#歌仙受けリレー企画まとめ

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

刀剣男士の山姥切国広は自分だけではない。鍛刀でも戦場でも演練でも、無数に見かける同じ顔の自分。見られぬように布で自分の姿を覆い、写しであることを厭うその姿を幾度も目にした。だがしかし。「国広？」「歌仙」歌仙兼定を想う。この心唯一つだけは、自分のもの。他の誰にも、渡しはしない。

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

あの兜割りを成し遂げたのは君だけ、なんだね……はっ。お前みてぇな一点ものを実戦刀にしようとする奴も、まぁ趣味は悪くねぇな。俺が誇れるのも、この『唯一』だからよ。同郷の誼だ、軟な連中に実戦刀らしい戦を見せつけてやろうじゃねぇか……んだよ、俺は色恋よりもお前と戦がしてぇのに。

鴇宮あお @ao_tkmy

「俺には刺すことしかできないから」いつもの一言に歌仙が溜息を落とす。そういうあから様な態度、地味に傷つくんだけどなぁ。「君のそれは一体いつ治るんだろうね？」「うぇー…だって本当のことだろ？」そういうことじゃないと胸を叩かれる。「槍として、そのひとつ以外に何が必要だと言うんだい？」

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

黄昏と言えば、逢魔ヶ刻が連想されるね……とは。まさか、貴方がいる本丸にちっとも来ないからと、私を狐でなく魔物扱いしているのですか？　私はあの夜の庭で貴方が来るのをずっと待っていたというのに……なれば次の逢瀬こそ、日が落ちる前に貴方を出迎えにゆくといたしましょう。

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

日が沈み始め、夕方の橙の光が本丸を覆う。全てが朱に染まる視界の中で、歌仙がこちらを見て目元を和ませる。「さあ、そろそろ夕餉の支度に入ろうか」その、普段より色づいた唇が目にとまり、思わず歌仙を引き寄せて唇を重ねていた。「……何、するんだい君」「魔が差した」黄昏時のせいにして欲しい。

鴇宮あお @ao_tkmy

黄昏とは「誰そ彼」と問うたことから来ているらしい。うっすらと顔に落ちた影に得も知れぬ不安が募る。「君は誰なんだい？」「やだなぁ、歌仙さん」邪気のない笑顔にさえ違和感を拭い去ることができない。まるで陽の下の彼とは全くの別人のような…「僕は僕ですよ」浅葱色とはこんな色だっただろうか。

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

リン、と頭上で涼やかな音が聞こえて目が覚めた。視線の先では風鈴が風に揺れて音を立て、風が汗ばんだ身体の表面を撫でていく。身を起こしながら自分が半裸なことに気が付き、気怠い息を吐いて髪をかきあげる。「そら、麦茶だ。飲むか」「……ありがと」とても怠惰な夏の休日。だけどそれも悪くない。

鴇宮あお @ao_tkmy

風が吹く度に風鈴がちりんちりんと可愛い声をあげる。「なかなか風流ですな」数寄を好む彼もきっと気に入るだろうと思いきや、予想に反して歌仙殿は不機嫌な顔を見せる。「少し煩すぎる」「そうでしょうか」「そうだよ」ぐいと服を引かれると自然とお互いの顔が近づく。「風に君の声が奪われてしまう」

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

君はあの隻眼の主のように爽やかだね……ん、それはお世辞かな？でもありがとう。僕もあの主には困ったものだと思っていたけれどね。でも主は吹くには遅すぎた春風、惜しいものだったよ。せめて僕は、ここで主のような風に鳴らされる風鐸でありたいな……こう例えれば、僕も風流人のように思うかな？

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

二人きりで遠征に出掛けた。遠路を遥々とどこまでも進んでいく。「このまま、どこまでも行けたら良いね」「本丸に戻らないで、か？」「そんなわけにも行かないさ。知ってるだろう」でもね。「たまにはそんな夢を見たくなるんだよ」喩えそれが、夢でしかないとしても、国広、君とどこまでも二人で。

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

君はあの隻眼の主のように孤独なんだね……か。ふん、俺は良く知らないが、あの主も周りが敵だらけであっても、独りで戦ったらしいな……俺もどうせなら最後まで馬上の者でありたい。遥か彼方まで行けば、この紋を頂く神にも会えるだろうな……おい、何故止めようとする？何処で死のうが俺の勝手だろ。

鴇宮あお @ao_tkmy

「結構なお点前で」茶器を置く所作の洗練された美しさに、彼が渡ってきた長い時を感じる。「どうかしたか」「いや、もっと早くに出会えていたらどうなっていたかなと思ってね」「さぁ、どうだろうな？だが何事も急く必要はないだろう」悠々と、まるで僕とは違う流れの中にいるようで…やはり君は遠い。

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

その瞳には何を映しているのかい……って言われてもなぁ。俺はいつだって貴方しか見てないですよ、って言っても信じてくれないくせに。だって今だって俺の事、『何を考えてるのか分からない』っていう顔にしか見えないから……でもそれってお互い様、じゃない？

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

翠緑の双眸が、こちらの顔をじっと見詰める。普段布の下に隠されたその視線はかなり強い。まるで見る度にこちらの胸を焦がされそうで、小さく熱い息を吐く。そう、この目に自分は落とされたのだ。「君の瞳が……好きだよ」だからもっとよく見せて。この僕を魅了したその瞳で、どうか僕を離さないで。

鴇宮あお @ao_tkmy

まだ日も昇らぬ明け方、浮上した意識に任せて目を開くとすぐそこに三日月殿の寝顔があった。普段あまり見られぬ無防備な姿に自然と胸が高鳴る。それでも、あの美しい月が見られないのはやはり惜しい。「早く目を覚ましてください」瞼に一つ口づけを落として。やはり僕は貴方の瞳に囚われているらしい。

夏夜鹿🌸原稿中 @natsu_yoruka

君は夕暮れが好きでは無さそうだね……ですか。えぇ、あまり良くないものを思い出しそうですから。まるで炎のような夕日を見るたびに、あの記憶が蘇るのです。けれどこのまま、夜にならないようにとも思ってしまうのですがね。どうか、今この一時だけは……慰めて、くれますか？

春月 灯@とうらぶ @akari_snw

夕闇迫る日暮れ時、国広を探して歌仙は庭を歩いていた。「国広、どこに……いた」白い布の塊はよく目立つ。彼めがけて駆け寄り、一度息を呑んだ。「国広？」「なんだ、歌仙」「探したんだよ、行こう」一瞬だが逆光で顔が見えなくなり、彼が誰だか分からなくなった。（何故だろう、浚われるかと思った）

鴇宮あお @ao_tkmy

並んで歩く二つの伸びた影。もうすぐ日が完全に落ちる。西は真っ赤に焼けた空。「まるで血の色のようだね」「まるで炎のみたいだな」同じものを見ていても互いに連想するものは違う。時を経ても、傍にありたいと願いもすれど、二振りの影は並行線を辿るままで。交じり合うことは許されないらしい。