まず最初に、6月4日の憲法審査会について。
「その憲法審査会はそもそも国会審議中の安保法制について意見聴取をするために開かれたものではない」点を示しておきます。
6月4日の憲法審査会で与党が推薦した参考人が与党の提案している法案を違憲との主張した為、「与党推薦の参考人に違憲と言われるとは何事だ」という文脈で数多の言及がなされているが、その憲法審査会はそもそも国会審議中の安保法制について意見聴取をするために開かれたものではない。
2015-06-06 20:55:262015年6月4日(木) 午前9時 憲法審査会(第3回) (案件)憲法保障をめぐる諸問題(特に、①立憲主義、改正の限界及び制定経緯、 ②違憲立法審査の在り方について) shugiin.go.jp/internet/itdb_…
2015-06-06 20:56:28憲法一般の論点として、立憲主義や改正限界説、違憲審査制についての専門家の意見聴取をするために開かれたものであり、その為に参考人が推薦されている。そこで、民主党の中川正春委員が同会開催の趣旨から外れて、現在審議中の安保法制に対する意見を述べるよう求めて回答したという経緯がある。
2015-06-06 20:57:23そして、「安保法制は違憲だ」と指摘したことに関連して外国特派員協会で記者会見が行われました。
(動画は見ていません)
衆院憲法審査会で、安保関連法案を「憲法違反だ」と指摘した憲法学者の長谷部恭男・早大教授と小林節・慶大名誉教授の記者会見(外国特派員協会)の動画をアップロードしました ⇒ youtube.com/watch?v=1pcUEX… pic.twitter.com/PLyZjPzzYV
2015-06-15 23:23:18長谷部さんの安全保障の素人と言われたことへの反論。さすがと言われているようだけれど、確かにさすが。ただし詭弁として。使われている詭弁は3つあって合成の誤謬、権威論証、多重尋問。(続く twitter.com/tarareba722/st…
2015-06-17 20:29:00これか。与党議員に「安全保障の素人」と言われ、憲法学の権威である長谷部教授が本気でブチギレたコメント。論理上あらゆる逃げ道を塞いだ上で十字砲火を浴びせてる。さすがとしか言いようがない。 asahi.com/articles/ASH6H… pic.twitter.com/KhTEScqj3X
2015-06-17 11:30:38続き)まず合成の誤謬。これはある部分がXだから、全体もXという議論でこれは必ずしも正しくない。長谷部さんの論では「戦争権限についての文章を執筆したことがあるので、安全保障の知識は欠いていない」というところ。(続く
2015-06-17 20:30:11続き)これは「私はキャッチボールができるので、野球が上手い」と言っているのと同じで正しくない。次は権威論証。これは議論の正しさを権威によって説明しようとするもの。しかし権威は常に正しいとは限らないのでこれを用いた議論は正しいとは限らない。(続く
2015-06-17 20:31:04続き)長谷部さんの論では「オックスフォード大学出版局が書籍に参加している」というのがそれ。しかしこれは長谷部さんが安全保障の知識に欠けているかどうかとは関係がないので詭弁となる。(続く
2015-06-17 20:31:49続き)最後は多重尋問。正確には多重尋問の複数の質問を重ねるタイプで特に異議を挟まずに答えた場合、解答者に不利な状況になるというもの。長谷部さんの論では「安全保障の素人が関わった特定秘密保護法案には欠陥がある」というところ。(続く
2015-06-17 20:32:41続き)これは長谷部さんは安全保障の素人であるとすると特定秘密保護法案に欠陥があることになり、逆に特定秘密保護法案に欠陥がないとすると長谷部さんは安全保障の素人ではないとなり、双方を否定することができない、また2つの質問を別個に考えることができないことになるので適切ではない。
2015-06-17 20:33:46これ読んで「これじゃおぐりんと一緒じゃん…」って思って、どうそれ表現しようかなぁと考えてたんだが、きれいに説明してくれる人がいて助かった(^v^) twitter.com/nautical_mile7…
2015-06-18 17:45:06もうひとつ私が言うなら、「長谷部さんが権威だとすれば2回とも妥当な意見を述べただろう」とは普通に言えるけど、氏が提示してる「権威じゃないなら2回とも不当な意見を述べたはずだ」という命題は前者とは無関係なんだよねw(裏、逆、対偶のどれでもない)
2015-06-18 17:51:48この命題を使って氏を権威だと結論付けるには、「素人はいつでも不当な意見を述べる」とかいう公理を持ってこなきゃいけないんじゃないかな。でもそれって権威論証みたいなもんだよねぇ…
2015-06-18 17:53:45「権威なら2回とも妥当な意見を言う」が一般的理解で、だから「1度でも不当な意見を言えば権威ではない」なのだが、氏は「素人なら2回とも不当な意見を言う」を措定してそれを否定させただけ。
2015-06-18 17:59:05論理も楽しいけど、真面目に言うと、特定秘密保護法のときは専門家として呼ばれて妥当な意見を言ったから専門家と認められてたけど、今回は専門家として呼ばれて妥当な意見を言ってないから、ある程度以上の国民を代表している与党から「専門的知識がない」って言われてるんでしょ。
2015-06-18 18:04:22補足。逆裏対偶じゃなくて、背理法のための命題になってない(だろう)ってことなんですが、面倒なので興味ある人にお任せしますw
2015-06-18 18:12:29論理上の瑕疵については他に指摘している方もあるようなので触れないが、他にも突っ込みどころが多い記者会見だったようで。たとえば「サッカー」の喩え:安保関連法案の撤回を求める長谷部氏と小林氏の発言詳報(朝日新聞) asahi.com/articles/ASH6H…
2015-06-19 04:14:02長谷部氏「…限られた我が国の防衛資源を地球全体に拡散するのは愚の骨頂だ。サッカーに例えれば、自分のゴールが危険なのに味方の選手を相手側のフィールドに拡散させるものだ。どこにそんな愚かな戦略をとるチームが存在するのか」とあるが、ゴール前だけ固めてたら失点するがな。
2015-06-19 04:16:01長谷部氏「自分のゴールが危険なのに味方の選手を相手側のフィールドに拡散させるものだ」って、フィールドに万遍なく選手を散らばらせるわけないし。相手選手の動きに合わせてディフェンスするのに必要な場所を移動するわけで。
2015-06-19 04:21:20昨年あった朝日新聞の「のび太が武装して自分を守れる?」という比喩と同じく、中味をよく知らないのに安易に「見立て」を使うのは墓穴を掘る。長谷部氏が言っていることは、日本はゴール前で全員で「壁」を作ってフリーキックを受け続けよということ。「そんな愚かな戦略をとるチーム」は存在しない。
2015-06-19 04:28:48あとはおまけ。
憲法審査会と外国特派員協会での会見の間に、高知新聞に長谷部教授のインタビュー記事が出ました。
集団的自衛権丸ごと違憲 高知新聞が長谷部・早大教授にインタビュー
http://www.kochinews.co.jp/?nwSrl=339110&nwIW=1&nwVt=knd
こちらによると長谷部教授は
・現行憲法は今のところ改正すべき点は見当たらない
・日本周辺の安全保障環境はそんなに変わっていないはず
という見解を示されています。