ツイノベまとめ

#twnovel で書いた小説や、書き出し祭りなどツイノベ小説をまとめました。
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みお @miobott

#twnovel 夕暮れが音を立てて訪れる。翳る青空に浮かぶ、千切れ雲は夕陽色の残片。途端、赤い色が一斉に闇を貫き、どこからともなく響く祭り囃子。宙に舞う赤い提灯は風に遊んで、狐の像がいかにも嬉しく笑うのだ。「さあ、祭のはじまりだ」 pic.twitter.com/FW5iwoyB4c

2015-07-19 22:16:52
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みお @miobott

#twnovel 幼い頃、私は神隠しに遭ったそうだ。その記憶も無くし大人になった夏の夜、私は妻と稲荷の祭に足を運んだ。人混みの中「久し久し」と囁く声。不思議な懐かしさに惹かれ振り返った先には、赤の提灯。古来、赤の色は神を招く色である。 pic.twitter.com/zojfAKVXsW

2015-07-19 22:54:53
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みお @miobott

私に名などない。猫として生を受けたがどこで生まれたのやら記憶にもない。薄暗くいやに湿気ったところでにゃあにゃあ泣いていたようである。私はそこで人間に出会った。それも、書生という一番どう猛な種族に出会った。しかし私を抱き上げた彼の手はひどく心地良かった。 #名作の冒頭を自分の文章で

2015-06-14 23:44:35
みお @miobott

桜の花が咲けば人は酒だ団子だのらんちき騒ぎだ。絶景だ春爛漫だなどと、人は皆浮かれて頓痴気になる。しかし、こんな物はせいぜい江戸の頃からの話である。それより昔、桜の花は人の心をぞうっとさせた。恐ろしいと思いこそすれ、絶景などとは誰も思わなかったのである。 #名作の冒頭を自分の文章で

2015-06-14 23:08:19
みお @miobott

「申し上げます」喘ぐようにその男は私の前に身を投げ出した。「あの人は酷い厭な奴だ我慢がならない」彼は師を売ろうというのである。30銀で売ろうというのだ。男の顔から漏れるのは嫌らしい笑みに悲痛の涙、歪んだ愛の蕩ける吐息。「私はあの人の居所を知っています」 #名作の冒頭を自分の文章で

2015-06-17 23:04:30
みお @miobott

#twnovel 「そろそろ怪談の恋しい季節でしょう?」そういって僕の前に現れたのは毎年馴染みの幽霊の少女。今年は可愛いレインスタイルだ。僕は笑って彼女にいう。「長靴で足下を隠したら幽霊かどうか分からないよ」「あら」彼女は恥じらい俯いた。「無い足でも濡れるのが嫌だったものだから」

2015-06-14 20:03:30
みお @miobott

#twnovel 因果な娘だ、母は私に向かってそう言った。私が男を愛すると彼は食べ物に姿を変える。パンにご飯、ハンバーグ、男は私の好物に姿を変える。お腹はきゅうと泣き愛しさと悲しさと哀れさに涙を流し私は男を喰うのだ。私の父はどこ。と、母に尋ねれば彼女は悲しそうにお腹をさすった。

2015-05-24 22:11:28
みお @miobott

#twnovel 国を乗っ取った後に起こる問題といえば、海賊だと相場が決まっている。この王もまた海賊の噂を聞いて溜息を漏らす。しかし部下の伝えた海賊の旗の色。美しい緑の縁取りを聞いて彼は目を輝かした。「それこそ前王の騎士団。死してなお旗を守るとは天晴れ。さあ正を持って迎え撃とう」

2015-05-24 20:17:10
みお @miobott

#twnovel 雨の予報を大きく外しその日は美しい晴天となった。夕暮れ、疲れて眠った私の両手が優しく包まれる。目を開ければそこに懐かしい人。「記念日を忘れるわけがないだろう」そういって微笑む影は夕陽に溶けた。残されたのは夕陽に晒された小さな骨壺が一つ。律儀な人だと私は泣き笑う。

2015-05-24 19:14:28
みお @miobott

#twnovel ここではない別の世界にきっと俺の生きるべき場所がある。そう思って車道に飛び込んだ。目覚めた俺の目前にあったのは、優しい面影の一人の老女。「貴方の角膜のお陰で私は70年ぶりに光をみたわ」薄っぺらになった俺は彼女が死ぬまで彼女を守る。ああ意外にもそれは楽しい世界だ。

2015-04-26 00:29:18
みお @miobott

#twnovel 少しでも用意が遅れたらもうお仕舞い。お互い急かし急かされ走り廻る少女たちの手には緑のマスカラ、赤や桃色、黄色のアイライン。お花になる稽古をしなくちゃ、開花に間に合わない。そんなことを言いながら、5月になれば皆、綺麗なチューリップに姿を変えるのだ、と神は微笑んだ。

2015-04-25 22:58:57
みお @miobott

#twnovel 「貴方の思い出を聞かせて」すっかり老いたあの人が僕を見つめて笑む。しかし僕は口を閉ざし首を振った。僕が一言思い出を口から滑らせるたび、一つ記憶が頭の中から消えていく。あと僕の中に残るのは、この老いた彼女との記憶のみ。けして語れはしないのだ、と僕は唇を噛みしめる。

2015-04-26 22:44:21
みお @miobott

#twnovel あの人は微笑まない。まるで虫けらのような顔で私を見る。でも私はあの人の首筋に恋をした。甘い香りのその首に恋をした。「あの人の首がいい」舞の褒美に一つだけ許される贈り物。やがて手元に届いた白い首、どろり濁った白い瞳。慈しみ撫でると彼がようやく初めて優しく微笑んだ。

2015-04-25 22:53:45
みお @miobott

#twnvday かすかに漂う匂いに私は足を止めた。早春というには寒すぎるこの季節、香りに惹かれ顔を上げればそこに咲くは梅の花。春を待ちわび春に先んじ散る花はその生き様に似たかすかな香りの妙である。なるほど朧の空気は薄桃の色。まるで甘い贈り物を貰ったようで、私の顔も淡く綻んだ。

2015-02-14 00:40:27
みお @miobott

#twnovel 幻聴のように打木が鳴き幻覚のような白い影が行き過ぎた。見れば人力車が目の前を行き過ぎる所である。車上の女は白無垢に狐の面。どこへ行くのかと訊ねれば、女は「嫁に参ります」と囁く。突如降り出した雨の中、残ったのは梅の香。翌日、梅林に狐顔の梅が咲いたと話題になった。

2015-03-15 00:25:31
みお @miobott

#twnovel その塔は遙か大陸より持ち帰られた、仏舎利を納めるために作られた。京の都を今でも見下ろすその塔を下から覗き見れば丸みを帯びた垂木とその重圧を背で支える鍾馗の笑み。規則正しく並んだまっすぐな垂木はかつて1000年前、山に見つけた奇跡の木材により成し遂げられたという。

2015-02-15 01:14:32
みお @miobott

#twnovel ふらり現れたその男は酒を頼むなり、旨そうに喉を鳴らして煽る。一杯では足りず二杯三杯溺れる様な飲みっぷり。やがて男は笑って腹を叩いた。「美味美味」声の後、音が途切れる。振り返ればそこに男は無く赤漆の杯が転がるのみ。酔いを吸い込んだその朱は艶を帯びて鈍く輝いていた。

2015-02-21 23:21:24
みお @miobott

#twnovel 私が恋をした人は、スーツの似合う料理上手。今日の彼は朝日の眩しいキッチンの片隅で腕まくり、光る包丁を片手に笑う。「さあどうやって食べようか」まな板の上で静かに横たわる私は行きも絶え絶え、エラを動かし最期の一言「どうぞお好きに」瞼の向こうに故郷の海底が見えた。

2015-04-25 22:42:53
みお @miobott

#twnovel 「これ全部読んでいいの?」君が輝くように笑うから僕は思わずにやけてしまう。「お好きにどうぞ」君は朝にだけ現れる太陽の化身。僕の書店の日焼けを気にして近づけずにいるいじらしい人。「本はUVカット済み、僕も日焼け止めで対策済み」手招けば彼女は光を放って眩しく微笑む。

2015-04-19 20:09:11
みお @miobott

#twnovel 「またいつか」彼女は寂しげに私の身体を愛おしく撫でる。「きっと良い子の物となるはずだから、私の恋情も想いも全て持っていって頂戴」そう言って、私は彼女の身体から切り離された。私は彼女の纏う真新しい袈裟に散る。そしてまだ見ぬ少女の鬘となるために私は長い旅をするのだ。

2015-04-26 22:59:56
みお @miobott

#twnovel 「馬鹿な男サ。女にお願いされて抱いてみりゃ鼻が落ちた」私がマスク男と汽車で隣り合ったのは夜半過ぎ。淡々と彼が語る猥談につい引き込まれる。「男はどうなった」「離れたく無いと女にねだられ」彼はにちゃり笑ってマスクをずらしてみせた。「こうして俺の空いた鼻に住んでいる」

2015-05-24 19:08:32
みお @miobott

#twnovel 執拗な女だ。毎夜毎夜、好きだ好きだあなたが好きで仕様が無いと言って付きまとう。ようよう逃げた深夜の公園。さて彼女は消えた。安堵してベンチに座ると、空の雲が払われ月が顔を出す。途端、隣に彼女が現れた。[愛おしい人」微笑む彼女は月の化身。私はどうにも逃げられない。

2014-09-28 18:03:44
みお @miobott

#twnovel 「貴方に最期のカクテルを」バーテンダーの彼女からメールが届いた時、彼女は既にこの世から去っていた。駆けつけた彼女の店。机には夕暮れ時の空を思わせるカクテル。彼女には酷い事ばかりした。思い出と共に飲み干せば込み上げる吐き気。そうか彼女は私を許してはいなかった。

2014-09-28 18:26:15
みお @miobott

「毎朝良い子だね」おどけた顔のピエロは私の頭を撫でる。そして私の持つ小さなゴミ袋を取り上げて、「遊園地のお掃除ありがとう」その代わりに飴玉を握らせた。 それは廃業間近な小さな遊園地。「……良い子じゃないわ」。私の呟きはマフラーに染みる。私はピエロに恋をしていた。 #twnovel

2011-01-26 10:19:31
みお @miobott

その温泉にはモンスターが出るのだと言う。深夜に男が湯に浸かると口をカリリと噛むそうだ。勇気ある若者が一人、ハンマーを隠し持ち温泉にやって来た。気配を感じた瞬間、振り下ろしたハンマーはモンスターを仕留める。見ればそれは一枚のクッキー。女の唇型のクッキーである。 #twnovel

2011-01-12 08:02:33
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