー @rrrt77

そこまでの内容が嫌というほどわかりきっていたがゆえに 自殺男は瞬時には身動きせず 30秒ほどしてからようやくきびすを返した。 25メートルほど彼方を もはや心底恐れたそいつかどうかも定かではないほど 小さくなったそいつがぶよぶよ表に出て行くところであった。

2015-06-17 14:31:29
アトレティコ・アドリー @rrrt77

自殺男はぞっとしながらその後姿を見送っていた。 即座に応答せぬことによって、はたして女性の襲撃はやり過ごせただろうか? 自殺男は仕事終了後泣きながら家に逃げ帰り その日の夜は数え切れぬ悪夢にうなされ続けた。

2015-06-17 14:36:46