掌小説語り~自作つぃのべる集20~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年2月分。
1
リュカ @ryuka511

物陰から駆け寄って来たのは、苺を象ったおかしな剣を手にした幼女だった。「お待ちしておりました、勇者様。」なんて僕の傍に跪く。「人違いじゃないかい? 僕はただの旅人だ。」「いいえ。この剣が貴殿に間違いないと。」彼はまだ知らない。彼女が彼を導き壮大な冒険をする事を。 #twnovel

2014-02-01 23:54:41
リュカ @ryuka511

「もう無理だ、彼女は魔物になり果てた。」「救ってやろう。」仲間達の言葉に耳を塞ぎたかった。魔法使いは世界を救う為強さを求め、魔力の闇に落ちた。魔物と化した彼女は咆哮を上げ街を、僕らを襲う。これは彼女の本意じゃない。だけど。得物を掲げ刃を向けて、僕は愛する人を討つ #twnovel

2014-02-03 00:35:38
リュカ @ryuka511

仲良くなった人間の子の家に、鰯の頭を刺した柊が飾られていた。それは鬼を退ける物だと知り、鬼の子は泣いた。嫌いになったのなら、もう一緒に遊べないなら、ちゃんと言ってくれたらいいのに。わざわざそんな物を飾らなくったって、鬼と人間が仲良く出来ないなんて知ってるのに。 #twnovel

2014-02-03 23:55:46
リュカ @ryuka511

選ばれた一部の者に天国への入場許可証が発行された。彼らは天国で旨いものや心地好いものを堪能した。満足し帰ろうとしたが、天国の門は開かなかった。どうなっているのだと声を荒げる彼らに、天国の管理人は告げる。「あなた方の入場は許可しましたが退場は許可しておりません。」 #twnovel

2014-02-04 22:22:24
リュカ @ryuka511

ご主人様が入院される時私も一緒にここへ来ました。けどご主人様は別の部屋へ移り戻っていらっしゃらないのです。人形の私でも固く冷たく感じたご主人様の痩せた手の感触が、私の脳裏から離れません。ご両親が泣きながら私を見つめるのは何故ですか。ご主人様はどこにいるのですか? #twnovel

2014-02-05 22:58:46
リュカ @ryuka511

「王女、お怪我は?」「大丈夫よ、ありがとう。」襲ってきた下級の魔物を華麗に斬り伏せる騎士に、王女ははにかむように微笑んだ。王女が避暑で訪れた森は野生動物に魔物も潜んでおり、危険だと言われている。だが王女はこの森の奥にある澄んだ湖を気に入っていた。 #twnovel #三連ツイノベ

2014-02-06 22:51:00
リュカ @ryuka511

「あなたがいてくれれば、魔物なんて怖くないわ。」剣を納めた騎士に王女は頬を染める。にこりともせず「そうですか。」とだけ答えた騎士に、あなたは相変わらずねと王女は微笑んだ。幼い頃、王女付きの騎士として城に現れた彼の佇む姿は凛としてどこか冷たく、幼い王女を惹き付けた。 #三連ツイノベ

2014-02-06 22:52:11
リュカ @ryuka511

王女の能天気な言葉に騎士はにこりともせず答える。何故自分が王女のお守りなど。だが、復讐を遂げるには都合がいい。彼の故国を滅ぼしたのは、目の前にいる王女の父。納めた剣を王女の首へ降り下ろしたい衝動に駆られる。君にはわからないだろう、十で剣を持った僕の気持ちなんて。 #三連ツイノベf

2014-02-06 22:52:51
リュカ @ryuka511

豪奢に飾られた馬車にごめんねと呟き、姫の婚礼パレードをやり過ごす。本来ならあの馬車にいるのは姫である自分。だが彼女は自分の運命を見付けた。城を出たいと願う彼女を助けたのは後宮に住む姫とよく似た少女。剣を手に彼女は駆ける。街を、世界を、仲間と共に魔王から守る為に。 #twnovel

2014-02-07 23:32:27
リュカ @ryuka511

吹き荒ぶ雪の中、君は静かに笑う。君の微笑だけが、私の世界に咲く花だった。儚いその花は、白い世界を赤く染めて散る。私の手で、君の命が赤い花となって散る。そして私も。そこは誰も追って来れない雪中の花園。こんな結末しか迎えられなかった私達を、雪すらも祝福しないだろう。 #twnovel

2014-02-08 23:26:30
リュカ @ryuka511

突然過ぎた王の死に城下街では不穏な噂が流れている。王の死に王子が関わっているのではないか。臣下達は顔を見合わせる。父の死から瞬く間に立ち直り政務に当たる新王。そこにあるのは責任感かそれとも。時折見せる彼の暗い目に、真相など知りたくないと臣下達は一様に首を振った。 #twnovel

2014-02-09 23:31:34
リュカ @ryuka511

青年は荒廃した街を睨む。念願の騎士隊へ共に入隊を果たし王国に尽くそうと誓いを立てた親友は、傾く国を顧みず自身の立身出世に邁進した。傾く国に見切りを付け国を出た自分に、彼を責める資格は無いだろう。自分達はどこで何を間違えたのか。青年の問いに返ってくるのは風ばかり。 #twnovel

2014-02-10 22:24:40
リュカ @ryuka511

決起した頃は全てが上手くいった。革命は成功すると誰もが思った。だが連戦連勝に浮き足立ち、統率が乱れた。仲間割れ、疑心暗鬼、そして呆気なく形勢は逆転した。敗走する革命軍の生き残りはもう僅か。燃える理想の下、交わした約束を覚えているか?生きてたら、あの桜の下で盃を。 #twnovel

2014-02-11 23:09:26
リュカ @ryuka511

私を本当に愛しているなら、貴方のその愛で壊してころして、そうして私の残骸を綺麗に食べ尽くしてもらえたらとても幸せ。愛を伝える為に殺人者になるぐらいの覚悟でないと、真の愛だと思えないの。私はいつでも貴方をそれぐらい愛している。決行の準備は整ってるわ。貴方は、どう? #twnovel

2014-02-13 00:00:57
リュカ @ryuka511

学校に菓子の持ち込みは禁止だと言われバレンタインチョコは次々と教師達に没収されていく。皆もっと頭使わなきゃ。放課後、私は秘かに付き合ってる彼氏を呼び止める。近くに教師がいるけど怖れる事は無い。「委員長、辞書ありがとう。」「え?あぁ!どう致しまして。」 #ショコラ #twnovel

2014-02-13 22:00:19
リュカ @ryuka511

太陽が冬将軍に拐われた。太陽を取り戻すべく人々は戦いを挑むが、猛吹雪に視界を奪われ刺すような寒風に体力を奪われる。「太陽は私のものだ!」 #twnovel 夏の間、忌み嫌われた太陽の悲しみを知った冬将軍は、太陽に狂言誘拐を持ちかける。自分の想いはひた隠し、ただ太陽の心を救う為に。

2014-02-15 00:37:44
リュカ @ryuka511

困惑する探偵に怪盗は宝石を差し出す。「あぁ、その前に一つだけ。」手を止め怪盗は探偵を見つめる。「何故、貴方は私の逃げる先が解るのですか?」「何故って別に、私ならどうすると考えるだけだ。」戸惑いながら答えた探偵に怪盗は満足そうに微笑んだ。「ありがとうございます。」 #twnovel

2014-02-15 23:04:21
リュカ @ryuka511

「礼を言われる筋合いは無いが?」怪訝な顔で探偵は言葉を続けた。「ではお前は何故盗みを働くんだ?」「私の本当に欲しいものを手に入れる為、でしょうか。」怪盗は探偵の手に宝石を渡すとその手を取り恭しく口づけた。「何をする!」怒鳴り付けようとした探偵は次の瞬間困惑する。 #twnovel

2014-02-16 23:10:47
リュカ @ryuka511

「敬愛の証ですよ。」と微笑する怪盗の顔が泣きそうに見えたからだ。何故そんな顔をする? 困惑する探偵に怪盗は優雅に一礼した。「ではそろそろお暇致しましょう。」「待て!」怪盗はゆっくりと振り返る。「何でしょう?」「お前なら、罪を償って全うに生きられるんじゃないか?」 #twnovel

2014-02-17 23:24:53
リュカ @ryuka511

探偵は必死に言葉を続ける。「私ならお前に光の下で生きる手助けが出来る。」「有り難いお言葉ですが、今となってはこの生き方も気に入っているのです。」悲しげに笑い怪盗は柵に手をかけた。「またお会いしましょう。探偵殿。」「おい!」柵の向こうに消える怪盗へ探偵は駆け寄る。 #twnovel

2014-02-18 23:19:21
リュカ @ryuka511

怪盗はフックロープを使い階下へ逃れたようだ。返された宝石が光を受け煌めく。ふいに怪盗に口づけされた感触が、彼の悲しげな笑みと共に蘇り探偵の胸を締め付ける。あんな顔をして。私と共に来ればいいものを、何故。「私は諦めないぞ。必ずお前を取っ捕まえて更正させてみせる。」 #twnovel

2014-02-19 22:34:03
リュカ @ryuka511

法を犯し秩序を乱す憎むべき存在、のはずだった。だが好き好んで盗みを始めたわけでは無かったのだろう。怪盗はこの生き方を気に入っていると言ったが、探偵にはその先が明るいとは思えなかった。彼を悪の道から救いたいと思う一方で、自分には出来ない生き方を少しだけ羨やんだ。 #twnovel

2014-02-20 23:55:38
リュカ @ryuka511

探偵の言葉に揺らがなかったと言えば嘘になる。彼と共に生きられたら、そんな幻想が怪盗の胸によぎった。だが、生きる為に奪わなければならなかった頃を思うと簡単に出来る事ではない。ただ、彼が自分を顧みてくれる事が嬉しかった。それだけで、この忌まわしい世界を生きていける。 #twnovel

2014-02-21 22:18:23
リュカ @ryuka511

盗みを始めた頃は、こんな事をしなければ生きられない世界を憎んだ。だが今は、その世界に生きる探偵が自分を顧みて心を寄せてくれる。それは、愛と呼ぶには脆く儚すぎる光。決して手には入らないが、確かに自分の傍に存在する。「さぁ、追いかけっこを続けましょう。探偵殿。」 #twnovel

2014-02-22 22:31:02
リュカ @ryuka511

今は亡き前王妃の肖像に騎士は跪く。聡明な王妃は王に疎まれ毒を盛られた。王妃の死は病死とされ、多くの民が悲しんだ。愚かな王の施政に国は傾き始める。王よ、民の嘆きを、臣下の怒りを、王妃の絶望を思い知れ。騎士の目に復讐の焔が宿るのを、王妃の肖像は悲しげに見つめていた。 #twnovel

2014-02-23 23:20:45