HS式無熱高周波療法裁判:差し戻し控訴審ー裁判所はどのようにして「人の健康に害を及ぼす虞」を判断したかー

医療系国家資格を持たず、HS式無熱高周波療法を業としていた者があん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法第12条違反(医業類似行為の禁止)に問われた裁判。 最高裁はこの事件で医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼす虞のある行為」に限局する旨を判示。 そのため整体師やカイロプラクターなど、医療系国家資格を持たない者が業務を行う上で、自らの合法性の根拠とする判例である。 続きを読む
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びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

鑑定結果が対立したのでK(東北大学医学部放射線医学教室教授)に鑑定を依頼。 有害と鑑定する。

2015-06-18 02:18:02

そこで、当審においては、さらに、東北大学医学部放射線医学教室教授Kに鑑定を命じたのであるが、その鑑定書によれば、まず、温熱の点は、特別の場合を除いて特記すべき温度上昇を招来することはないし、発振される電流が高周波であることもまちがいとしている。

しかし
『電極を装置した後ダイアルをLに置いて通電すると、初めは、皮膚に弱い微妙な異常感が起こる。ダイアルをLからHに進めるに従い、この感覚は低周波交流刺戟に際して観ぜられるごときシビレ感となり、さらに、筋肉はピリピリと○搦反応を起こす。ダイアルをHに廻すと、ついに強直性の攣縮を起こす。逆に、ダイアルをHに置いて通電するとショック的感覚とともに強直性攣縮に入る』

ということで、結局、このHS療法は

『実効的には、電気的刺戟を高周波の形で求めた一種の電気療法で、この治療器は電気刺戟器としては充分な電気刺戟力を保有しているから、使い方によっては、人の健康に害を及ぼす危険性を保有している

と結んでいる。

K鑑定人は、前記のごとく、M、Iの両鑑定人とO鑑定人とが、低周波交流刺戟の有無の点で対立していることに、特に留意し、被検者として東北大学医学部放射線医学教室の医師7名と技師1名を選定して、実験を重ねた結果、HS波は高周波ではあるが、その波高の不規則性から変調効果を来して、刺激作用を起こすに至ることを明らかにし、詳細な実験の経過を報告しているのであるから、いわば第三者の吟味という立場からも、これを信用すべきものであり、したがって、これと結果を同じくするO鑑定人の鑑定も、また、信用すべきものと認めなければならないのである。


びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

裁判所は "K鑑定人は、前記のごとく、M、Iの両鑑定人とO鑑定人とが、低周波交流刺戟の有無の点で対立していることに、特に留意し、” とし、

2015-06-18 02:18:50
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

"いわば第三者の吟味という立場からも、これを信用すべきものであり、したがって、これと結果を同じくするO鑑定人の鑑定も、また、信用すべきものと認めなければならないのである。" と述べている。

2015-06-18 02:19:10
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

そんなわけで "この両鑑定によれば、本件HS式高周波器による電気療法は、 人の健康に害を及ぼす危険のあることが明らかであるから、 この療法をくりかえした被告人の原判示の医業類似行為は、 人の健康に害を及ぼすおそれのあるものと認めるのが正当” と裁判所は判断。

2015-06-18 02:19:44
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

弁護人は、 "HS式高周波器そのもののーー物理的ーー有害性が問題となるのであって、使い方のいかんは関係がない” と主張した。

2015-06-18 02:20:02
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

それに対し裁判所は "この治療器が、それ自体、絶対に人体に有害なものであれば、医師といえどもこれを使用することを許さないのが当然のことで、

2015-06-18 02:20:35
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

むしろ、その有害が相対的な場合、 すなわち、被療者の体質(禁忌症)、病状または使用方法のいかんによっては、 危険発生の可能性がある場合に問題が残るのである。" と述べている。

2015-06-18 02:21:12
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

"HS式高周波器は、その通常の用法においてすら、既に、健康体に対しても、シビレ、強直性攣縮を起こすのであるから、 被療者が電気に対する禁忌症その他病気のある場合には、ショックによる不測な危険の発生することが当然に考えられるのである。"

2015-06-18 02:21:54
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

使用方法として、 "通電の強弱は症状によって決めるのではなく、 被療者が痛みを感ずれば、ダイアルを弱に回すというのであるから、 科学的妥当性に乏しく、” と述べ、

2015-06-18 02:22:16
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

"その間に、O、K両鑑定人の指摘する攣縮、ショックを誘発する危険のあることが明らかである。" と判断している。

2015-06-18 02:22:34
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

そして公共の衛生管理の達成のためには "人体の生理、病理その他の必要な基礎知識および電気療法についての技術を一定期間習得したもので、所定の試験に合格した者に免許を与え、 免許者に限ってこれを施行することを業とすることができるとするのが当然のことで、” と述べている。

2015-06-18 02:23:01
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

で、 "この意味においては、 O、K両鑑定人の指摘する施療者の資格、施療器の使い方のいかんが、 本件被告人の罪状を決定する重要な要素たるを免れないのである。" としている。

2015-06-18 02:23:27
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

判決では「免許」「資格」、両方の言葉が出てきます。 施療器の使い方、というのは手技療法で言えば施術の仕方、といったところでしょうか。

2015-06-18 02:23:49
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

「免許」というのは一般に禁じられた行為を行うことを許される資格ですので、国家などで無ければ与えられません。

2015-06-18 02:24:28
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

「資格」となるとどういう意味で使っているのか、よくわかりません。 しかし民間資格を持っていることである行為が罪にならないとしたらその資格は「免許」にならないか? 当然、「免許」は民間人が与えることは出来ない。

2015-06-18 02:24:43
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

また判決文でも 「免許者に限ってこれを施行することを業とすることができるとするのが当然のことで」 と述べている。 つまり相対的な有害性のある治療法は"免許者に限ってこれを施行することを業とすることができるとするのが当然”と言えよう。

2015-06-18 02:25:21
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

では「施療器の使い方」、手技療法で言えば「施術の仕方」はどうか? M鑑定人は "予め、医学的知識に基づく適応症ならびに禁忌症決定を行ってから後に施行しなければならない" と指摘している。

2015-06-18 02:25:42
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

では予め適応症並びに禁忌症を決めておけば良いのか? 確かに禁忌症を予め明らかにしておき、禁忌症である場合は施療しない、という運用であれば危険性は排除できるかもしれない。

2015-06-18 02:26:06
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

しかし、適応、禁忌を判断する際、症状病歴を尋ねるのは問診に該当し、医師法第17条違反になる可能性がある。 courts.go.jp/app/hanrei_jp/…

2015-06-18 02:26:27
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

"断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねる行為(原判文参照)は、その者の疾病の治療、予防を目的とした診察方法の一種である問診にあたる。" 昭和48年9月27日、最高裁第一小法廷決定、昭和48年(あ)85号

2015-06-18 02:26:54
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

これの原審、東京高裁昭和47年(う)第1260号、昭和47年12月6日の判決文では 「被告人が原判示のA外6名に対して前示の如く入寮当時の症状、病歴を尋ねた行為は、当該相手の求めに応じてそれらの者の疾病の治療、予防を目的として、

2015-06-18 02:27:36
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

本来医学の専門知識に基づいて認定するのでなければ生理上危険を生ずるおそれのある断食日数等の判断に資するための診察方法というほかないのであって、いわゆる問診に当たるものといわなければならない。」 と述べている。

2015-06-18 02:28:11
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

つまり免許を持たない者が禁忌症のある施術行為をするときに、症状、病歴を尋ねるのは問診に当たり、医師法違反と言えるだろう。 当然、禁忌判断すら行わないのであればHS式無熱高周波療法と同じことであり、少くともあはき法第12条違反、場合によっては医師法第17条違反といえる。

2015-06-18 02:28:55
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

ちょっとタイトルの裁判から離れましたが戻ります。 なお、あはき法第19条により、法施行時に3ヶ月以上医業類似行為を業としていた者は知事に届け出ることで一定期間、医業類似行為を業として行って良い、としています。

2015-06-18 02:29:22