世にも奇妙な「愛」の話

■ヴィゴ・ニールセン ニールセン家の跡取り息子。淡い金髪に宝石のようなエメラルドの瞳が印象的な、白いスーツの御曹司。 ■ダニエル・マクレーン ニールセン家に仕えるフットマンの一人。自信家で協調性に欠ける。 続きを読む
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御曹司 @applex004

「あー…このまま寝ちゃいそう。寝かしつけテくれル?…いつもみたいに」 若旦那はポツリとボタンを外し襟を寛げる。白い首元に真新しい鬱血痕を覗かせて貪欲な翠に見つめられると息が詰まるようだった。 「アハ、おいデ♡」 そう、誰にでもこうではない。俺は若旦那のお気に入りなのだから。

2015-07-01 20:55:00

002:Hunting(アデル&アリス)

御曹司 @applex004

「あー、また外れた」 がっくりと肩を落とす少年に、双眼鏡を構えていた少女がくすくすと笑う。 「アデルがまた森に豆まきしてる」 「うるせー!アリスだって外すときは外すだろ!」 「わたしは敷地の動植物の保護が仕事のメインなんです。シー、ヴィゴさまの集中が切れちゃう」

2015-07-01 21:41:51
御曹司 @applex004

狩猟番の少女と、その見習いの少年が見据える先には少し離れた場所で息を殺して狙いを澄ませる主人の姿があった。 普段の柔和な笑みと比べ幾分か鋭さを増しているものの、真剣に銃を構える姿は実に楽しそうである。

2015-07-01 21:49:04
御曹司 @applex004

森に一発の銃声が轟く。 双眼鏡を手に銃弾の先を追った二人は同時に感嘆の声を漏らした。

2015-07-01 21:53:08

御曹司 @applex004

結局主人が仕留めた一匹の牡鹿のみを土産に屋敷へと帰った三人は銃を仕舞う小屋の中で休息を取っていた。 「それだけの腕があるのですから大会に出場されればいいのに!」 「アハ♡アリガト、アデル。だけど狩猟の大会って貴族のお遊びの場でショ。ああ言うのは階級で優勝者が決まっテるんだヨ」

2015-07-01 22:01:30
御曹司 @applex004

「えー、なんですかそれ!不公平です!実力勝負ならヴィゴさまの右に出る人なんていないのに!」 自分のことでもないのにむっすりと頬を膨らませる少年に男は笑った。 「いるヨ、ボクでも勝てない人」 「「嘘!?」」 「アハ♡ホント!」

2015-07-01 22:06:18
御曹司 @applex004

身を乗り出してハモった二人を可笑しそうに制しながら、男が小屋の狩猟関連の本が並ぶ棚から取り出したのは一昨年くらいに発行されたであろうまだ新しい一冊の雑誌だった。 表紙にはまだ若い少年が幼い顔を凛々しく研ぎ澄ませて銃を構えている写真が載っている。

2015-07-01 22:11:03
御曹司 @applex004

「コノ子♡」 「嘘だぁ!俺とそんなに変わんないじゃん!」 「アデルと一緒にするのはアレですが……とてもお若い方ですね」 まじまじと雑誌を見つめる二人に男は「そうだネ」と相槌を打つ。その表情はなにかを懐かしんでいるようだった。

2015-07-01 22:17:59
御曹司 @applex004

「アレン・フローレンス。アデルより三つ上だヨ」 「ええー!?だって、背も低いし腕だって俺の方が絶対高いですよ」 こんな、まるで女みたいに線の細いやつが、と喉まで出かかったものの流石に失礼かと思い少年は慌てて言葉を飲み込んだ。

2015-07-01 22:22:27
御曹司 @applex004

「アハ♡実際会っテみるともっとキュートな子だヨ!けど、銃を構えると一瞬で空気が変わるっテいうか……人には見えないラインが見えテるみたいにすっごく正確に獲物を仕留めるんだヨ。もーホント、初めてアレンの射撃を見たときボク感動しちゃっタ!」

2015-07-01 22:28:44
御曹司 @applex004

「普段は全然、虫も殺せなさそうな子なんだけどネ。銃を持ったアレンを見たラ、"あ、コノ子には勝てなイや"っテ思っちゃっタ」 狩りの正確性はもちろんだけど、彼が本当に凄いのは近距離射撃だ。高速で動く獲物に向けて彼がことも無げに放つ弾が外れたところを男は見たことがなかった。

2015-07-01 22:43:44
御曹司 @applex004

迷いのなさ。構えてから弾を放つまで、一切無駄のないモーションは完成されすぎていて冷徹な印象さえ受ける。 「ヴィゴさまがそこまでおっしゃる方なら、いつか見てみたいものですね」 熱っぽく語る男の言葉に少女が呟くと、少年も力強く賛同した。

2015-07-01 22:47:47
御曹司 @applex004

「じゃあ会いに行っテみル?」 「えっ!?」 「会えるんですか!?」 「週末なラ射的場にいルんじゃないかナ?行っちゃう?」 「行っちゃいます!!」 「わー、楽しみです!」

2015-07-02 21:12:39

003:Guns(アレン)

御曹司 @applex004

「それで、今日はそんな大所帯なんですね、ヴィゴさん」 「アハ♡久しぶりだネ、アレン!」 お久しぶりです、とゴーグルを外して礼儀正しく少年がお辞儀を返す中、パンパンと耳を劈くような発砲音が至る所で轟いていた。 「彼が噂のアレンクン♡」

2015-07-02 21:32:58
御曹司 @applex004

男の後ろで緊張気味に様子を伺う少年少女にアレンははにかんだ笑顔を見せた。 「初めまして、アレン・フローレンスです」 オレンジがかった長めの金髪を後ろで一つに纏め、育ちの良さを窺わせる動作で会釈をするアレンに、二人はお互いに見つめ合うと無言で肩を組んで顔を寄せ合った。

2015-07-02 21:46:48
御曹司 @applex004

「顔ちっさ!髪サラッサラ!」「絵に描いたような美少年ですよ!」 「アハ♡キミがあんまりキュートだかラ二人とも興奮しちゃっタ♡」 「…また、ヴィゴさんはすぐにそうやって人をからかうんですから」 アレンは呆れたように言いながらも褒められるのが恥ずかしいのかほんのりと頬を染めた。

2015-07-02 21:47:06
御曹司 @applex004

「皆さん今日は見学だけ…」 アレンが言いかけたとき、一人の身なりの良い壮年の男性が近づいて来た。 「やぁやぁ、ヴィゴくんじゃないか!」「アハ!ウィンザーさん、こんなトコロでお会いするなんて珍しいですネ」 顔見知りらしい男性は親しげにヴィゴの肩を叩く。

2015-07-02 21:58:47
御曹司 @applex004

「少し気晴らしにね。娘が見に来ているんだ。良いところを見せたくてね。おお!そうだ、ヴィゴくんは娘に会ったことがあったかな?いや、実は是非とも娘がきみと話をしてみたいと言い出してね」話がてら男性が視線をやる先にはしとやかな年頃の女性が緩やかに手を振っていた。

2015-07-02 22:07:46
御曹司 @applex004

ちらりと一度三人を気にしながらも 「光栄でス♡同伴者がいますのデ少しダケですが」 ヴィゴは愛想良く頷くと「少しだけ、ゴメンね♡」と三人に断りを入れ男性に着いて行ってしまった。 「わー…どこに行ってもモテモテですね、ヴィゴさま」 「ヴィゴさまだからな」

2015-07-02 22:13:49
御曹司 @applex004

少し離れた場所で顔の良い御曹司に手の甲にキスをされ、楽しそうに談笑する女性の姿が見える。 「アレンさん?」 それをじっと見つめている少年の顔は使用人の二人には見えない。爪が食い込むほどに固く握られた拳も。

2015-07-02 22:19:26
御曹司 @applex004

「…ヴィゴさんは相変わらずですね」 振り返ったアレンの困ったような笑顔に二人も苦笑を返した。 「今日はお二人とも見学だけですか?ぼくで良ければ練習お付き合いしますよ。…教えられるような身ではないですが」 「わぁ、待っていました!」 「是非ご指導お願いします!」

2015-07-02 22:22:54
御曹司 @applex004

歳が近いこともあってか、すっかり打ち解けた三人は貸し出し用の道具を借りてそれぞれ練習場のスペースへと向かった。

2015-07-02 22:26:09
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