ツイノベまとめ

#twnovel で書いた小説や、書き出し祭りなどツイノベ小説をまとめました。
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みお @miobott

#twnovel 隠された鳥居があると聞いた。その小さな千本鳥居は、暮れなずむと賑やかになる。ようやく辿りついたその場所は茜の夕陽と鳥居の赤と。何もないはずの空間に、人ならざる賑やかな声が響き渡る。鳥居の影に小さき人の影が重なった。 pic.twitter.com/DDGv0mkjat

2016-02-21 19:14:18
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みお @miobott

#twnovel 賢者と呼ばれた彼も今や鎖に縛られて、女の帰りを待つだけの毎日だ。逃げ出したければどうぞと、女は切なく呻いた。彼は故郷の記憶を脳裡に閉じ込め「逃げ出したければとうに逃げている」と囁く。彼を縛るのは愛着の鎖である。 pic.twitter.com/qE5catVUGd

2016-02-18 21:40:10
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みお @miobott

#twnovel いつもより暖かな冬は、ある日を境に突然の豪雪となる。美しく優しかった川の女神は、ある朝、せせらぎと共に一体の雪像と化した。「なるほど、お前は冬に死んで春に生まれ変わるのか」黒猫は切なく呻き、雪となった裳裾を甘噛みする。口の中にかつて馴染んだ女の膚の味が広がった。

2016-01-20 23:48:20
みお @miobott

#twnovel 「私の口の中には海があるのです」月の美しい夜、バーで出会った女はそんな戯れを私に言った。見せておくれと囁けば、彼女は蠱惑的な朱の唇をぱくりと開く。口の奥に見えたのは濃紺の海、揺らぐ魚影、巨大魚の濁った目。私はふと、10年前に海で殺した女のことを思い出していた。

2015-12-23 22:53:35
みお @miobott

#twnovel 窓を開ければ綺麗な満月が一人泣いておりました。その声が切なくて、僕は彼を見ることもせずに電源をぷちりと押せば月は跡形もなく消え失せて夜は黒に覆われました。そして私は泣くのです。「さようなら今年の満月」

2015-12-28 22:01:35
みお @miobott

#twnovel 仕事納めの夜にふらりと寄った、酔い覚ましのバー。月の明かりに似た黄金のビールを覗き込めば、その向こうに女の瞳が私を見つめている。それは遙か昔、月の夜に別れた女に似ていた。一気に飲み干したビールは遠い後悔の味がした。 pic.twitter.com/uNP3ehoGrn

2015-12-28 23:15:06
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みお @miobott

#twnovel 男が戯れに鈴を鳴らす。その音は連鎖をするように、澄み切った夜空に響く。「煩いなんていうなよ」彼はあぐらを掻いたままにやりと笑う。「新年の神社は年神様の遊び場所だ」見て御覧、あんなにも俺を頼って人々が集まるだろう? 彼は紫袴の神主に、片目を閉じて笑ってみせる。

2015-12-31 21:26:32
みお @miobott

#twnovel 日出る国があると噂があった。太陽の女神が統治する国であるという。辿りついた私が見たのは暗黒の世界である。「何の、これはまだまだ物語の断章だ」隣に立つ男が片目を閉じて岩戸をこじ開ければ、隙間から光が漏れた。「新たな年に感謝を」呟いた先に、美しい日の出の姿が見えた。

2015-12-31 22:58:17
みお @miobott

#twnovel 朝日の差し込む廊下の向こうから、足音が聞こえる。一歩、二歩、三歩。足音と自分の距離を計算して僕は小さな箱を握り締めた。中には君を想って選んだリング。想いきって飛び出して、宙に指輪を差し出せばその横を綺麗な風が通り抜ける。「有難う」それは亡き君と同じ香りがした。

2016-01-05 22:38:29
みお @miobott

#twnovel まず彼女が惚れるのは足の裏。夏の暑い夜には多くの男達が水に足を浸しに来る。その足裏を水底より眺めて彼女は男に恋をする。しかし我慢の足りない彼女は恋をすれば一目散、足の甲を掴んで水底へ引っ張り込むので手元に残るは髑髏ばかり。「いつも失恋ばかり」と彼女は溜息を吐く。

2016-01-06 23:41:36
みお @miobott

#twnovel 夜の裏町には男を喰う妖が巣くっている。足を踏み入れてはいけないと言われて育った少年時代。ある夜、好奇心に負けて覗いた裏町には夢のように美しい女達がいた。一人の女が格子状の窓から手を伸ばし、僕の頬を両手で覆う。そして切ない声で囁くのだ「これは夢だ。お忘れなさい」

2016-01-05 23:10:24
みお @miobott

#twnovel 彼女が恋した男は動物園にいるという。どんな奴だと乗り込んだのは雨上がりの土曜、正午頃。「ほらあそこ」恋する乙女の瞳でうっとりと、囁く君がさした先には美しい虹。虹の麓を見てみれば雄々しい一匹のライオンが眠っている。虹は彼の光る口元から伸び、遠い故郷を目指していた。

2016-01-06 22:49:48
みお @miobott

#twnovel 私が恋をした男は死人しか愛せない人。私は彼の愛を求めて自ら死人となった。それ以降、私の腹は空腹だ。彼の言葉、吐く空気、温かな血潮でなければ私の腹は満たされない。今日もまた空腹に焦がれた腹を抱えて彼の帰りを待つ。「お帰り。愛おしい人」きっとそれを恋というのだろう。

2016-01-09 22:56:25
みお @miobott

#twnovel 僕の彼女は決まって夜の浴室に現れる。お世辞にも大きいとはいえない白の浴槽に、なみなみ揺れるチョコレートの黒。それはやがて魅惑的な彼女の姿となって、楽しげにチョコをすくって垂らす遊びに耽るのだ。「さあ、召し上がれ」窓から差し込んだ月の光が、彼女の体をとろり溶かす。

2016-01-14 23:35:20
みお @miobott

#twnovel 月光だけが差し込む図書館で彼女は切なそうに溜息を漏らす。手にした本の間には一通の手紙。真摯な文字がちらりと見えて私は年甲斐もなく嫉妬を喉奥に押し隠す。「亭主の隣で堂々と浮気かい」「あらいやだ。40年前に貴方から頂いたお手紙よ」彼女は昔と同じ優しい笑顔で笑った。

2016-01-09 23:06:27
みお @miobott

#twnovel 冷たい空気の中、温かく甘い香りが混じる。白い女は紅い唇を開けて、宙を噛む。何も無いはずの宙に一輪の梅の枝。女は優しくそれをくわえると、冬の風に微笑んだ。「ようこそ、春」笑みの形のまま女は雪となり、強い風に吹かれてやがて崩れた。残ったのは、一輪の紅梅だけである。

2016-01-15 00:00:47
みお @miobott

#twnovel 冷たい水滴が顔に降り注ぎ女はふと目をあける。空より降り注ぐのは白い雪。辺り一面は、染め上げる前の絹の如く白いのだ。そんな美しい白を染めるのは己の朱だ。繋いだ手の向こうに、同じ朱を流す男が微笑む。「来世では共に」誓い合うのは夢物語。南無阿弥陀の声だけが雪野に響く。

2016-01-16 23:46:21
みお @miobott

#twnovel 茜の日差しが散る川の縁、女は何かが落ちる音を耳にした。川を見ればそこに溺れる一匹の黒猫。憐れを思い手を差し伸べれば猫は尖った爪を女の柔肌にぎりりと立て胸元に飛び込んだ。「やあ川の女神、御礼にお前に恋をしてやろう」緑目の奥に映る悪魔の笑み。恋に落ちる音がした。

2016-01-20 23:33:47
みお @miobott

#twnovel 川の女神の皮膚は柔らかく、あたたかい。水の女とは思えない滑らかさである。黒猫は女の膝に乗り、白い太腿に頬を押しつけた。女はすっかり諦めたように笑うのだ。「私に恋などしても寂しいおもいをするだけですよ」「どうかな」黒猫は、甘えるようにその柔肌にキスをする。

2016-01-20 23:40:38
みお @miobott

#twnovel 心を込めて大切に育てた娘だが、いよいよの別れの時。私は彼女の皮膚を爪でなぞった。「お師匠様。そないなことをすればせっかくの反物に傷が入ります」私の作った反物を買った男が口を尖らせる。「かましまへん。これが私なりの別れの挨拶や」赤の反物は名残を惜しむ目で私を見た。

2016-01-27 23:00:57
みお @miobott

#twnovel 一生を池で過ごすなど憐れな魚と、私は鯉をみてあざ笑う。黄金色の彼は美しい。しかし彼は狭い池から出られないのだ。そう言えば彼は「さて本当にそうかな?」と嗤う。気付けば彼は宙を飛び私は水の底。そうだ私は水葬の身である。 pic.twitter.com/ppcu0mfhW9

2016-01-23 21:48:33
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みお @miobott

狂おしいほどに愛した男と死ぬと決めたのは、名残の雪も消えない初春の頃だ。「この電車の旅は二人最後の旅行となりますね」車窓を眺めながら私は鞄を抱きしめる。その中に大事に収めた貴方の目が微笑んだ気がした。 #男女心中道行電車100字書き出し

2016-02-03 23:36:50
みお @miobott

#twnovel 死んだ魚は影となり恋人の側にいつまでも寄り添うのだ…という噂がある。多情なその魚は周囲に集まる青影を見て途方にくれた。どれもこれもかつての愛しい恋人達。青い魂となってなお名を呼びかける亡霊に彼女は困惑の溜息を吐く。 pic.twitter.com/LNYXjQ0iiA

2016-02-07 20:06:37
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みお @miobott

#twnovel 節分の夜になればその町には女のお化けが現れる。花魁、ドレスに恵比寿姿。先頭に立つは心中物語の遊女の人形。かつての曽根崎の森は今やお化けの森となり人形は愛しい男を捜し求めて声を上げる「さあさござんなれ遊女の恋の物語」 pic.twitter.com/WzkhlsaNsq

2016-02-03 22:47:51
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みお @miobott

走る電車の上に一枝の桜がぽとりと落ちた。後を追うように舞い落ちたのは名残の雪である。「いけませんこの電車は南に向かう。貴方は溶けてしまいます」と桜が嘆けば雪は愛おしく囁いた。「貴女と共に散りたいのだ」 #男女心中道行電車100字書き出し

2016-02-03 23:22:16
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