魂命を継ぐ幽朧の境界:二日目夜

* ──揺らいで尚、 *
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【刃】エプタ @ept_Ao

つるつると掴み所の無かった感触がふわふわとしたクッションに変わっている。 爪が引っ掛かりそうで慌てて引っ込めていつの間にか倒れていた体を起こす。 ふかふかとした座席に座り直して上を見上げる。 知らない天井だ。

2015-06-21 20:13:11
【鞘】エピカ @Epica_AO

──その双眸は、揺らぎが有って尚、鮮やかに宵を映している。 がたんごとんと揺れる車体。眠気を誘発しそうな音にぱちりと瞬きを繰り返して、辺りに視線を巡らす。 「──おや、」 すぐ隣。今は猫の姿となったエプタが天井を見上げていた。 「……これは、一体何と言う乗り物だろう」

2015-06-21 21:55:50
【鞘】エピカ @Epica_AO

ぽつり、と漏らした独り言のような問い掛け。 張られた窓の外は、何処か見覚えのある景色のような気がした。 ──がたんごとん、がたんごとん。 その車体の揺れが、収まることはなく。

2015-06-21 21:55:52
【刃】エプタ @ept_Ao

「でんしゃ……乗り物らしいぞ。」 その単語は、最初場に『常識』として叩き込まれた知識の中にあった。 ただ、ある程度の間隔で加速減速を繰り返すはずの乗り物の速度は窓の外を見る限り常に一定だ。 後ろ足でかりかりと耳の後ろを掻いて 「あれっ?エピカ?!」

2015-06-22 04:34:00
【刃】エプタ @ept_Ao

漸く、驚きをもって隣を見つめる。 「いや、 夜になった感覚はあったけど。てっきり相手決めてなかったからボッチで飛ばされたもんだと……あれ?エピカ誰かと約束してなかったか?気のせいだっけか?」 足を広げたせくしーぽーずのまま 不思議そうに首をかしげて

2015-06-22 04:34:05
【刃】エプタ @ept_Ao

それとも、あれは記憶違いで他の誰かのことだったか。 振り返ろうと、記憶を掘り起こし……あれ? ノイズがひどい。 まだ、寝ぼけているのか? 反対側に首をかしげなおして 「あれ?昨日の朝。いや、この姿になったのは今日の昼??あれ??」

2015-06-22 20:19:26
【鞘】エピカ @Epica_AO

「私も約束をしていなかったものだから……てっきり一人で飛ばされたものだと思っていたけれど、」 小さく笑う。 「ふふ、エプタが居て、……よかったよ」 よかった、と言葉にするのに少しの躊躇いを見せながらも、エピカははっきりと口にした。

2015-06-23 09:16:39
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──いや、約束はしていなかったかな」 目を、細める。宵の双眸の中、ちかちかと星が瞬いた。許されるなら、エプタの頭を撫でようと手を伸ばし。 「へえ、でんしゃ。  面白いねえ……窓の外の景色は、私に見覚えのあるもののようだけれど」 向かいの窓から、風景を眺めて、ゆると首を傾け。

2015-06-23 09:16:43
【刃】エプタ @ept_Ao

「あー」 温かい、肌の感触を頭に感じながら視線だけを窓の外へ向けて 「きっと、場所とか決めてなかったから混じって跳ばされたんじゃないか?」 何を基準に選んだかなんて知らないけれど 窓の外に写る景色たちと 停まる気配のない電車 はっ! 「かいそう繋がりか!」 お茶目だな!!

2015-06-23 18:44:49
【刃】エプタ @ept_Ao

ぐりぐりと、自分から痒いところをエピカの手に押し付けて。 「俺がいた世界もこんな光景が広がってたのか、な?」 違和感は仕事をしてくれない。 朧気な霞のようなそれらはすぐに消えて。 「エピカは、俺みたいな生き物見たことあるか?」

2015-06-23 18:44:53
【鞘】エピカ @Epica_AO

カリカリと掻いてやりながら、エプタの言葉にはなるほど、と相槌。 「──色んなところを旅してきたけれど、エプタのような子に会うのは私も初めてかな」 微笑みながら、そうこぼす。

2015-06-24 08:24:02
【鞘】エピカ @Epica_AO

窓の外の景色は、見覚えのある光景ばかりで、なんだかじんわりと胸の奥が熱くなるような感覚を覚えた。 「君は、君と同じ種族(もの)に会いたいのかい?」 問う声は、柔らかく。

2015-06-24 08:24:07
【刃】エプタ @ept_Ao

「もーちょいみ……ふぉ~。」 うっとりと、しながらも耳はピンッと立てて。 「んー、どうだろな?」 問に疑問を浮かべる。 俺の同族、が沢山…………わらび餅みたいだと思うだけで。 感傷も感激もとくに、ない。

2015-06-24 18:36:37
【刃】エプタ @ept_Ao

「ほら、俺はここに来る前のことはこれっぽっちも覚えてないし、それで不都合も寂しさも感じないし……んーー。」 言葉を選ぶように、窓の外へ視線を向ける。 エピカが見てきた景色。 物語の舞台達。 彼女の世界。 「忘れられた物語に意味がないなら、忘れた記憶にだって意味はないだろ。」

2015-06-24 18:36:50
【刃】エプタ @ept_Ao

「有ったかどうかも分からない想い出(ものがたり)に 忘れてしまう程度の自我(かこ)に 執着はないし、記憶にない同族に関してもそう。なんだろきっと。」 尾をゆらゆらと揺らしながら 読み取れない物語を見つめるように 景色を見続ける 「同族見つからないよりも、明日が終わる方が怖い」

2015-06-24 18:37:03
【鞘】エピカ @Epica_AO

「ん、この辺りかな?」 カリカリ。指先で掻きながら、小さく笑う。 ガタンゴトンと揺れる車内、首を傾け。 「……そうだね、明日が来ないのは、」 ふるりと身震い一つ。

2015-06-25 06:06:10
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──とても、こわいね」 変わらず昇る朝日がない。 見えぬ空に想いを馳せる事もなく。 それは生死の概念が存在しないエピカにとっての感覚的な死に近い。 「エプタは、名をもらったら何かしたい事はあるのかい」 唐突な問い。窓の外は日暮れている。

2015-06-25 06:06:14
【刃】エプタ @ept_Ao

「んー、誰かの役に立てるなら何で……あーでも、他人を傷つける仕事は嫌だなぁ。」 撫でられる手が心地よくて。 そのばでぐいーと延びをした後、座席の上に丸まる 「続きがないのも怖いし、……明日で皆とお別れなんだよなー」 それは、寂しい。 何せ、はじめてのお別れだ

2015-06-25 18:11:30
【刃】エプタ @ept_Ao

「ずっと、今日が繰り返されたら。 それはそれで、幸せなのかねー?」 明日が来ずに でも、終わらずに。 そんな我儘を込めて、ぽつりと溢して

2015-06-25 18:11:34
【鞘】エピカ @Epica_AO

「変化が無ければ、つまらないものさ。最初はそれで満たされても、きっとすぐに餓えてしまうよ」 くすくすと笑い声すら立てながら言って、首を傾ける。 「人の役に、か……。君ならなんでも出来てしまいそうな気がするよ」 ふは、と息を吐くように吹き出す。

2015-06-26 06:35:59
【鞘】エピカ @Epica_AO

──窓の外。暮れていた日は沈みきり、そして日が昇り掛ける紫の空を眺める。 「ああ、もうすぐ、この時間は終わってしまうのだね……」 小さく笑って、それから足を組む。 「エプタ、決められなかったら、私の元へおいで」

2015-06-26 06:36:02
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──大きな揺らぎを、感じたから。もしかしたら、鞘も……同じく刃も。等しくとは、いないかもしれない」 背をもたれ、大きく伸びひとつ。 「だから、もし君の気が向いて……私と、──私たちと旅をしても良いという気になったら、」 微笑む。 「君だけの物語も、共に探しに行こう」

2015-06-26 06:36:06

 
 

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