シェルティの黄昏町

少女は歌い、黄昏に紛れる。 シェルティ:13日目 死亡回数5:殺害回数2 【魂9/力6/探索2】 異形:爪 続きを読む
0
氷泉白夢 @hakumu0906

[ハンドアウト]気が付くと、坂の上から黄昏色の町を見下ろしている。どこから来たのかシャボン玉がひとつ、君の前で弾けて消える。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547#黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552

2015-07-11 02:33:54
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]鳥居の向こうに、夜へ続く橋がみえる。だが、目に見えない結界があるようだ。只の怪物には、通れない。《魂5以下で異形なし、もしくは力10以上かつ探索4以上のとき、黄昏町からの脱出成功》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-11 02:34:32
氷泉白夢 @hakumu0906

「ふんふんふっふふー、シェルティシェルティたそがれるー、シェルティシェルティ地獄行きー、ふんふんふふーん。泡へ続くは闇夜道ー、鳥居の向こうは人世道ー、ふんふふふっふーん。出る事叶わず獣道ー、人よ異形よ茨道ー、ふんふふっふふっふーん」少女も歌う黄昏時、何事も無くただ歌う。 #白夢町

2015-07-11 02:49:12
氷泉白夢 @hakumu0906

ここがどこなのか、何故ここにいるのか、まるでわからない。ひとつだけ確かなのは、私はこの黄昏に置き去りにされたという事実のみ。しゃぼん玉がふわりと浮くこの夕闇の町に私は一人。美味しい料理も鳥の囀りも、怪物に襲われる事も住民から石を投げられる事もなく、ただ静かに時が過ぎる #白夢町

2015-07-11 03:05:12
氷泉白夢 @hakumu0906

置き去りにされたという事実から勝手に憶測するに私はおそらく罪を犯したのではないだろうか。そう考えれば居心地の悪いこの黄昏も私の為に用意されたように見えて歌でも口ずさもうという気になるものだし、これからの災いは全て自分の為に起きると考えれば少しは恐怖も薄れるというものだ #白夢町

2015-07-11 03:11:56
氷泉白夢 @hakumu0906

「ふんふんふーん、二度とは帰れぬ彼方道ー、罪を許さぬ此方道ー、ふんふふーんふんふーん」歌うのをやめた途端、怪物に襲われそうな気がした。歌うのをやめた途端、住民から石を投げられそうな気がした。だから私は何かが起こるまで歌い続ける。黄昏に紛れつつ、黄昏に飲み込まれないように #白夢町

2015-07-11 03:16:29
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]川底に何か落ちている。今は何の役にも立たないが、この町へ入る前、君がほしがっていたものだ。《水耐性所持かつ探索1以上で発見【魂+2、不要な異形を1つ捨てることができる】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-12 03:24:29
氷泉白夢 @hakumu0906

「ふふふんふー、私ー、水辺のー、白い鳥ー、きらめーくー、みーずにーはー、はいーれなーいー、ふふふだけどー、翼をー、もがれててー、きらめーくー、そーらにーもー、とびーたてーぬー」ずっと探し求めていた物が水の中にあった気がした。それを取る事は決してできない、そんな気もした #白夢町

2015-07-13 01:04:41
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]「握手しよう」青年のガラス片のような爪先が、君の手に食い込む。「我慢比べだ。先に声を上げた方が死ぬってルールでどう?」《力2以上で勝利【魂+1】、力1以下で死亡【魂-1/異形『爪(力+2)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-13 00:54:01
氷泉白夢 @hakumu0906

「良い歌だ」その声に私はぴくりと慄く、とうとう歌が途切れた。「感動したよ」そう言ってはその男は近付いてくる、男?本当に男なのだろうか。体のあちこちに透明の欠片が突き刺さるように生えているし、その顔は宝石のように角張り透けている。「握手をしてくれないか」 #白夢町

2015-07-13 01:13:13
氷泉白夢 @hakumu0906

拒否する事など出来ない。目も口もないその透けた顔は果たして、私の体が震えている事に気付いているのだろうか。手を握る。痛い。痛い。「我慢比べだ。先に声を上げた方が死ぬというルールはどうかな?」痛い。いたい。イタイ。なんで。そんな。痛い。ことを。痛い。イタイ。いたい。痛い。 #白夢町

2015-07-13 01:16:30
氷泉白夢 @hakumu0906

私は、歌った。何も我慢することのできない、哀れなシェルティの最期の歌を。ウタッタ。 #白夢町

2015-07-13 01:19:03
氷泉白夢 @hakumu0906

シェルティ:3日目 死亡回数1:殺害回数0 【魂9/力2/探索0】 異形:爪 #白夢町

2015-07-13 01:24:07
氷泉白夢 @hakumu0906

[ハンドアウト]気が付くと、君は踏み切りの中央にいる。遮断機は下りているが、電車が来る気配はない。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547#黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552

2015-07-14 00:54:10
氷泉白夢 @hakumu0906

私の歌が終わった後。痛みを伴う赤から飛び起きた私は、やはり赤い夕焼けのぼんやりとした明かりで目が覚めた。辺りを見回し、そこが踏切の中央、線路の真ん中である事に気付く。慌てて飛び起きたがどうやら長い事電車は来ていないような雰囲気を感じ取った。私は死んだのではなかったのか。 #白夢町

2015-07-15 01:51:53
氷泉白夢 @hakumu0906

全てを夢と片付けるにはあの時私の歌を途切れさせた痛みは余りに鮮烈で消し難いものであり、この町に来る前、今までの私の生活全てが夢であったというほうがまだ現実的な気さえした。むしろ今この瞬間が夢で会った方がまだ救いもあったが、どうやら私の罪はそんな軽い物ではなかったらしい。 #白夢町

2015-07-15 01:57:49
氷泉白夢 @hakumu0906

「痛……」起き上がろうとした私の足を切り裂く何か。それが皮肉にも全てが夢でなかったという事を教えてくれる。私の足を切り裂いたのは、我慢することすらできない私を断罪したあの男のように透明なガラスの爪であり、それが生えていたのは紛れもなく私の手であったからだ。 #白夢町

2015-07-15 02:05:45
氷泉白夢 @hakumu0906

「ふんふふふーん、我慢の効かないシェルティはー、ギアマンの爪をつけられてー、夢も希望も砕け散るー、ふんふふんっふふーん」目は熱いし鼻の奥は痛いしで歌になどなっていなかったかもしれない。それでも歌だけが孤独で罪深い私を許してくれるのだ。自らの手すら許してくれないこの私を。 #白夢町

2015-07-15 02:10:51
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]溜め池の深くに、ビニール袋で密封された封筒が沈んでいるのを見つける。《水耐性所持のとき【アイテム:札束(診断結果に「住人」の文字が含まれる時、一度だけ結果を無視できる/死亡時に消失)】を入手》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-14 00:54:17
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]溜め池の深くに、ビニール袋で密封された封筒が沈んでいるのを見つける。《水耐性所持のとき【アイテム:札束(診断結果に「住人」の文字が含まれる時、一度だけ結果を無視できる/死亡時に消失)】を入手》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-15 01:04:31
氷泉白夢 @hakumu0906

「ゆーびーきりげーんまーん、うそつくまえにー、傷千本つーけるー、指落ちたー」ちゃぷり、ちゃぷり。水際を私は歩く。溜池の近くは不思議と心地よく私の歌を響かせてくれた。底に何かが落ちているのが見えるが、水の中では歌えない。私はただ水辺で歌を歌い続けた。何も襲ってはこなかった #白夢町

2015-07-15 02:18:08
氷泉白夢 @hakumu0906

[町]どこからか、君の大好きな人の声がしている。狂おしいほど愛おしい。君は大声でその人の名前を呼んだ。《探索3以上で発見【魂+3、不要な異形を1つ捨てることができる】》だが、それは夢であった。 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

2015-07-16 00:51:32
氷泉白夢 @hakumu0906

どこからか、声が聞こえた。知っている声が、聞こえてきた。私の大好きな人の声。「……お兄ちゃん」私は歌うのをやめた。その声を、聞き逃したくなかった。私は走る。声の方へ。走る。走る。どこまでも、走れる。お兄ちゃんに会うためであれば、どこまででも、走れる。 #白夢町

2015-07-17 01:00:31
氷泉白夢 @hakumu0906

私が歌うのは兄の影響が大きかった。兄がいつも歌っていたから、私もいつも歌っていた。兄は特別に歌が上手いというわけではなかったが、それでも私にとっては特別な歌だった。この町に来てから忘れていた事が少しずつ思い返されていく。お兄ちゃんの声が、歌が、思い出させてくれる。 #白夢町

2015-07-17 01:04:41
氷泉白夢 @hakumu0906

「お兄ちゃん!」水面の向こうにお兄ちゃんが見える。私は手を伸ばす。でもお兄ちゃんは水の中へ消えてしまった。水の暗さと冷たさが、私に先を追わせる事を躊躇わせる。水の中では歌えない。でも、ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはどうして水の中で歌えるの? #白夢町

2015-07-17 01:09:59