望月茂氏による『ゼロ年代の想像力』感想

望月茂 @motidukisigeru 氏 blog: 東浩紀の文章を批評する日記 http://d.hatena.ne.jp/motidukisigeru/
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望月茂 @motidukisigeru

#zeronen ゼロ年代も終わりましたが、周回遅れに定評のある望月として「ゼロ年代の想像力」をちゃんと読むこととする。

2010-03-06 16:26:44
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 感想としては、ツッコミどころが多いなぁというもの。「敢えて単純な対立構造をすることによって論争を呼び込み場の活性化を……」みたいな意見は当然あるだろうけど、そういう釣り容認みたいなこと言うから、批評がダメダメになるのだろうと思うので、例によってマジレスで。

2010-03-06 16:28:01
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 宇野は社会情勢の変化から、セカイ系的な古い想像力がサヴァイヴ感的な想像力に変わり、それらが、エヴァやらデスノートやらの各種物語に反映される、と、位置づける。

2010-03-06 16:35:58
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 大変わかりやすい、耳に心地よい理論だが、だからこそ、信用ならない。この手の議論にありがちだが、「本当にそうなのか?」「それを証明・補強できるとしたら何か?」という視点が、まるごと抜け落ちている。

2010-03-06 16:36:53
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 鷹見一幸の「ガンズ・ハート」は中世的ファンタジー世界で、技術革新と経済変化で、社会が変化するところを描いている。そこで確か、領土拡張が止まった結果、貴族の特に次男、三男がやることを失い、自分探しでカルト化するという話が出ていた。それを現代日本と重ねるわけだ。

2010-03-06 16:39:04
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen これはラノベの例だが、特定の社会状況が特定のものを作り出すとするなら、時代を隔てても似たような状況が起きれば、似たような結果を探すことができるはずだ。もちろん歴史は、そこまで完全には一致しないので、なかなか難しいだろうが、調べる努力はできる。

2010-03-06 16:40:09
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 宇野の言うセカイ系やサヴァイヴ感が流動の増大や不況によって起きたというのなら、他の社会、時代と比較検証ができるはずだ。それをせずに、宇野は(というか、こういう批評の多くは)、「時代」で済ませようとする。

2010-03-06 16:41:17
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 無論、90年代日本には90年代日本独自の、ゼロ年代にも独自の要素があるが、「独自なんだから何言ってもこじつけても勝手」ということにはならないだろう。一個の状況を説明するのに、仮説は10も20も成立する。「仮説が成立する」だけでは不十分なのだ。

2010-03-06 16:42:57
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen さて、宇野は、90年代的な想像力として、エヴァンゲリオンを以下のように分析する。社会的自己実現への信頼低下から、「何もしないで引きこもる」という倫理が導かれ、行動ではなくて、自分の存在自体を全肯定するものを求めるようになる、という。

2010-03-06 16:47:45
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 多分、あちこちで批判されているだろうが、これはエヴァンゲリオンの分析としては間違っている。なぜなら、あの作品で「何もしないで引きこもる」ことも「人格・存在自体の肯定」も、肯定評価されてないからだ。

2010-03-06 16:49:06
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen そもそも宇野の言葉を借りるなら、エヴァンゲリオンほど「サヴァイヴ感」に満ちた作品もないだろう。そこでは、たった14の少年が、世界の滅亡という責任をいきなり負わされ、生きるか死ぬかの戦場に放り込まれる。

2010-03-06 16:49:52
かあばんくる9さい @carbuncle_9sai

@motidukisigeru はじめまして。今の文学は、ある意味、今のテクノロジーと深くかかわりすぎていて、異質性を有していると思います。そこをしっかりと説明しきれないから、「時代」という言葉で逃げているような感があると私は思いますが、望月さんはどう思いますか?

2010-03-06 16:50:34
望月茂 @motidukisigeru

@tosarn どういう文学の、どういう異質性でしょう?<テクノロジーと深く関わりすぎて テクノロジー故に変化した部分もあると同時に、ギリシャ悲劇や黄表紙本との共通性を指摘できる部分もあると思います。

2010-03-06 17:11:42
望月茂 @motidukisigeru

@tosarn 時代で何か変化したというなら、経済なり社会なりが変化した結果であり、技術はその大きな要因ですね。そうした点で具体的にどう変化したか考えるのは重要と思います。

2010-03-06 17:42:23
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen ストーリーを追うなら、シンジは社会的な自己実現を積極的に目指すが、それがうまくいかず追い詰められる過程において、第三新東京市から逃げたりエヴァ搭乗を拒否したりする。母性の人格に溶ける誘惑を受けつつも、最後には拒否する。

2010-03-06 16:51:17
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 宇野の分析が正しいなら、エヴァではシンジが引きこもること、綾波やアスカやミサトや母の人格と溶け合うことが、善・正しいこととして誉められるはずだ。実際の描写は、その正反対である。

2010-03-06 16:53:01
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen そもそも「社会的に正しい」エヴァンゲリオンを仮に考えるとしよう。人間、何の教育も与えずに、単独で戦場に放り出して生きるか死ぬかの戦いさせたら、普通、壊れる。14の少年ならなおさらである。放映中もよく言われたが、シンジは「逃げていい」のだ。

2010-03-06 16:54:08
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 逃げると世界が滅亡するから頑張る、という点を認めるとして、「出撃したら敵目標が自分の友達だった」とかだったら、当然、文句言っていいだろう。シンジのやったようにストライキして当然だ。

2010-03-06 16:55:18
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen エヴァに乗ることを引き受ける代わりに、最低限の事情説明他を求める権利は、シンジにあるだろう。無論、それを14歳の少年が一人でするのは大変だし、回りの大人が、きちんとフォローしてゆくべきだろう。

2010-03-06 16:56:03
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen そんなわけで、エヴァンゲリオンではシンジは、ほとんど逃げていないし、むしろ、そのように回りからの心理的圧力で「逃げちゃだめだ」と彼が思い込んでいることが、エヴァの問題点であることは了解されよう。

2010-03-06 16:57:12
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 「自己実現への信頼低下」に対しても、多義的ではある。シンジはなんだかんだんで、エヴァのパイロットとして戦うことの手応えや周囲の承認を少しずつ得てゆく部分もあった。あった、と、思うと、カヲル君がでてきて、ブチ壊しになるわけだが。

2010-03-06 17:02:47
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 少なくとも何もせず引きこもることが、肯定されてない、ということは言えるだろう。

2010-03-06 17:03:18
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 宇野は、小泉の経済政策や911テロによって、「引きこもると殺されない」というサヴァイヴ感が増した、と、言う。エヴァンゲリオンにこそ、そうしたサヴァイヴ感は、あった。

2010-03-06 17:05:00
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen エヴァ放映当時は、シンジに対する厳しい評価が結構あった。「ロボット物のヒーローなんだから、うじうじすんな」的な感想もよく見かけた。それに比べると、正直、今のほうが、オタク文化において「ニートシンジはニートじゃないが)への親しみ、理解は増している気がする。

2010-03-06 17:07:04
望月茂 @motidukisigeru

#zeronen 90年代には「ラヴやん」は、なかなか受け入れられがたかったと思うのだ。

2010-03-06 17:07:31