替え玉ファン

力水(ちからみず) かける @see_yalla

【替え玉ファン】 ２５ 「もうおおかた予想がついて来たと思うが、最初に話したイベントとは、薫くんが出演する色々な催し物のことだ。そこに君が私の代わりに参加してもらうことが、君の仕事だ。」 「じゃあ、そのイベントに行くだけで、3万円貰えるの？」 ヒカルは、当然の疑問を言った。

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【替え玉ファン】 ２６ 「ざっと言えば、そうだが、君が私の名前で薫くんに話しかけて、サインをもらったり、ツーショットで写真を撮ってもらったりもしてもらう。要は君の顔が私の名、鈴木次郎だと覚えてもらうことが、最大の使命になる。」と男が言った。

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【替え玉ファン】 ２７ 「おじさんの名前、鈴木次郎と言うんですね。あっ、俺も名前、まだ言ってなかった…俺、進藤ヒカルと言います。実家は瀬戸内海の因島(いんのしま)という所にあります。今は、洛北美術大学の２回生でマンガ描いてます。おじさんは、どういう人なんですか？」

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【替え玉ファン】 ２８ …とヒカルは簡単な自己紹介をして、男にも素性を聞いてみた。だが男は、 「私のことは、あまり詮索するな。鈴木次郎だけでいいだろう？」とちょっと無愛想に言ったので、ヒカルは愛想笑いをしながら、

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【替え玉ファン】 ２９ 「いえいえ、名前だけでいいに決まってますよ。エヘヘへ… まあ、なんですね。仕事の内容は、だいたい分かりましたけど、俺、その薫くんとかいう男の子タレント知らないんで、なんか写真とかないんですか？」とヒカルが言った。 すると鈴木と名乗った、

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【替え玉ファン】 ３０ …その男がおもむろに自分のiPhoneを取り出した。そして何やら、かわいい感じの女の子の画像をヒカルに見せて言った。 「この子が江之島薫くんだ。」 「えっ、そのまんま、女の子だよ。これ。」…ロンリーと同じレベルじゃんか！ ロンリーの場合は異次元世界…

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【替え玉ファン】 ３１ …とはいえ、100年は未来から来たのだから、それも有りかと思ったけど…とヒカルの頭の中は思考が渦巻いていた。 …そうね。私の方が負けてるかも。もしかして、この次元は外見に関しては、異様に性別の差が無くなってるのかなあ？…とロンリーの心の声もヒカルに届いた。

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【替え玉ファン】 ３２ 「私は、この薫くんが発信しているツイートを２週間前からフォローしてファンになったが、どうしても直接会う勇気が無くてな。」男は見かけの精悍さには似合わないセリフを言った。

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【替え玉ファン】 ３３ 「おじさん、俺から見たら、チョット怖そうだけど、俺より背も高くてカッコいいのに、なんでわざわざ、俺なんかに替え玉をさせるのさ？ わけ分かんないよ。」とヒカルは思わず言った。 「もう、何も言うな。… ただ、イエスかノーか言ってくれ。イベントに1回行って

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【替え玉ファン】 ３４ …くれれば、３万だ。あと、薫くんに鈴木として顔を覚えてもらったら、その時にもう３万出す。こちらで、薫くんにツイートして、返信でその時のこととか、私の名前がちゃんとツイートされた時になるけどな。…どうする？ やらないなら、他をあたるがな。」と男は問答無用

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【替え玉ファン】 ３５ …という感じでヒカルに迫った。 … ロンリー。どう思う？俺は面白そうだから、やってみたいんだけど… … うん。私も大丈夫だと思うよ。まだ、読心能力が回復してないけど、この人のウェーブは、良い人の物だよ…

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【替え玉ファン】 ３６ …分かった。オーケーするよ…とヒカルはロンリーに発信すると同時に男に向かって言った。 「おじさん、やらせて頂きます！」 ^_^ … ついにヒカルは、鈴木次郎という謎の人物の仕事を引き受けることになりましたね。 あと、ロンリーって異次元の人なの？

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【替え玉ファン】３７ 「そうか！やってくれるか！…君を選んで良かった。」と男は心から喜んで言った。 「じゃあ、鈴木のおじさん。いつ行動開始ですか？…と言うより、いつお金もらえますか？」とヒカルは、はやる気持ちで言った。 「そんなにせくな。７月５日に大阪でイベントがあるよ。」

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【替え玉ファン】３８ 「あさってじゃないですか！チケットとか、あっ、それよりも、どんな内容のイベントですか？」とヒカルは、すぐさま段取りを聞かねばと焦りながら言った。 「先ずは…」と鈴木次郎は先ほどのiPhoneでイベント内容の案内サイトを表示してヒカルと共に 中身を検討した。

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【替え玉ファン】 ３９ 「あれっ、１８歳以上とかの身分証明書がいるのか。…チケットは前売りで用意してもらうとしても、俺の学生証だと、俺が鈴木でないことバレるんじゃ…」とヒカルは、心配になって言った。 だが、男は冷静に言った。 「多分、大丈夫だろう。薫君がチェックする訳ないしな。」

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【替え玉ファン】４０ 「でもさぁ、俺、今思ったんだけど… もしも、その薫くんが、なんかこう、カッコイイ制服でさ、自ら証明書の確認を一人一人してくれたら、ファンの人にとっては、すっごいサプライズだと思うんだけど…そう思わない？おじさん。」とヒカルは言った。男もその光景を想像した。

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【替え玉ファン】 ４１ 「そんなこと、する訳ないだろう。タレントさんなんだぞ… それに、薫くんに君が鈴木でないこと、バレるじゃないか。無い、無い、無いと困る。」と男は否定した。 「うん。俺もそう思う。じゃ、あと、具体的にどうすればいい？」 とヒカルも話しを先に進めた。

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【替え玉ファン】 ４２ … ヒカル、この人との連絡手段もきっちり決めといた方がいいよ… とロンリーの心がささやく。 …うん。それは最後に聞くよ… ヒカルもそれに応えた。 「…どれだけのファンがやって来るか分からないが、君はなんとか薫くんに近づいて、君が鈴木であることを覚えて…

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【替え玉ファン】 ４３ … もらう様に、おそらく一度しかないチャンスで話しかけた後、君が鈴木次郎の名前で薫くんをフォローしてることを印象づけるんだ。」と男は再びiPhoneの画面を見せながら、ヒカルに言った。 「そして、これが私のTwitterのアカウントとパスワードだ。」

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【替え玉ファン】４４ …と言って男はヒカルにメモを渡した。ヒカルはメモを受け取り、男の指示で自分の携帯に鈴木次郎のアカウントでTwitterに登録した。 そして、ヒカルは勝手にそのツイートの履歴などを見て言った。 「実際のダンディなおじさんがイメージと違って軽いツイートやねぇ。」

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【替え玉ファン】 ４５ …とヒカルは笑いながら言った。それに対して鈴木次郎は言った。 「そんな感じが警戒されないんだ！そんな感じの君を見つけられたのは、大変ラッキーだった。」と逆に言い返した。 「ちぇっ、どうせ俺は軽薄なイメージですよ。けど、おじさんみたいなミーハーちゃうで。」

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【替え玉ファン】４６ 「だが、イベント中は、そのミーハーなイメージで、しかも薫くんに出来る限り好感を持ってもらえる様に、精一杯の演技をしてもらうぞ。」と鈴木は注文をつけた。 「わかりました。お金をもらう以上、精一杯、薫くんに気に入られますよ。」と言い、前日に会う事で二人は別れた。

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【替え玉ファン】 ４７ 鈴木次郎と別れたヒカルは、再び三条大橋を渡り、賀茂川の左岸沿いにある自転車道を少し川上に向かい、停めた自転車がある場所を目指していた。 … ロンリー、俺、うまくイベント会場で薫くんっていうタレントさんに話しかけれると思うか… するとロンリーは、微笑み

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【替え玉ファン】 ４８ ながら、 … 大丈夫よ。だってヒカルは、こんな姿の私と、もう７日間も、つかず離れずでいるんだから…と心の声で励ました。 … そうか、もう７日も経ってるんだ。大学の裏庭で昼寝してた俺に、いきなり衝撃が頭ん中を巡ったのは…とヒカルの回想をロンリーも共有した。