山本七平botまとめ/【日本のこれまでを支えたものは何だったのか⑧】日本の会社は、機能集団と共同体の二重構造

山本七平『日本資本主義の精神~なぜ、一生懸命働くのか』/第一章 日本の伝統と日本の資本主義/日本のこれまでを支えたものは何だったのか/日本の会社は、機能集団と共同体の二重構造/38頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【日本の会社は、機能集団と共同体の二重構造】中小企業における神棚的なもの、ないしはそれに代表されるある種の宗教性というべきもの、 もしこれを「企業神」とでもいえば、日本には確かにその種のものがある。<『日本資本主義の精神』

2015-07-05 10:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

②われわれは、それをあまり不思議とは思わないが、ヘブル大学の比較宗教学者ヴェルプロフスキー教授などは、深い関心を示している。 前に、NHKと提携して、日本における「企業神」と「わが社語」を調査したことがあった。

2015-07-05 11:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

③外部には通用せず、企業もしくは企業群内でのみ通用する「わが社の言葉」すなわち「わが社語」はたいへんに興味深い主題だが、同時に「企業神」も興味深い。 前記の神棚のある会社は少しも珍しくない。

2015-07-05 11:38:54
山本七平bot @yamamoto7hei

④また、月に一回社長以下が稲荷神社に参り、そしてともに同一内容の折詰弁当を食べるという「共同体の祭儀的食事」いわば一種の「聖餐式」を実行しているところも少なくない。

2015-07-05 12:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤だが、それにもまして驚いたのは、世界的に有名で、最も近代的な経営で知られる日本の大企業の中にも「企業神」があって、重役の一人に神主がおり、全国に散らばる各事業所に分社を祭って祭儀を執行しているという事実であった。

2015-07-05 12:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥工場、事業所、出張所を入れれば百を越すであろうから、祭儀の執行だけで一年はかかるであろう。 これの調査、取材は、はっきりと拒否されたから、細部はわからない。 だが、その実体はおそらく、中小企業のそれと同じであろう。

2015-07-05 13:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦このことは、この売り上げ一兆五千億円を超える超大企業が、一面では最も能率的な機能集団でありながら、同時に、最も強固なる共同体であることを示している。 確かに、アメリカの田舎へ行けば、教会を中心に共同体が構成されている。

2015-07-05 13:38:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧したがって日本人が、日本の伝統的宗教を中心に共同体を構成しても、少しも不思議ではない。 しかし、機能集団であり、かつ利潤追求の組織であるはずの企業の中心に「神」がいることはありえないのだ。

2015-07-05 14:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨さて、この超大企業の「企業神」は会社共同体の中心であっても、機能集団としての会社の中心ではあるまい。というのは、その社の経営は徹底的に合理的であり、俗に西欧的といわれていても、決して「神がかり経営」ではないからである。何しろ、その会社の創業者は「経営の神様」と呼ばれたくらいだ。

2015-07-05 14:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩二重構造という言葉があったが、これを従来と違った意味に使えば、この会社は、まさに、機能集団と共同体の二重構造で成り立っているはずである。 そしてHさんが懐かしむのは、おそらく、若き日のこの宗教的な共同体への参加なのである。

2015-07-05 15:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪ここにまた、前述した「渡り職人」が独立して企業主となれなかった理由がある。 つまり、 機能という点では最高でも、共同体への加盟を拒否する渡り職人は「功=業績」はあっても、それが共同体の序列へ転化しない のである。

2015-07-05 15:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬そしてこれは、前記の超大企業から中小企業に至るまでがもつ、日本の企業の大きな特徴なのである。 そして、少々奇妙な言い方だが、日本の資本主義は、おそらく「企業神倫理と日本資本主義の精神」という形で解明されるべきもので、その基本は前記の二重構造にあるであろう。

2015-07-05 16:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭これが、日本の社会構造により支えられ、さらに、各人の精神構造は、その社会構造に対応して機能している。 これを無視すれば、企業は存立しえない。 この対応を簡単に記せば、 機能集団が同時に共同体であり、機能集団における「功」が共同体における序列へ転化する という形である。

2015-07-05 16:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そして、全体的に見れば、機能集団は共同体に転化してはじめて機能しうるのであり、このことはまた、集団がなんらかの必要に応じて機能すれば、それはすぐさま共同体に転化することを意味しているのであろう。 そしてこれは旧日本軍にも現われている。

2015-07-05 17:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯いわば典型的な機能集団である軍隊が、内務班という形で共同体に転化してはじめて機能しえたという、その内実である。 だがこれについては、以下にさらに解明を進めていこう。

2015-07-05 17:38:53