風音】蝉が鳴くほどではない時期。だけど湿気で髪がべたつくような時期。髪を束ねてきたら良かったかと思いながら目の前の本棚を見上げる。
2015-07-09 11:16:30狭間】近頃は落ち着いた日々を過ごしている。ふと思い立って、なにか本を見繕いにきた。風の涼しい日々と、あかるい日射しのさす日々と、空気の中の水分が、飽和するまで高まる日々が、繰り返される季節。まもなく梅雨に入る。
2015-07-09 11:19:45風音】黒いTシャツに白いロングスカート、肩にはエコバックをひっさげて手には数冊の参考書と料理本。休日に図書館は良いものだ。なんといってもタダで本が読めるーーなんて、自分で思っていてなんだか卑しいと思わなくもなく
2015-07-09 11:21:04狭間】図書館は、静かだ。人は多いのに、満ちるのはさやさやと歩く足音ばかり。たまに、小さな子どもの声。背表紙のタイトルを、流し見るように眺めながらゆっくり歩く。
2015-07-09 11:21:45風音】そんな自分が特に嫌いでもない。 (こんなものかな) 手に持つ本と、棚の本を見比べてから踵を返し、さらりと髪とスカートを流しながら図書館に設置されているテーブルのあるスペースへと向かう。
2015-07-09 11:22:59狭間】七分丈の濃い色のジーンズに、白いシャツと、重ねている青緑のパーカーはどちらも半袖だ。このごろはそういう格好で、いい。本は借りる気満々で、黒い小振りのデイパックを左肩に引っ掛けている。
2015-07-09 11:26:38風音】静かだから、つい息を潜めてしまう。棚の迷路を縫うように歩いていけば、目の前にいつか見たような後姿が視界に入る。 (…?) どこかで見たような気がする。白髪。どこだったか。うーんと悩む素振りをしながら背伸びをして相手の顏を見ようとするも、見えない。
2015-07-09 11:27:22風音】思考しながら顏を覗こうとしながら、足は自然とゆっくりとそちらの方に (あ、思い出した。でも名前なんだっけ、というか聞いたっけ) 何かイヌみたいな名前をつけてしまったような気がする。 (ああ違うシロくんだシロくん) そう自分に突っ込み
2015-07-09 11:30:43狭間】高い位置の背表紙を眺める視界の端に、ちらりと、綺麗な長い髪の先がよぎったような気がした。錯覚かもしれない。とりあえずそのときは、『幻想小説特選1200/あらすじで読む名作1200冊』というタイトルに気を惹かれ、そちらに手をのばすほうを選ぶ。千二百冊のラインナップが気になる。
2015-07-09 11:31:14@c_yu_n 風音】歩み寄り。そっと、彼の肩に触れようと手を動かすも、下ろし 「……ファンタジー好きなの?」 彼が手を伸ばした先にあるタイトルを読んでそう声をかける。
2015-07-09 11:33:16狭間】手に取って、適当な頁を開いてみる。小説というよりも、辞典のような本になっている。ぱらぱらとめくっただけでも、自分も知っている有名どころの名前がいくつかあって少し笑い、けれど借りるほどでもないかな、と、すこし目を通して戻そうとしたところに、
2015-07-09 11:33:52@asasmamama1 狭間】「!」 ひそめた静かな少女の声に、手に持った本を返そうと掲げたまま、誰かはとっさには分からないけれど振り返る。顔を見て、 「あ、」 声が零れるが、零れたわりには、彼女や空気の静かさにつられたせいか静かな声になる。
2015-07-09 11:36:09@c_yu_n 風音】「…、あ ごめんつい」 声かけちゃった、と言う風に視線を配る。自分のことを覚えているだろうか。 「なんか、ここにいるのが意外だったから」 本を抱え直しながら目を伏せる。
2015-07-09 11:38:50@asasmamama1 狭間】「…うん、わりと」 いちど瞬いて、気を取り直して本を戻し、それから改めて、身体は棚に向けたまま、顔だけを向けなおす。 「……ええと、」 久しぶり、というべきか、そっちはファンタジー好き?と訊こうか、咄嗟に迷い、
2015-07-09 11:39:02@asasmamama1 狭間】「んーん、…ひさしぶり」 抱えた本と、目を伏せる仕草を見ながら、気持ち身体を相手のほうに向けなおす。あいかわらず綺麗な髪だな、とぼんやり思いながら、 「…きみも、本、借りに?」 好きなのかな、と思うと、なんとなく親近感のようなものが湧く。
2015-07-09 11:41:46@asasmamama1 狭間】顔を上げる動作、横顔の輪郭線、それにつれて髪の流れる動きを、やはり、綺麗なもんだなあ、と思って眺める。不思議と、とても自然に、そういう感慨が湧く。
2015-07-09 11:43:58@c_yu_n 風音】「…久しぶり」 そう声をかけてくれて内心ほっとする。 「好きって言っちゃうと…本好きな人に申し訳ない気がする…今日の目的、これだし」 そう言いながら背表紙を見せるように持つ。物理と化学の参考書と料理本。小説も読んだりはするけれど、詳しいと言う程ではない
2015-07-09 11:47:09@asasmamama1 狭間】「そっか、…受験だっけか?」 あれと彼女は、そういえば同い年だっただろうか。それなら今年は受験だろう。料理本に目を向ける。 「お、なんか作んの?」 ひそひそと声を向けてみる。この年頃の女子が借りそうな、お菓子をつくろう、という本ではなさそうだ。
2015-07-09 11:53:19@c_yu_n 風音】「ううん、受験はあんまり考えてない。でも勉強は好きだから」 大学に行くよりも働き始めたようないい気がするからそう答える。でもそれを父に言うと、反対されるのは目に見えていることも分かる。 「いつもご飯は私が作るから、種類増やしたいだけ」
2015-07-09 11:57:32@asasmamama1 狭間】「…へえ、」 勉強は好き、だけど受験は考えていない。ぱちり、と瞬く。それはもったいない気がする……が、あまり自分のような部外者が突っ込むところでもないだろう。 「…えらいんだな。…えっと、時間ある? よかったら、向こうで話さない? 奢るよ、」 →
2015-07-09 12:03:26