マイアミVSアサイラム 第三次合同演習inワールドツアー Part8

彼の陰謀が集まり、弾け―― 三度開催されたマイアミ鎮守府とヨコスカアサイラムの合同演習 その模様を実況含めてお送りします。 続きを読む
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orphe @orphechin

「気が触れる程の憎悪を持っていた船がいても、おかしくはないのよ」 鳳翔は窓の下を見る。 雲の下では今でも殺し合いが続いているのだろう。昼夜も手段も問わない、艦と艦の永久戦争だ。 「そんな船が生き返ったとしたら、この世に何を望むのでしょうね」 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:00:38
orphe @orphechin

「……アメリカはこの事件の追求を再開するでしょうか」矢矧の言葉に、鳳翔は首を横に振る。 「永久にdeclassifyのままでしょうね。米も、私たちの国も。艦娘によってこの世界は永久に変わってしまった。根本の事実はどうあれ、艦娘ありきの世界を肯定するしかない」 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:03:46
orphe @orphechin

「それ故、都合の悪い事実は見てないことにする。中東産まれのイエス様がヨーロッパの白人として扱われてきたように。それに、アメリカはようやく祖国の復権に乗り出そうとしている。今日のニュースサイトを見た?」 「アイオワ、ですか」 鳳翔は頷く。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:06:26
orphe @orphechin

「中国の技術でも日本の技術にも頼らない、純米国産。アメリカは彼女を国家のシンボルとするでしょう。深海との戦争以来苦渋を舐め続けてきた彼らが、ようやく自分たちのプライドを託すべき存在を作り上げた。そんな存在が、連続殺人鬼の系譜に位置付けられるのを誰が許すかしら?」 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:10:23
orphe @orphechin

「貴女は、そんな不都合な真実と、どう向き合うつもりなのですか」 「株価との相談次第ね」 矢矧は苦笑し、ため息をつく。 「今の私は、艦娘ではなく経営者よ。貴女たちと違い、既に解体の洗礼を受けている。それ故、過去ではなく未来が気になる」 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:14:37
orphe @orphechin

--未来か。50の福音は、これから何をするつもりなのだろうか。艦娘を作り上げた目的は、あのマイアミで見た光景を世界中で産み出すためなのか。 矢矧は脳裏でかつての地獄を思い出す。あそこには守護も勝利の概念さえもない。あそこにあったのは、強烈な死の希求だけだ。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:18:48
orphe @orphechin

「情報は宝にも毒にもなる。秘匿されていたモノを手に入れてしまった以上、50の福音も国も、私を放ってはおかないでしょう。矢矧、貴女の仕事もこれからさらに増えると思うわ。期待していますよ」 矢矧は鳳翔の言葉に背筋を伸ばす。そして、同時に奇妙な安心感を覚える。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:21:27
orphe @orphechin

艦娘の根底に横たわるものがいかに陰惨なものであろうと、今の自分に必要なのは主の護衛であり、今の自分に求められているのは、更なる武の研磨に他ならない。 要するに、今まで通りということだ。 車輪が再びレールに乗ったことを感じながら、矢矧の肛門は強く引き締まるのだった。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:24:20
orphe @orphechin

「ところで彼らはまだマイアミに?」 「ええ。まだやり残したことがあるんですって……全く、ずいぶんと長くかかったものね」 「は?」 「いいえ、何でもないわ。それにしても……少し悔しいところ、あるわね」 鳳翔はそう言うと、首を捻る矢矧を横目に、再び書類に目を通した。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 16:31:56
adios_amigo @Panzer4F2

アイオワのほんへ登場が待たれる #マイ鎮

2016-03-20 16:58:23
orphe @orphechin

試合から数日が過ぎた。あの一連の大騒動でマイアミは半壊状態。住民や観光客は軒並み逃げ出し、復旧の目処など全く立っていない。ただ、天気だけがいつも通りで、だれもいない砂浜を日光が陽気に照りつけている。自然にとっては、人の感情などどうでもいいものだ。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 20:32:25
orphe @orphechin

今まで何度もこういう景色を見てきた。 敵を焼く度に、その帰決は決まって荒野だ。 誰もいなくなった場所で、硝煙の残り香と日に焼けた土の臭いを嗅いできた。戦闘が終わる度、俺は誰一人いない、まっさらな心地よさに浸ったものだった。 だが、今は違う。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 20:38:38
orphe @orphechin

-××××。 俺の名前を、誰一人知ることのなかった、隠していた自分の名前を呼ぶ声がする。 司令官でも、提督でもない。匿名の中に埋もれない、ただひとつ、隠したかった自分の名前。 それを呼ぶ声がする。 そして俺は、声の主に顔を向ける。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 20:41:17
orphe @orphechin

そいつは白い服を着ている。 幾重にも折り重なるフリル、長く広がる裾野。柔らかな花弁が積もったような、ヘッドドレス。 戦いのためではなく、ただ祝いのためだけに誂えた服。 ウェディングドレス。 羽黒は、それを纏っていた。 #マイ鎮特別編

2016-03-20 20:45:04
orphe @orphechin

--せっかくの式場が、こんなところですまないな。 羽黒は首を横に振る。 --いいの。この方が、青い海がよく見えるから。それに、貴方も私も、教会なんて必要ないでしょう? --確かに。 --必要なのは晴れ着と指輪、それと証人だけだな。 羽黒の傍らに立つ天龍が言う。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:15:30
orphe @orphechin

俺は自分の胸元を軽く叩く。洗い立てでシミ1つない、純白の軍服が揺れる。 --もっとも晴れ着に関しても、いつもの二種軍装だがな。 --通常勤務でスタジャンだのTシャツ着てるお前にとっては十分晴れ着だ。 ところでお前、まだそのマスクつけてんのか? #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:19:17
orphe @orphechin

天龍に言われて、ウサギのマスクを外す。顔を上げた先には、日本のそれよりも深いマイアミの空の蒼。 髪を揺する風の感触を覚え、潮の香りが鼻に満ちる。日差しが目を刺すので顔を下に向けると、そこには羽黒の顔がある。思わず、目を逸らす。 --照れんなアホ。 天龍が呆れる。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:22:45
orphe @orphechin

--嫁さん見るたびに顔を背けんのか、お前? --慣れないんだよこういうの。 --じゃあ今から慣れろ。 天龍め、俺をぶっ飛ばしてからずいぶん図に乗るようになったな…… --さしあたって、照れ隠しのマスクは没収な。 そう言うと天龍は俺のマスクをひったくり、海に投棄。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:43:58
orphe @orphechin

くしゃくしゃになったウサギのマスクは、あっという間に波に浚われていく。風が一吹きし、白いマスクは海の輝きの中に混ざり、見えなくなった。 --畜生が。 天龍の高笑いを聞きながら毒づいたが、一方で重荷が取れたようにも感じた。 自分の心を封じる必要は、もうないのだと。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:47:14
orphe @orphechin

今まではずっと戦ってきた。自分は他人を傷つけることでしか生きられないと思い、それ以外の自分の心は、マスクを被ることで見えないフリをしていた。 だがもう、そうしなくていいのだ。 目の前で微笑む、彼女がいる限り。 自分も、誰かを愛してもいいのだと、そう思えるのだ。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:51:08
orphe @orphechin

--天龍。頼んでいたものを、くれないか。 --おう。 天龍は俺の前に小さな箱を取り出す。 それを見た羽黒は、小さな吐息を漏らす。 俺も彼女も、その中身は分かっている。 俺は天龍の手の中にある、その箱を開く。 銀の小さな指輪がそこにある。 銀以外の何物でもないもの。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:54:12
orphe @orphechin

--利根が急ぎで作ってくれた。突貫工事だが、出来はしっかりしてるだろ。 二組の指輪はそれぞれの名前が裏に刻まれている。 羽黒。 そして、俺の本当の名前。 自分の名前が刻まれた、大きな方の指輪を、俺は手に取る。 そして、羽黒に歩み寄る。 #マイ鎮特別編

2016-03-21 18:57:53
水蝋樹譚 @ibota_moth

#マイ鎮 純愛の波動に耐えられなくて苦しい。

2016-03-21 18:59:49
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