ツイノベまとめ

#twnovel で書いた小説や、書き出し祭りなどツイノベ小説をまとめました。
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みお @miobott

#twnovel 目覚めた時、私は闇の世界にあった。水圧にもがき目を開ければ、そこにあったのは青の世界である。空より降り注ぐ光の断片が青色を纏わせて地底まで広がる。一面青だ。美しい青だ。「目覚めたか、人間」と、崖上に座る魚が囁いた。 pic.twitter.com/MQIBbG9rs1

2016-02-07 19:55:14
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みお @miobott

#twnovel 「深い海の底には月の光も届かないものですから、誰かが月の真似をせねばならぬのです」そう言って、彼女は自ら銀の月となった。青に銀にと輝く光の筋に、遠い思い出の中にある丸い形を彩って彼女はやがて、深海唯一の月となった。 pic.twitter.com/t0cNNFj2Wo

2016-02-07 21:16:03
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みお @miobott

#twnovel 陸では最強を誇り私が次の舞台に選んだのは海の世界。青の世界で目を開ければ目前に一匹の鮫が飛来した。彼は理知的な目で私を射抜く。「陸には陸の理があるように海には海の理があるのだ」海の戦いを教えてやろう、と彼は笑った。 pic.twitter.com/Y3NCCUy1Kg

2016-02-07 23:03:49
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みお @miobott

#twnovel 透き通る青の色は段々と茜の色に浸食された。白雲は紫に赤に茜に色を変える。西の落ち日は炎の色。そんな夕陽に色を吸い取られたように大地は黒々と輝きはじめる。人間達に光を運ぶ電柱は、茜に立ち向かうようしっかと腕を張った。 pic.twitter.com/illctFB1xq

2015-09-23 19:32:08
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みお @miobott

#twnovel 気軽な仕事に見えるだろう? でも存外この仕事は大変だ。俺は一日中、青い空を吸い込んで赤い空気を吐きだし茜を吸って闇を吐き出す。そうだ、この風車で朝を吸い昼を吐きだし夜を吸い明け方を吐くのだ。自慢げに風車の彼は笑った。 pic.twitter.com/jJS1U7rTdY

2015-09-23 19:25:58
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みお @miobott

#twnovel その姫は体が金に染まる奇病であった。塔に閉じ込められ命を散らすばかりと思われたが一人の勇者が現れた。救い出し手に取るは黄金の手。彼女は金の唇で微笑んだ。「もう我慢しなくていい?」そうして勇者は知るのだ。彼女の金は獅子の金。目前で金の獣が涎を垂らして咆哮を上げる。

2015-09-13 21:35:56
みお @miobott

#twnovel 若い頃、吉祥天像に恋をした。村の財政を救うため像が売られる朝、絵師見習いの私は彼女の頭に髪飾りの絵を描き餞別とする。それから数十年、絵師となった私の元に一人の少女が訊ね来る。躓き転んだ彼女の髪に見覚えのある髪飾り。「ずっと探していた」と彼女は照れたように笑う。

2015-09-12 21:57:45
みお @miobott

#twnovel 「雨はどこから来ると思う?」曇天の夕暮れ時、老婆が僕を見て笑う。空だよ。とふざけて返せば「それは見た物しか信じない、愚かな人間の言葉だ」と、老婆は突如一羽の蝶に姿を変える。仰げば空一面に蝶の群れ。「遠い国の女の涙を蝶が運んで雨となるのだ」声と共に雨が降り始めた。

2015-08-31 22:17:15
みお @miobott

#twnovel あなたの鼻には虫に刺された可哀想な傷がある。それを癒すよう撫でるよう、優しく絡みつけばあなたはさも鬱陶しそうにそれを手で払うのだ。「そろそろこいつも片付けないと」あなたは私を掴んで部屋の隅に引き離し囁いた。「また来年な、蚊取り線香」窓から秋の風が吹いている。

2015-08-31 22:58:12
みお @miobott

#twnovel クールな彼女の掌は、いつも手袋が付けられて完全防備。夏も冬も風呂の中でも彼女は絶対手袋を外さない。外してよ、とせっつけば彼女は珍しく怒って見せた。「貴方の匂いを閉じ込めてるのよ」手袋の下に見えた赤い跡は、100年前に僕が付けた死の接吻。また、恋に落ちる音がした。

2015-09-01 23:11:02
みお @miobott

#twnovel 少女と初めて会ったのは春の朝。彼女は制服に身を包み私の前を通り過ぎた。数年後に彼女はスーツとなり三年後には幸せそうな笑顔で男と並ぶ。そして翌年には子を抱いていた。今や白髪の増えた髪で皺の増えた顔でそれでも彼女はいつもの笑顔を向けた。「おはよう、今年も綺麗な桜ね」

2015-09-02 21:55:08
みお @miobott

#twnovel 暑い日差しが降り注ぐ外と違ってアパートの中はひんやり涼しい。冷房は完璧、湿気取りだって用意した。「湿気らないから安心して起きて、僕は暇なんだ」僕は本の表紙を撫でる。すると本が渋々表紙を開き、ひどく不機嫌そうな声を上げるのだ。「魔法の本を暇潰しに使う人は初めてよ」

2015-09-02 22:08:02
みお @miobott

#twnovel 冷たい風が吹き始めるとあなたは現れる。姿を見たことはないけれど、いつも後ろ頭を包むように私の側に寄り添ってくれる人。どうぞ姿を見せて欲しいと言えば、あなたは困って私の足下にいくつかの紅葉を降らす。それが彼の涙であり、その正体は秋であると私は冬になって気付くのだ。

2015-09-02 22:18:36
みお @miobott

#twnovel 彼女の育つ様を近くで眺めているだけで良かった。笑顔を見つめるだけで良かった。だのに、冬の冷たい風が吹きつける雪野の裾で、彼女は笑顔のまま冷たくなっていく。彼女を抱きしめてしまった己の鋭い爪を見て、獣は呻く。「俺の罪は生まれてきたことだ」その咆哮は雪の中に溶けた。

2015-09-02 22:57:03
みお @miobott

#twnovel 夏の日差しが弱点だから君はいつでも僕に頼り切り。掴んで抱きしめて君はいつも僕の姿を探し求めた。その愛に応えて、僕も身を焦がして君を守る。日差しから熱から風から。そんな日々も終わりを告げ君の頭に乗るのは白く嫋やかな花嫁のヴェール。麦わら帽子の僕は思い出の淵に眠る。

2015-09-08 23:27:39
みお @miobott

#twnovel 妻を殺した。彼女から寄せられる愛があまりに重すぎたのだ。自由になるため私は彼女を切り刻み、家を飛び出し逃げ逃げた。気がつけば早朝。路地裏に逃げこみ一息ついた途端、足に違和感を感じる。恐る恐る見ればそこには細く白い女の左手。薬指に光るのは、見慣れた結婚指輪だった。

2015-09-13 20:58:54
みお @miobott

#twnovel 「この日は懐かしい人が帰ってくる」そういって祖母が私の手を引き港に走ったのは盆の頃。普段は封鎖された船着き場が解放されている。眩しい青の中、姿もなく船が付き姿なき人が横をすり抜ける。「ただいま」確かに母の声がした。 pic.twitter.com/8rpZTWktUK

2015-08-12 23:06:00
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みお @miobott

#twnovel 盆になると旧議場から声が聞こえるのだ…と、友人に頼まれて赴いたのは明治時代に作られた旧議場。なるほど喧々囂々喧しい。「静粛に」私は声を上げる。「これにて終結とす」声はやがて静まった。亡き祖父の声真似は私の特技である。 pic.twitter.com/Gh7Mz6nPg4

2015-08-13 23:32:36
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みお @miobott

#twnovel かつて五条の橋で戦った思い出は、およそ一千年前の物語。今では我ら二人、随分丸くなったものだ。しかし街中にコンチキチンの祇園囃子が響き始めると間も無く我らが出番。八坂へ続く道の上では過去と同じく好敵手……さあ、戦おう。 pic.twitter.com/xjLqTCR1jN

2015-07-22 21:57:18
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みお @miobott

#twnovel 学校の図書館の奥、秘密の本があるらしい。誰が言い出したか「きっと色っぽい本だぜ」男子は目を輝かせて冒険の旅に出た。埃まみれの彼らが見つけたのは中がくり抜かれた辞書、中には古い便箋の束。戦争に出る男と残される女の恋文である。乾いた紙の向こう側に遠い夏の匂いがした。

2015-08-02 20:44:29
みお @miobott

#文字スケッチ まるで赤の箱に閉じ込められたかのようである。隙間から差し込むは、白く濁った夏の日差しだ。それを防ぐかのような、赤の色だ。それは神を招く道であり、神に招かれる道である。延々と続く赤の鳥居に、不意に私は目眩を覚えた。 pic.twitter.com/3DA58vTjXk

2015-07-26 21:07:13
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みお @miobott

#twnovel 白い光が差し込む朝靄の中、道に迷った蜻蛉が一匹。大きく広げた羽根は涼しげに透き通り、それはまるで天女の羽衣だ。おいでと手を伸ばせば、蜻蛉は慌ててその場を飛び去った。私は朝露光る巣の中、愛おしい人を見送るしかない蜘蛛。 pic.twitter.com/SBeFK44bzS

2015-08-02 23:22:19
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みお @miobott

#twnovel 仕事帰りの中年が浚われる事件が多発している。現場の空に広がるのは見事な夕陽色の入道雲。気付けば隣の男がジャケットを脱ぎ、女がヒールを脱ぐ…私も釣られて携帯を折った。「さあ夏休みです」声はいつかの校長の声でそういった。 pic.twitter.com/wPhav33YUD

2015-08-05 20:50:10
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みお @miobott

#twnovel 一年に一度の美しい夜が来る。光を灯せ赤を灯せ。空を黒に塗り替え赤で大地に照らせ。その道は神の歩く道だ。急かす神に狐は辟易としたように溜息を漏らす。「我が侭な神はんやこと」彼の尾が風を起こすと、提灯が一斉に光を帯びた。 pic.twitter.com/VGXmpNqn3F

2015-07-19 23:42:19
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みお @miobott

#twnovel 祭の為に用意された提灯が風もないのに揺れている。まるで人が撫でるように動くのである。動くたびに赤色が闇に滲むのである。はてどこの悪戯坊主だと覗き見れば、男が一人「感心感心」と手を打ち笑う。後に残るのは狐の面ただ一枚。 pic.twitter.com/EPisfekVcl

2015-07-19 23:00:19
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