HS式無熱高周波療法裁判:差し戻し控訴審ー裁判所はどのようにして「人の健康に害を及ぼす虞」を判断したかー
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当時のあはき法
第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。
第十四条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
二 第五条乃至第七条若しくは第十二条の規定又は第八条第一項の規定による指示に違反した者
ではHS式無熱高周波療法の差し戻し控訴審です。 図で言えば仙台高裁のラインの右側です。 この裁判で再び有罪となります。 pic.twitter.com/FyC6N8LRpM
2015-06-18 02:09:37被告人が再び、最高裁に上告しますが棄却され、有罪が確定します。 図の一番右です。 最高裁の上告棄却(一番右)の決定文がこちら。 courts.go.jp/app/hanrei_jp/…
2015-06-18 02:10:29PDFの本文を読んでもどうして有罪になったか、わかりません。 ただ弁護士の数が12人というのはすごい? それとも同じ事務所?
2015-06-18 02:10:54しかしそれは仕方ありません。最高裁(上告審)は事実関係を審議する場ではないからです。 最高裁は法令の適用の正しさや違憲性、手続きが正しいか、判例違いなどを検討するのです。 ogawalaw.hatenablog.com/entry/2014/05/…
2015-06-18 02:11:39最初の上告審(最高裁ラインの左側)では 禁止処罰する医業類似行為は人の健康に害を及ぼす虞がある行為だけ(法令適用、合憲性判断) 被告は健康に害がないと主張してるんだからそこを検討しろ(手続きの正しさ) と判示し、事実関係は高裁で審理しなおせ、となったわけです。
2015-06-18 02:12:17だからどういう事実を持って、有罪にしたかは差し戻し控訴審の判決を見ないとよくわからない。 しかしネットで無料で見れる環境には判決文が無かったので、肝心な情報を欠いたまま医業類似行為が違法か合法かの話を業界でしてたわけです。
2015-06-18 02:12:49そんなわけで商用の判例データベースから差し戻し控訴審の判決文を入手し、判決文自体は著作権が無いので手打ちで載せます。
2015-06-18 02:13:28仙台高裁の差し戻し控訴審の判決文は長いし、コピペでも利用できるようにまとめの最後で全文をまとめて載せます。 なお編集著作権は私に生じると思いますが、コピペして構いませぬ。 chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answe…
2015-06-18 02:13:44とりあえず主文。 "本件控訴を棄却する。 差し戻し前の第二審ならびに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。"
2015-06-18 02:14:03この判決での登場人物 被告人G 施術を受けた者A,B,C 証人D 証人E:HS式無熱高周波療法の無害を主張、開発者Fの息子 F:証人Eの父でHS式無熱高周波療法の開発者
2015-06-18 02:14:35鑑定人 M:東北大学医学部放射線医学教室教授、前回の控訴審の鑑定人 以下、差し戻し控訴審(この裁判)の鑑定人 O:東京大学医学部内科物理療法学教室教授 I:早稲田大学理工学部助教授 上の二人の鑑定が対立したのでその後に鑑定した人 K:東北大学医学部放射線医学教室教授
2015-06-18 02:15:11HS式無熱高周波療法の有害性に関する各鑑定人の意見 M:影響がない O:有害 I:無害 K:有害
2015-06-18 02:15:45判決文より概要
原判決の引用証拠ことに被告人の司法警察員に対する供述調書ならびに証人Eの差し戻し前の第二審と当審(二回)における証言によれば、
被告人がAほか2名に施術したHS式無熱高周波療法というのは、もともと慢性淋病の治療のために、E証人の父Fが昭和5年頃考案したのであるが、やがて、がん、結核性疾患その他医師から見離されたほとんどすべての慢性疾患に効果があると称されるに至り、昭和29年中には、この治療を業とする者が約500名を算する有様であった。
(略:治療法説明)
この療法を、被告人は、昭和25年8月中一週間だけ、同業者から講習を受けたことがあったが、
同26年9月からは、法定の免許を受けずに、治療所を開業して、右と全く同様の治療を始めたことは、被告人の司法警察員に対する供述調書によっても明らかで、
原判示の被療者3名のうち、AとBは胃病、Cは胃病のほかんにぜんそくもある(※原文ママ)ということで、Bには2回、AとCには各1回、いずれも一回の治療時間は30分、一回の料金は100円で治療したことが認められるのであるが(A,B,Cの各顛末書参照)、
かように、被告人が法定の免許を受けないで、疾病の治療のために前記HS式無熱高周波療法と称する電気療法を行ったことは、次に説明するように、その効験のいかんを問わず、明らかに、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法12条に規定する医業類似行為に該当し、これを業として行った以上同法14条の処罰の対象となるものといわなければならない。
最高裁の判決を受けて
ところで、右法条で、医業類似行為を業とすることを禁止し、同条に違反した者を同法14条が処罰するのは、それが公共の福祉に反すると認められるからであり、しかも医業類似行為が公共の福祉に反するのはかかる義務行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるからである。
したがって、本件においては、必然的に、被告人の業とした右HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼすおそれがあるかどうかが問題となる。
いわゆるHS線を高周波電流の一種と解し、これを人体に透射した場合には
『透射局所に、必ず微量の温熱が発生し、この熱と他の不明な刺戟によって、血管が拡張する方向に反応が発現する状態となるが、透射時間が20分ないし30分の短時間である場合には、健常の人体に対しほとんど影響を与えない、また、急性化膿炎症の初期病巣に透射した場合には、正常組織の場合よりは温度の上昇がやや大きいので、多少の治療効果があるのではないかとの想像も可能である』
ということで、E証人の主張する高周波振動の効果については、これを議論すべき資料がないとして、肯定、否定いずれとも結論を与えていない。
しかし、いずれにしても、M鑑定人は、HS線が健常の人体に対してはほとんど影響がないと断定し、さらに、急性化膿炎症に対しても、多少の治療効果を期待してよいとの結論を出しているのである。
鑑定人O(東京大学医学部内科物理療法学教室教授)は有害と判断。 "本療法は、予め、医学的知識に基づく適応症ならびに禁忌症決定を行ってから後に施行しなければならないことを指摘しているのである。"
2015-06-18 02:17:28HS式無熱高周波療法による療法は、高周波療法の特徴とされる温熱効果はなく、むしろ低周波電流のもつ刺戟効果を有するものであるとし、
『この治療器を最も弱い発振状態におき、湿した布を介して電極を皮膚に接着、スイッチを入れると、感応電流や低周波交流ないし断続直流を通じる際に感じるのと類似せる異常感覚、一種のシビレ感を覚える。ついで、調節ダイアルを廻し、L→Hへ近づけるに従い、筋○搦(○は表示されず。筋ちく搦?)を認め、遂には耐えがたい強直性筋攣縮に至る。かかる状態は、鑑定人ならびに教室員が交互に自ら経験したところであって、高周波通電の経験と全く反する事実であり、低周波電流刺戟が実際上は存在することを示唆するものである』
と説明して、前掲M鑑定人が、HS線を以て、高周波電流の一種であると割り切っているのと対立している。
この故に、O鑑定人は、
『この療法は、過度の長時間の使用は疲労を来して不適当であるし、応用の部位ならびに電流の強さに注意しないと、病的状態においてはショックを誘発する危険ーー例えば、両手間とか胸部の通電の場合は、心室細動ないし心拍停止の危険、また、脳の通電の場合には呼吸循環系に対する危険ーーが推定される』
として、
人体に不足の有害作用を招来する危険があると鑑定し、本療法は、予め、医学的知識に基づく適応症ならびに禁忌症決定を行ってから後に施行しなければならないことを指摘しているのである。
つぎに、当審鑑定人I(早稲田大学理工学部助教授)の鑑定書によれば、HS式高周波器は、その構造上低周波電流が完全に阻止されているし、温度上昇も極めて微弱で、人体に害があるとは考えられないということで、ほぼ、M鑑定人と同様の結論を出して、O鑑定人と対立している。