小説【HARD MIRACLE ～私が彼の３日間～】

はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#HM3D　125/162 ふと見た本棚に、見覚えの無い紙束。 「ん？」 『貴社を志望した理由と、貴社で私が叶えたい夢 　応文学院大学３年　村瀬七菜』 「何だこれ…」 １枚捲ると、手越さんのシャープな文字。 『ごめん。PCもノートも日記も、 　勝手に参考にした。』

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#HM3D　126/162 紙束は、A4用紙100枚を超えていた。 そこには、私も知らなかった、 “映像制作”に対する私の想いが纏められていた。 あの映像の美しさ、 夢を与える仕事に対する憧れ、 これまでどんな勉強をしてきて、 それを将来、どう活かしたいか―。 そして。

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#HM3D　127/162 　恐らく私は、一昨日の筆記試験で、不名誉な結果を残しました。これまでの努力を発揮することが出来なかった事が、悔やまれてなりません。 　これはとても身勝手で図々しいお願いです。私を、貴社の一員にして下さい。絶対に貴社に貢献します。

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#HM3D　128/162 　そうでなければ絶対に将来、貴社は私を採用しなかった事を後悔します。そんな人間になってみせます。 　是非貴社で、私の夢を叶えさせてください。 　そしていつか、同じ様に誰かに夢を与える人達と、共に作品を作りたいです―絶対に。

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#HM3D　129/162 それは、私が知らない私が書いた、 あの会社へのラブレターで、 NEWS手越祐也が残した、 未来のクリエイター村瀬七菜へのラブレターだった。 …試験が終わってから、 この枚数を、たった１日で…？ そして、ようやく先程の電話の意味に気付く。

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#HM3D　130/162 『いやぁ、あの長さのレポートを、 　たった１日で仕上げられた、その情熱に…』 電話の向こうの男性の、弾んだ声を思い出す。 …てことは… 「採、用…？！」 半分理解不能の侭、私は暫く、 手越さんが遺した紙束を眺めていた。

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#HM3D　131/162 兎に角お礼が言いたい…のに、 私の携帯電話からは、 手越さんの番号も、シゲの番号も消えている。 ただ幸い、昨日シゲに言われて、 スケジュール確認してたお陰で、 手越さんがいる場所は分かった。 私はアパートを飛び出すと、 タクシーに飛び乗る。

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#HM3D　132/162 「あのっ！手越くんに会いたいんですが！！」 「えっ、と…申し訳ございませんが…」 スタジオの前にいた警備員さんが、 少し焦った様に立ち上がる。 そりゃそうだ。 女子大生が突然スタジオに来て、 NEWSの手越に会わせろって…イタいストーカーじゃん。

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#HM3D　133/162 私はふっと冷静になって、 警備員さんに丁寧に謝ると、 スタジオの敷地を出た。 「…七菜ちゃん？」 背中から、覚えのある低い声が呼び止める。 「えっ」 コンビニの袋を提げて立っていたのは― 「まっすー…？」 「やっぱ七菜ちゃんだ。」

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#HM3D　134/162 まっすーはふわっと微笑むと、 私の手を握った。 あれ、こんなに背、高かったっけ？ こんなに大きな手だったっけ？ …そっか、私が“私の身体”だからだ。 …え、待って！？ 慌ててまっすーの手を離す。 「何で私が七菜だって分かったのっっ？！」

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#HM3D　135/162 「あ！えっとぉ…」 「…携帯貸して？」 「え」 「…手越さんから貰った画像、 　全部見せて頂けます？」 「おー…」 謎の反応の後、まっすーは袋を漁って、 私にエクレアを差し出す。 「この後小山にちゃんと怒られるから、 　これで勘弁してください。」

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#HM3D　136/162 「ちょっ！見せられないような画像…？！」 慌てる私を見て、まっすーはふふっと笑った。 「じょーだん☆」 そう言って、携帯の画面を見せる。 そこには、私のfacebookのページ。 「大丈夫、七菜ちゃんの身体なんか、 　撮ってないよ、手越は。」

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#HM3D　137/162 「身体“なんか”って言い方、微妙…」 「んー？」 「何でもないっ。」 まっすーは隣で棒アイスを開けて、 子供みたいに頬張った。 「あ！違う！」 「何？」 「私手越さんに、どうしてもお礼言いたくて…」 「…手越、多分今日無理だよ。」 「え？」

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#HM3D　138/162 「今頃成田だと思うな。」 「成田？」 「決まったって、映画の準主役。」 「へっ？！」 「七菜ちゃんが受けた、オーディションで。」 嘘…本当に？ 私、コケたんだよ？ いっぱい失敗したんだよ…？ 「ま、俺があんだけサポートしたからね☆」

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#HM3D　139/162 「…何で言わなかったの？」 「え？」 ふと隣を見ると、少し膨れたまっすーの顔。 「…怪我のこと。」 「あぁ…だって、言ったってどうにもなんないから。」 私はふわっと微笑む。 「やるって決めた事やる以外に、選択肢なかったから。」

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#HM3D　140/162 「…止めて？そういう…手越ぶるの。」 「はぁ？別に私は…」 増田さんの冷たい視線。 少し斜め上から来るせいで、余計怖い。 「…シゲにでも会ってく？好きなんでしょ？」 「別に、そんなミーハーで来た訳じゃないし。 　それに、シゲに会うの緊張するし。」

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#HM3D　141/162 「何それ、俺には緊張しないの？遺憾だな。」 「まっすーにはしないよ。 　…怖いとは思いますけど？」 「お前、折角俺があんだけフォローしてやって…」 「正直に言います！めっちゃ怖かったですぅ！」 「もっと敬え！緊張しろよ俺にも！」 「しません！」

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#HM3D　142/162 「これでも？！」 まっすーがぐっと身体を近付ける。 「あーそれも初日にやられたんで！」 「これでもっ？！」 ぎゅっと肩を掴まれる。 「全っ然緊張なんて…」 「…これでも？」 ふわり、まっすーの腕に包まれる。 「…まっすー？」 ―ぎゅっ。

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#HM3D　143/162 …え？ スタジオの裏、誰もいない路地裏。 まっすーに包まれてる間、 昨日までの３日間の記憶が、 走馬灯みたいに巡る。 厳しくて鋭くて怖かった。 でも、ちゃんと笑ってくれて―。 「３日間―“手越祐也”を、よく頑張りました。」 ―褒めてくれて。

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#HM3D　144/162 鼓動が速くなって、耳たぶが熱い。 ゆっくりまっすーの身体が離れる。 「ふふっ。」 緊張して、顔が見れない。 「赤くなったから、俺の勝ち☆」 「…へ？」 「…ばーか☆」 えっ、ちょっ…！ 私のドキドキ返せばかっ！！//

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#HM3D　145/162 「俺に惚れるなんて、100年早いから。」 「惚れてないっ！//」 ふっ、と柔らかく微笑む彼。 「ま、取り敢えず…」 まっすーが、私の頭を大きな掌で撫でる。 「手越には、ありがとうって伝えとく。」 「…うん。」 「あと…ありがと。」 「え？」

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#HM3D　146/162 「手越の夢、叶えてくれて。」 …そっか。 まっすーが大切なのは、手越さんだった。 私に厳しかったのも優しかったのも、 手越さんの為…なんだよね。 「…私じゃない。」 「え？」 「私じゃなくて、手越さんの力…ですから。」 奇跡は―終えなきゃ。

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#HM3D　147/162 「３日間、ありがとうございましたっ！」 まっすーの顔を見ないよう、深く頭を下げる。 「増田さんには、 　いっぱいご迷惑お掛けしました！」 ぎゅっと目を瞑る。 「ちょっ、七菜ちゃ…」 「これからもっ！！」 「ファンとしてNEWSを応援してます！！」

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#HM3D　148/162 「待てって…！」 増田さんの声を振り切るように歩き出す。 「勝手に自分だけで完結してんなよっ！」 通りに出ると、丁度タクシーが目の前を通る。 「…バカ七菜っ！！！」 停車したタクシーに滑り込むと、 ドアはすぐに閉まって、発車した。

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#HM3D　149/162 「七菜ぁ、早くしてよぉ。」 「んー、待って待ってー？」 久々にヲタ友達とデート、 久々のジャニーズショップ。 …勿論、あの３日間の話はしてない。 話したって、信じて貰える訳無いし。 「ねー、可愛いシゲと、カッコいいシゲ、 　どっちにしよー？」