魂命を継ぐ幽朧の境界:三日目昼

* 揺らぎ、あって、尚。 *
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【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

そうして。 「おめで、とう…?…その。随分と、育ったようだ」 困惑気味に龍は、祝いの言葉を述べてみた。祝うものなのかどうかは、よくわからない。 人の仔の頭髪というのが、取り外し可能だったり一晩で驚くほど伸びたりするというのを、初めて知った。 知ったが。 今は、戸惑いしかなかった。

2015-06-26 23:11:01
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

「余(わたし)も長い時を人の中で過ごしたものだが。こんな事実には、終ぞ気づかなかったよ…」 もしかしてこれも、偉大な魔法の一種なのだろうかなどと考えながら。 戸惑いつつも、感心する。

2015-06-26 23:14:57
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

広げられた両腕。相手が拒まなければ躊躇なくその中に飛び込むだろう。 むぎゅりと抱き着いて、すりすり、頬を寄せて。 少し大きくなったような気がする。声も深く低く、大人びた響きになっていて。 対する少女は何も変わらず。けれど表情は前よりも幾分も活き活きとしているだろう。

2015-06-26 23:41:13
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

おめでとう、と、竜の青年が言うなら。 つられて少女も再び。賢者のほうを見やって。 「やっぱり。長い。わ」 言いながら、自分の髪の毛先をつまんで、じ、と目の前にかざしてみる。 どっちが長いかな、と、比べているような。そんな仕草。

2015-06-26 23:42:47
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

龍の青年が、戸惑いの視線と言葉を投げかけてくる。 「?」 紅玉の瞳の少女が、改めて、髪が長いと言う。 「??」 「何を言っておるのじゃ。儂の髪は何千年も前からこの長さじゃよ」 訝しげに、眉を潜めて。

2015-06-27 00:23:06
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

何千年も前から、と言われると、龍は瞳を瞬かせて。 はて、とこめかみに指先を当てる。 「そうだっただろうか…?」 言われてみればそんな気もするが。考え込むこと、幾許か。 いや。違う。 思わず首を振った。 「いや、やはり、おかしい」 あの眩しい記憶を、龍は忘れていない。

2015-06-27 00:37:12
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

「そんなことないわ」 何千年も、と言われれば、少女は即座に首を振った。 「だって、昨日は、ぴかぴか、してた」 もっと、こう。と。 自分のおでこから後頭部までを撫でる仕草。 「それに。浮いてた」 こくこくと頷きながら。言って。 同意を求めるように、ぐるりと一同を見回す。

2015-06-27 00:41:29
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

「賢者殿、昨日頭髪が飛んだ時は、短かったろう?」 呼び水のように思い出される記憶を、ひとつひとつ開いて。問う。 そして思い出す。空飛ぶ猫もどきのこと。空を焦がした光線のこと。 白い羽根を持った少年のこと。

2015-06-27 00:41:57
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

あのとき震えていた少年は。 どこへ行ったのだろうか? ふと辺りを見渡して、胸の内に呟く。 あの時手にしていた、紅いものは。 一体、何だっただろう。

2015-06-27 00:44:12
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

龍の青年の語る言葉を聞いて。 少女もまた、過日の記憶に想いを馳せる。 両手を目の高さに持ってきて。まじまじと見つめた。

2015-06-27 00:49:30
【刃】エクスィ @hexi_6_AO

触れた小さくも暖かな手を、憶えている、ような。 頭を撫でた優しい手を、憶えている、ような。 笑い転げる少年。凛とした佇まいの女騎士。落ち着いた物腰の男性。楽しげにからからと笑う小柄な姿。どこか儚げな風貌の女性。 それらが、ありありと思い起こされて。 紅玉の瞳が、一瞬。揺れる。

2015-06-27 01:04:25
【鞘】エピカ @Epica_AO

「──おはよう、」 それは水面の揺蕩いのように。皆から外れた位置から姿を見せて、ことりと首を傾けた。 辺りの様子には幾らか納得がいったのか、小さく目を細めた後、賢者の髪には目を瞬いて。 エクスィと、それから龍の言葉に同意を示すように二度、頷いた。

2015-06-27 05:01:46
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

ピカピカとか。 浮いてたとか。 飛んでたとか。 「うっ……ぐっ……!」 ああっ、忌まわしき記憶の封印が……!! 解けーーない。 都合の悪い記憶には、しっかりと蓋をする。 パタン。ぎゅっ、ぎゅっ。 そうして、一瞬のフリーズののちに、残った一つの言葉は…… 「……短かった?」

2015-06-27 08:24:39
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

彼らは口々に、賢者の髪の様子が昨日までと違っていることを指摘する。 しかし、彼は遠い過去の自毛を再現したこの長髪以外に、装備した記憶など、無い。 では、この周囲との食い違いは一体? 「……魔力の流れも、混沌の乱れも無かった。外部より、儂の記憶へ干渉することは不可能……」

2015-06-27 08:24:51
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

となれば……この状況を引き起こし得る『現象』は、ひとつだけ……。 「ラプラスの、改竄式……」 驚いた様子で、そう漏らす。 それならば、突如として『消えた』七人のことも説明がつく。 「まさか……生きておるうちに、この身の改竄を『観測』できるとは、な……」

2015-06-27 08:24:56
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

立てた仮説が確信へと変われば、未知の事象に触れる興奮を胸の内に抑え、コホン、咳払いをひとつ。 「ーー『新たな世界』の誕生を。そして、境界から姿を消した七人の、行く末を……皆で祝おうではないか」 此処に残った面々へ、うむ、と頷いてみせ。

2015-06-27 08:25:00
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

「儂の世界や、うぬらの世界、別々の世界が、星の数ほど存在することは、うぬらにもわかるな」 「そんな『別の世界』が新たに誕生する際の『衝撃』で、いくつかの世界に『運命変動』が起こったようじゃ」 僅かだが、おそらく此れもそのうちだと、自らの髪の先をつまむ。

2015-06-27 08:25:05
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

「おそらく、姿を消した彼奴らは……」 遠い眼差しを、遥か、白の世界の空へと向けて。 「……『見つけた』のじゃろう。変動した、己の世界の中で。……鞘は刃を。刃は鞘を」 くるり、再びこの場の面々へ。 「つまり、儂らは運命の変動があってなお、未だ、彷徨っておるということじゃな」

2015-06-27 08:25:11
【鞘】大賢者タマゴ・ボーロ @tamagobo_ro_AO

ふふんと、自嘲気味に。 されど、何処か楽しげに。 「運命の変動があってなお、儂の弟子をやれる根性のある者が、儂の世界にはおらぬということじゃ。ーー全く!昨今の若い奴らはこれだからいかん。自分の世界を支える名誉あるお役目だと言うに、情けのうて……逆に笑えてくるわい」

2015-06-27 08:25:14
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

運命の変動。 長い髪の賢者の言葉に、頷くでも頭を振るでもなく。 ただ幾度かの瞬きをして、やがて。 ふむ、と一言、龍は零す。

2015-06-27 09:11:57
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

姿の見えない幾人かが、探すものを得たのだろうと、聞けば。それには小さな安堵の溜息をついて。 「変動を経てなお、彷徨う、か」 己の身を不思議に返り見る。

2015-06-27 09:15:21
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

いつか、緋の瞳の魔王から聴いた、時の環と世界の糸の話を、ふと思い返す。 果たして、龍の世界の糸は、絡まったのだろうか、途切れたのだろうか。 或いは、龍の世界には、何も起こらなかったのか…?

2015-06-27 09:19:19
【鞘】ル・レクタ @R_l_eqta

じっと、賢者の長い髪を見つめて。 くるりくるりと脳裏を廻る、記憶、思考、感情を。龍は遊ばせる。 これから、何をすべきか。 これから、何ができるのか。 それはきっと、初めから変わらないのだろうから。

2015-06-27 09:22:17
【刃】ペンデ @pende_AO

少女を抱きとめて、長い髪を撫でる。 エピカとエプタの姿を見つければ、片手を離して手を振った。 「おはよう。」 姿的には、エプタは自分が知ってるスライムの姿によく似ているけれど、何かあったのだろうかと首を傾げる。

2015-06-27 09:49:37
【刃】ペンデ @pende_AO

昨夜の自分たちのように賢者の頭髪に触れるのに、やっぱり違和感だよなとうんうんと頷いていた。 賢者の説明に視線を向けたのは昨日白い少年がいた場所。 「色は見つけられたのかな。」 恐怖をあらわにしていた少年が、何よりも心配だった。 無事、幸せになっていればいい。

2015-06-27 09:49:57
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