ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ:ニチョーム・ウォー#8 & フェアウェル・マイ・シャドウ#7 後半
「何たること」ディクテイターはもはやフィルギアを見ることすらせず、空に湧いた影を見、立ち尽くす。「ハァー……ハァーッ……」フィルギアは痩せた胸を上下させながら、声を絞り出した。「アー……ありゃあアマクダリの航空部隊だ……参ったよな……だけど……」彼は目を閉じた「諦めねえぞ」44
2015-07-10 22:49:39スターゲイザー。その無限の命を担保する静止衛星は再起動オペレーションの最中。アマクダリ・セクト12人の一人にして、このニチョーム殲滅作戦の最高責任者である彼を墜とせば、進軍の手が止まる。レディオ放送がアマクダリの欺瞞的情報統制に揺さぶりをかける。生存の道はその先にこそある。 45
2015-07-10 22:52:30再起動オペレーションの終了まで10分弱。その間にスターゲイザーさえ倒せば……「奴を倒したからといって、運命は変わらんに違いない」ディクテイターが言った。「ハ!」フィルギアは笑い飛ばした。「俺らの生き方は変わるさ!騙されたと思って、下のヤモト=サンらを助けに行けよ!」 46
2015-07-10 22:55:07装甲が焼き切られ始める!「イヤーッ!」シャドウウィーヴの声!カメラに映像!「生きてた!」ユンコが叫ぶ!影は銃撃を避けながらシデムシの頭を踏み渡り、蹴りつけ、クナイを投擲する!だが鋼鉄の多脚戦車を止めることはできぬ!「トレーラーを走らせろ!振り落とせ!」レイジがカメラに叫ぶ! 22
2015-07-10 22:56:57「グムーッ……」ディクテイターは唸り、UNIX機の焦げ跡にもたれかかるネザークイーンと、大の字に仰向けのフィルギアを交互に見た。そそくさとニンジャモーゼルを拾い上げ、「私しかおらんなどと!私しか!」肩を怒らせ、足早に退出した。「……ハッハハハハ!」フィルギアは笑った。 47
2015-07-10 23:02:28ユンコはLAN直結した精神をUNIXに投射する。巨大武装トレーラーの制御を深める!ゴアオオオオオン!エンジンが重々しい唸りを上げ始める!急加速!『真っ直ぐ!?』ユンコが車載スピーカーを使ってシャドウウィーヴに叫ぶ!「とにかく走れ!速度を上げろ!振り落とせ!」『わかった!』 23
2015-07-10 23:07:48「さて、まだやれる事はあるかも」フィルギアは呟き、大儀そうに身を起こす。「アータ、何なの?」ネザークイーンは青い顔で言った。「アータは、シマガナシは、どうしてここまで」「ヒヒヒ、レディオも言ってる」フィルギアは見ずに答えた。「隣の奴をほったらかせば、明日は自分で、味方は無し」48
2015-07-10 23:07:53ディクテイターが立った場所にフィルギアは立ち、空の編隊と、大通りの攻防を見下ろした。「アマクダリはごめんだよ……俺はニンジャで……長生きで……楽しくやりてェだけなんだ。楽しくやりてェだけ……それだけの為に、こんなに苦労するんだ。びっくりだよ……」彼は北ゲート方向を見やった。49
2015-07-10 23:12:03スターゲイザーを輸送してきた巨大トレーラーは、まるで鋼鉄の怪物だ!「「「グワーッ!」」」周囲のハイデッカーが次々轢殺される!SMAAASH!武装ビークルを小石めいて踏みつぶす!ギギギギギギギ!コンテナ部に爪をかけたばかりのシデムシ二機が、引きずられて火花を散らし始めた! 24
2015-07-10 23:12:29「ワッツ」北ゲート方向で今まさに起こっている出来事を、フィルギアのニンジャ視力はさやかに見た。「どうしたの……」ネザークイーンが呻いた。暴走トレーラー。フィルギアは笑い出した。50
2015-07-10 23:15:59「まだ多脚戦車が残ってるぞ!完全にコンテナに巻き付いてる!」『いい考えがある!』ユンコが強気になる!己のボディが強大な武装トレーラーそのものと化したかのように!さらに加速!『落ちないでね!最短距離でいく!』ユンコの意図は明らかだった。シャドウウィーヴは跳躍姿勢を取った! 25
2015-07-10 23:18:45SMAAAAAAAAAAAAASH!凄まじい轟音がニチョーム全域に響いた!「「「グワーッ!」」」鉄パイプとコンクリート片とハイデッカー、そして多脚戦車シデムシが、小さな玩具めいてバラバラに吹き飛ばされた!巨大武装トレーラーは窮屈な北ゲートを強引に粉砕しながら突破したのだ! 26
2015-07-10 23:23:30「イヤーッ!」「ンアーッ!」セレニティの二刀流サイ攻撃はヤモトの防御をかいくぐって傷つけた。337ビルの正面口前、ヤクザの死体が散乱する中、ニンジャ同士のイクサは激しさを増す一方だ。ヤモトの首元のニンジャソウル布はブスブスとくすぶり、その密度も長さも減衰を始めていた。52
2015-07-10 23:29:59『生きてる!?』ユンコの声。「凄いな!」盛大に飛んでゆくシデムシの機体破片や戒厳令カンバンを見上げながら、シャドウウィーヴが笑い、口の中の血を吐いて捨てた。彼は血とコンクリ片にまみれながら、装甲トレーラーの背面に辛うじてしがみついていた。『ヤグラは真っ直ぐ!?』「そうだ!」 27
2015-07-10 23:32:02「イヤーッ!」セレニティはサイをクルクルと回転させ、ヤモトの鎖骨部を付き刺しにいく!「ニイイーッ!」「グワーッ!」スリケニストを吹き飛ばしながら突進してきたセントールは、上体を反らし、ヤモトの襟首を後ろからグイと掴んで引き寄せ、投げ飛ばす!「イヤーッ!」ヤモトは壁を蹴り反転!53
2015-07-10 23:34:41トレーラーは止まらない!そのまま大通りを暴走する!後方待機していたシデムシやハイデッカーを次々轢殺!「「「グワーッ!」」」『ヤグラとの通信が途切れてる!』「アンテナが火を噴いてるな!」『助けに行こう!来てくれる!?』「ああ!どこへでも!」シャドウウィーヴは死ぬ気で笑った。 28
2015-07-10 23:35:06「イヤーッ!」「ニイイーッ!」走り込んだセントールの胸元に強烈な飛び蹴りを食らわせ、ヤモトを追うように二段ジャンプを繰り出したのはレネゲイド!「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」空中で三連続回し蹴り!「イイーヤヤヤヤ!」ワン・インチ距離ゆえ、ヤモトはカタナの鍔でこれを防ぐ! 54
2015-07-10 23:45:17「イイイヤアーッ!」「ンアーッ!」四連目の蹴りはヤモトの首筋を横から捉え、地面に流星めいて叩きつけた。蜘蛛の巣状のクレーターがアスファルトに生じ、ヤモトは肺の中の空気を残らず吐き出した。「イヤーッ!」レネゲイドはカイシャクのバクチクをヤモトに投擲!……KBAM! 55
2015-07-10 23:47:38これを二者の中間地点の空中で撃ち落としたのは、こそこそと忍び出て来たディクテイターのニンジャモーゼル援護射撃であった。ヤモトは咳き込みながら身を起こし、飛びさがった。「ニイイーッ!」セントールがセレニティをサスマタで突いた。「グワーッ!」そして投げ飛ばす。「グワーッ!」 56
2015-07-10 23:49:16激走する怪物!支配のシステムとして作られた無表情なる機械が、いま、アマクダリに牙を剥くのだ!「「「イヤーッ!」」」鉄条網を脱したばかりのモナーク、アドミラル、カッツバルゲルにとっても無論脅威!彼らは左右に飛び分かれ、轢殺を避けんとする!だが…中央のアドミラルが動けぬ!何故!?29
2015-07-10 23:50:14KKKKBAMMMM!アブサーディティはバクチクを散布しながら流麗に着地した。そして舌打ちした。「凡庸な言葉になってしまうが、悪あがきもここに極まれりだな」走り込んでくるセントールを見ながら、彼は瞑想的に言う。「ニンジャのイクサの時代は終わりだ。お前らも、俺達も、等しくな」57
2015-07-10 23:55:01「イイイイーヤヤヤヤヤ!」スリケニストが凄まじい勢いでスリケンを連投する。セントールの脚部に無数のスリケンが突き立つ。転倒しながら、セントールはサスマタを繰り出す。「イヤーッ!」アブサーディティは飛び、ただこの突進を回避する。後ろでセントールが倒れ、もはや起き上がる力は無し。58
2015-07-10 23:58:35