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柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
質問があったので仕方なく20ツイートくらい使って解説しようと思うのですが宜しいでしょうか twitter.com/domkenRADIO/st…
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
まずはプリニウス時代の博物学に遡ってみましょう。このころ自然には「動物・植物・鉱物」という3つの界があると考えられており… いやさすがに遡り過ぎだ、20じゃ済まないぞ
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
まず結論から言うと、ウイルスは生命なのかと聞かれると大抵の生命科学者は「No」と言います。たまに「Yes」派の人がいるかな。 なんでかと言えば、まあ「生物」の定義を地球生物に基づいて考えてみた結果、どうもウイルスは別枠にしないと具合が悪いからです。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
まずウイルスというのは基本的に、ほかの生物に寄生して、その細胞を利用して増殖します。ウイルス単独では、いくら日光や水や栄養を与えても増えません。 一方、宿主がおらず単独では増殖できない細菌や寄生虫ってのもいます。こいつらは生物です。 なんで差別するの? という問題になる。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
「生命の定義」はいろいろありますが、代表的なものを挙げると ・「自己複製」分裂とか卵産んだりとかで自分のコピーを作る ・「代謝」外部の物質を取り入れて、エネルギー源や素材にする ・「恒常性」外部環境が多少変わっても、自分の中の環境を維持する このあたりが挙げられます。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
恒常性について少し解説すると、たとえばヒトの体温があります。外気温がたとえ0℃だろうと40℃だろうと、だいたいヒトの体温は37℃程度に保たれています。このように外部環境の変化に耐える能力を恒常性と言います。ただ生物によって維持する内容はまちまちです
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
で、前に挙げた寄生性の細菌や寄生虫は、たしかに単独で増殖できませんが、細胞の中にリボソームとかいった機構を備えていて、宿主からもらった栄養をもとに自分でタンパク質を合成し、DNAを複製して増殖します。つまり一応自前の「代謝」や「自己複製」をやってるわけです
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
ところがウイルスは何をやってるのかと言えば「宿主に自分の遺伝子を送り込んむ」だけです。宿主は、自分の遺伝子とヨソから送り込まれた遺伝子の区別をきちんとやらないので、ウイルス由来の遺伝子をせっせと増やしてしまい、宿主細胞からは出来上がったウイルスがポンポン出てくる。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
つまり複製はしてるけど「自己」複製ではないし、自分で物質をとりこんで「代謝」してるわけでもない。最終的にやることは寄生生物と一緒でも、その手段があまりに「生物的」でない。こういう事情を鑑みて「生命ではない」と言ってるわけです。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
短絡的に言うと、寄生性の生物は「昔のiPhone」です。定期的にパソコン(宿主)につながないと使えませんが、これもコンピュータであることには違いません。 一方、ウイルスというのは「USBメモリ」です。データが入っていて、パソコンが中身をコピーするだけで、コンピュータではない
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
…以上、「生物の定義はこれこれである。ウイルスはその定義を満たしていない。よってウイルスは生命ではない」というのが一般的な説明です。 で、ここからが僕の私見なのですが、正直この説明はスジが悪いと思っています。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
というのは、まず定義があって、それに基づいて「生物」「無生物」の区分が出来たのではなく、あくまで人間が生物と無生物を分けて、そのあとで「生物に共通する点」として先に挙げた「生物の定義」を作ったからです。それを使って「ウイルスは生物ではない」と言うのは、どうも循環論法っぽい
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
じゃどうしてウイルスは生命でないのかといえば、ぶっちゃけ「人間に似てないから」です。 (繰り返しますがこのへんは僕の私見です)
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
・人間は生命である。 ・人間に似てるものは生命である。よって動物も生命である。 ・植物やら細菌も根本的にはそんなに違わないから生命である。 ・一方、ウイルスは生命のどれとも似てないし、橋渡しっぽいものも見つからない。 ・よってウイルスは生命ではない。 ということです
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
もちろん「似てる」「似てない」というのは程度問題で、「いや俺から見れば似てるよ?」と言うことも出来ます。でも、それ言ったら「ミョウバンの結晶って成長するし生物っぽくね?」「そのへんの石にも命が宿るのだ」「一切衆生悉有仏性」とか言い出すことも出来てしまう
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
で、どこで線引きするのが一番いいかということになると、それまでの知見を総合して「細菌とウイルスの間だ」といえる。それに合わせて「生物とは何か」を考えたところ、先に挙げた「自己複製・代謝・恒常性」といった「定義」が出来上がったわけです。 (何度も言いますがこのへんは僕の私見)
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
「それまでの知見」というのは例えば 「DNAに転写酵素が結合し、mRNAが転写される。このmRNAがリボソームを通過するとtRNAが結合し遺伝暗号の内容に合わせたアミノ酸が並び、それらが結合してタンパク質となる。暗号の読み方は全生物で共通しておりコドン表と呼ばれる」
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
…という、やったら細かい機構(セントラルドグマ)があって、これがヒトから細菌まであらゆる生物に共通しているのですが、ウイルスはこういうのを全く持ってない。それどころか、普通は二重螺旋のはずのDNAを1本しか持ってないやつとか、そもそもDNAすら持ってないやつがいる。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
「だが核酸やタンパク質を持ってる点で似てるのではないか、そんなものは生命以外にない」という見方も出来ますが、物質組成が生命に似てるのはウイルスの複製を生物がやってるからです。「生物由来の物質」が物質として生物に似てるのは当然であり、それ言ったらバターも包装紙も生命になっちゃう。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
「じゃ今後の研究で、ウイルスよりは複雑だが細菌よりは単純な半端者が発見されたら、生命の定義は変わるの?」ということですが、変わると思います。冥王星なんてまさにそれで、小惑星とも惑星ともつかない半端者が見つかったせいで「線引きを変えないと」となって惑星の座を追放されたわけですから。
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
このように類似性に基づいて生命を規定すると良いことがあります。生命の定義に「自己複製」があるのを見て「俺は子孫を残せそうにないから生命ではないのか…」とか言い出す人がいますが、確かにあなたには出来ないかも知れませんが、構造的・機能的・由来的に人間に似てるので生命です。おめでとう
柞刈湯葉(いすかりゆば) @yubais
何度も言いますが後半は僕の私見なので、テストで減点された時に「Twitterで湯葉さんっていう自称研究者がそう言ってたよ」とか言ってはいけません。僕はそういう大衆の意向に従わないくせに自分の考えを持つわけでもなくネットの情報を鵜呑みにする子供は嫌いです

コメント

権造おかん@ビール飲むけどダイエット中🍺 @gonzouokan 2015年7月12日
「自己を増殖させよう」としている点で、無機物とは思えないんですよね。ウイルス。 セントラルドグマもRNAを中心にもっていけば、不安定なRNAから安定なDNAになっていった、と考えられないコトもないような気がするのです。 でも、ウイルス嫌い。
アルビレオ@炙りカルビ @albireo_B 2015年7月12日
gonzouokan ウィルス自体がそんな意思を持ってるわけじゃありませんから。何かの拍子に「遺伝情報っぽいでたらめなコードとそれを細胞にぶちこむ仕組み」が大量に作られれば、ほとんどが一代限りで終わるけどその中で偶然「複製を作るようなコード」だったものは増殖してウィルスと呼ばれるものになったという説明も可能です。(実際のところウィルスがどのように発生したかは諸説あるらしいです)
NTB006 @NTB006 2015年7月12日
進化の面から強く見る人には生命であったりするのでしょうか。
ハドロン @hadoron1203 2015年7月12日
ウィルスは遺伝情報を運ぶ媒体でしょ。がんウィルスの発見によって、そうした見方が主流になった。しかし、パンドラウィルスの研究が進むとどうなるか分からんけどねぇ。
未知神明(みちがみ・あきら) @ontheroadx 2015年7月12日
「増殖する化学物質」というのが小松左京の意見でした。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2015年7月12日
実際のウイルスの挙動を知ると、コンピューターウイルスをそう名付けた人はエポックだなあと思うマン。(with小並感
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2015年7月12日
でも生物兵器っつーとウイルスも入る謎。まあ日本語の話だけどwww
職人/げるびらりあ @gervillaria 2015年7月12日
言葉の定義の限界にぶつかってる論述だなぁ。結構ギリギリまで詰めててすごい。ウイルスというのは、視点によって生物としてみ見た方が都合が良いケース、悪いケースがあるから、前提を共有しない限り意見が割れることは確実だし、また、そうでなければおかしい。
なつき @natsukissweet 2015年7月12日
スジの通った構成もさることながら、最後のひとことにまたニヤリ。
さより《人類》 @sayori27 2015年7月12日
流動性を生物の定義とする「生物と無生物のあいだ」を思い出した。
ジョージ @Kiriyama_George 2015年7月12日
「自己複製・代謝・恒常性」をヒトと全く違った方法で実装した存在が見つかれば「生命」の定義は変わるのだろうか
D.D. @m_d_d_b 2015年7月12日
うーん…前半部分(=自分の知っている定義というか考え)で納得しちゃってるんで,後半部分は90点を91点にする作業というか,字数を重ねている割にあまり深まった気がしなかったです。生殖しない個人はどうなのかとかいう点は確かにこれまでも気にならなかったことはないけど
奥山犛牛 @bogyu 2015年7月12日
むしろ、生物学が現代に至るも生命の定義を厳密にはしていないのが不思議だよね。他の理数系の学問がほぼ演繹から成り立っているのと対照的だ。
羽倉田 @wakurata 2015年7月12日
ウイルスの分類がまだまだだからややこしくなってるだけかとファージとかウイルスと生物の間にいるように見えるよね
アルビレオ@炙りカルビ @albireo_B 2015年7月13日
bogyu 生物学はトップクラスだけど、冥王星が引き合いに出されてるように自然科学はそんなのばっかりですよ。古い定義で分類できないものが増えるたびに定義のやり直し。化学だって酸アルカリの定義をごっそり変更するはめになったり
あえとす 10/14 池袋ボドゲ会 @aetos382 2015年7月13日
NHKを見てなくてもNHKを見る能力があるテレビを持っていれば受信料を払わねばならない、みたいな。
あえとす 10/14 池袋ボドゲ会 @aetos382 2015年7月13日
自己複製はよくわからんね。細胞自体や単細胞生物は自己複製するけど、多細胞生物は? メスは卵が(無精卵であっても)自己複製だと言えるとしても、オスは? というか、多細胞生物の体を構成する個々の細胞は生物なのか? ということになるね。
亜山 雪 @ayamasets 2015年7月13日
異常プリオンなんかは生物っぽい振る舞いをするけど、私見では「毒タンパク」かなあ。
つららか @seeker_tori 2015年7月13日
そういや昔テレビでキノコの特集やってて菌と細菌をごっちゃにしてたな
按摩猫 @anma_cat 2015年7月13日
分類の問題のようなので、ウイルスは生物でない、と定義して得るものがあるかどうかが問題だと思われる。 私には、蛇もシダ植物もキノコも、人間に似てるとは思われない…。
緑川⋈だむ @Dam_midorikawa 2015年7月13日
むかしはドイツ語読みで「ビールス」と呼んでたのはどうして廃れたんだろう。英語読みで「バイラス」と読むのは日本では全く見当たらないし
西 @jtmhtm 2015年7月18日
DNAが読まれて明らかになった重要な知見の一つに「あらゆる既知の生物は共通祖先をもつ」というものがあります。そこから逆に、「既知の生物と共通祖先を持つ」ことを生物の定義とするのがよいのではないでしょうか。性質より系統関係で分類する方がしっくりきます。まあミトコンドリアも生物になってしまいますが。
西 @jtmhtm 2015年7月18日
現代的な理解ではほとんどのウイルスは宿主のタンパク質・核酸が変化して生まれたと考えられているはずで、元になった細胞から「個体性」を引き継いでいるとは考えにくいです。今後、寄生性の細菌がウイルス様に変化して伝染性を持ったものなどが見つかるかもしれませんが、もしそうなれば生物の定義が揺らぎそうですよね。
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