- kosn_ninja
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「よし、こんなもんだろ!」洗い終えたコートはまだ濡れていたが、着ているうちに自然乾燥すると考えて、そのまま着て行くことにした。 #kstsgr
2015-07-21 20:49:13「あー、腹へったな」コトブキ探偵は、腹を撫でながら呟いた。考えてみれば、ここに来てから何も食べてない。強いていえば、喉が渇いた時に水道水を飲む程度だ。「…肉が食いたいな」何故か、無性に肉が食べたくなった。肉汁したたるステーキなんかあれば最高だ。 #kstsgr
2015-07-21 20:53:10そんな事を考えながら町を歩く。怪物とさえ出くわさなければ、ただの田舎町だ。古い作りの家屋が並ぶただの住宅地。(だけど、何故か見覚えのある風景ばかりなんだよな。しかも、昔じゃなくてつい最近見た記憶がある。)しかし、どうしても思い出せなかった。その時だ。 #kstsgr
2015-07-21 20:57:41コトブキ探偵は、電信柱の陰にうずくまる人影を見つけた。咄嗟に身構える。(怪物か?それとも人間か?)昔、会得した体術の構えを取りながら人影に近づいていく。「あ、あんたは…昨日の…!」人影が言った。「頼む、助けてくれ」人影は昨日、病院で会った男だった。 #kstsgr
2015-07-21 21:02:18男は右腕を押さえながら、うずくまっていた。その傷口はひどく腫れ上がり、ウジが湧いている。(ひどいな…これはもう手がつけられないだろう)「頼む、どうか…目が、視界がぼやけて…」普通の人なら、この男を助けるために解決策を探そうとするだろう。だが、コトブキ探偵は違った。 #kstsgr
2015-07-21 21:07:06[町]突然、君は強い欲求に襲われる。住人がひどく美味しそうにみえてたまらない…。《力1以上の時、君は住人を食べることができる【魂+2】その際『牙』を持っているなら【魂+3】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #kstsgr
2015-07-21 21:07:25「なあ」「な、なんだ?助けるなら早くしろ!」「俺はお前を助けられる。その傷口をもっとよく見せてくれないか?」「わ、わかった!ほら!」男は右腕を差し出した。「ありがとよ」コトブキ探偵は「牙」をむき出しにして、笑った。ちょうど、さっき見た鏡の向こうの自分のように。#kstsgr
2015-07-21 21:11:36「え…?」コトブキ探偵は迷う事なく、右腕を食いちぎった。「あ、アアアアアアアアアアアア!」「オイオイ、騒ぐなよ。こうするしかないんだって、菌が入るのを防ぐにはこれしか…」「お前!怪物だな!?」「あ!?」コトブキ探偵の額に血管が浮かんだ。 #kstsgr
2015-07-21 21:14:55「その牙!やっぱり怪物なんだろ!ええ?」先ほどの弱りようは何処へやら。男は転がって距離を取り、昨日のコトブキ探偵を死に至らしめた無骨なナイフを取り出して、彼に向けた。「き、昨日みたいに殺してやる!」「お前の腕じゃ無理だ。ヘタクソ」コトブキ探偵は構えを取った。 #kstsgr
2015-07-21 21:19:05(昨日のあの一撃。ありゃ、最悪だった。無抵抗の人間を刺して置いて即死させる事すらできないとは…しかもめちゃくちゃ痛かった。)彼は、昨日の出来事を思い出し、激しい怒りを覚えた。「ぬかせ!」男はナイフを腰だめに構えながら、突っ込んできた。コトブキ探偵は動かない。 #kstsgr
2015-07-21 21:23:22コトブキ探偵の繰り出した前蹴りは、男の顔面を確実にとらえていた。靴がめり込むような感覚。全体重の乗った、 完璧な一撃だった。#kstsgr
2015-07-21 21:27:22男は吹っ飛ばされ、電信柱に叩きつけられた。ずるずると、その場に座り込む。「久しぶりだったが、うまくいくものだな」近づいてくるコトブキ探偵に、男な反応しない。どうやら意識を失っているようだ。 #kstsgr
2015-07-21 21:30:43「さて、と。死んだら助かるんだよな。お前の理屈だと」コトブキ探偵は男の頭を口元まで持ち上げた。ギラギラと牙が光り、哀れな獲物を待ち構えているようだった。 #kstsgr
2015-07-21 21:33:13そういえば、『彼女』と出会ったレストランで、窓際の席からみた風景もそんな色をしていたような気がする。その頃俺は例の探偵会社に勤めていて、彼女はそのレストランでレジ打ちをしていた。きっかけはささいなコトだった。#kstsgr
2015-07-22 21:03:28そのレストランはドーナツが名物で、レジの横のショーウィンドウに、山盛りのドーナツの乗った皿を飾っている、変わったレストランだった。いや、レストランというよりカフェだったか?まあ、どちらも似たようなものだ。#kstsgr
2015-07-22 21:08:31それで、俺がそのショーウィンドウを物珍しそうに眺めていた時だった。レジから『彼女』が話しかけて来たんだ。「そのドーナツ、おいしそうですよね」と。#kstsgr
2015-07-22 21:11:49「ああ、確かに」俺は頷いた。5段ピラミッド状に積み重なったドーナツはとてもおいしそうだった。「けど、そのドーナツは食品サンプルで食べれないんですよ。残念な事に」「ああ、そうだな。こんなにおいしそうなのにな」 「なら、おひとついかがです?この店の名物ドーナツ」#kstsgr
2015-07-22 21:31:11やられたな。と思った。だが、不快ではなかった。むしろ愉快な気分だった。俺は苦笑しながら答えた。「3つ頂くよ。ついでにアイスコーヒーも」…彼女との出会いはこんなところだ。だが、この思い出を頭に浮かべた時、俺はとても悲しくなった。 #kstsgr
2015-07-22 21:34:58