【蜻蛉釣り:後編】

人前で叱責する上司は無能←
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵「…そろそろ機嫌直してくれませんかねぇ?睦月さん…(;´∀`)?」 睦月「知りません!」 ブイン基地から離れた位置にある演習海域の桟橋に…駆逐艦睦月と…葛葵は腰をかけ並んでいた 傍から見れば…少女の顔色を恐る恐る伺う奇妙な釣り人というおかしな光景。 1

2015-07-25 22:01:00
葛葵中将 @katsuragi_rivea

睦月「…第一、とても提督には見えません!何ですかその格好は!」 …麦わら帽子にノースリーブの白いシャツ。ベージュの半ズボン。 首にだけはそれらとミスマッチな白い縞が入った黒を基調としたアフガンストールのようなものを巻いている …睦月の言うとおり軍関係者にはとても見えない 2

2015-07-25 22:02:15
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵「いや(*‘ω‘ *)…私は北国出身でね…暑いの苦手なのよ。」 もはや返す気力も失う睦月。 大きくため息をつく…なんて自由な人なのだろうか 朝霜「ほらほら、まもなく"始まる"んだからケンカはそこまでにしときな?」 3

2015-07-25 22:03:39
葛葵中将 @katsuragi_rivea

海の上から桟橋に腰掛ける二人に声をかける朝霜。 足にはいつもの艤装ではなく簡易型の艤装。そして背中には…大きな籠を背負っている。 「蜻蛉釣り」のための演習用装備である 葛葵「おっと(*‘ω‘ *)まもなくか… 翔鶴!及び龍鳳、葛城!準備おっけー?」 4

2015-07-25 22:05:10
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵は小さなラジオのような形状をした無線機に大きく声をかけた 無線機からは…三種類の声。 「航空母艦、翔鶴。準備万端です」 「同じく龍鳳。指定の位置につきました」 「こちら葛城。いつでもいけるわ!」 三人の空母から各々の声が返ってくる 5

2015-07-25 22:06:42
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵は左腕の腕時計に目を落とす。その短針と長針が今まさに重なる瞬間だった 葛葵「ヒトヨンマルマル!これより防空戦闘演習、開始する」 防空戦闘演習。制空権が相手に優位にある場合を想定した状況下での演習、 号令とともに空母同士の演習が幕を開ける。 6

2015-07-25 22:08:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵、睦月、朝霜が双眼鏡を通して見る沖合いには二名の航空母艦の姿が確認出来る その色合いに若干差はあるがどちらも緑色の着物のような艤装を身に纏っている。 一人はその艤装の上に二つに枝分かれしたネクタイを巻く龍鳳。 一人は大胆にも上半身をはだけている葛城である。 7

2015-07-25 22:09:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

緊張の赴きでいずれ飛来してくるであろう相手の艦載機に警戒し、上空へと目を向ける 龍鳳と違い、葛城はどこかその足がおぼつかない 慣れていないような雰囲気すら漂わせる。 …それもそのはず、彼女が着任したのは…西方海域打通作戦後まもなく。 8

2015-07-25 22:10:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

それに加え…葛城は"艦"としての戦歴が浅い。 "あの大戦"末期の戦時急造艦、帝国海軍が建造した最後の航空母艦 そういった戦歴が浅いものは"艦娘"としてこの世界に転生した後もその影響が顕著に出る傾向にあった。 それゆえにより一層の練成が求められるケースも稀ではない。 9

2015-07-25 22:11:20
葛葵中将 @katsuragi_rivea

西方打通作戦の直後「南方海域の敵が活発化した」との情報を聞きつけ その邀撃作戦に志願した葛葵が彼女を新たに麾下へと加え、その練成を買って出たのであった。 龍鳳「葛城?もう少し力を抜いて下さい。 両足への注意が散漫になっていますよ」 葛城「えっ、あっ、うん。そうね!」 10

2015-07-25 22:12:18
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵「あの龍鳳が"先輩"ねぇ…(*‘ω‘ *)不思議なものだね」 朝霜「…司令に同感だよ。」 これまでならば…どこか少し頼りなかった龍鳳が今では立派に先輩として葛城の練成を手伝っている姿がある 艦隊のメンツからすればそれは少し意外な光景だった 11

2015-07-25 22:13:36
葛葵中将 @katsuragi_rivea

二人の航空母艦は互いに小さく頷き、 龍鳳「風上に艦首を!索敵機と直掩機の発艦に移ります」 了解、と小さく葛城も返事をする。練度に差はあるのは一目瞭然だが二人の相性はいいらしく 練成の期間は短いなりにも連携そのもの自体は上手くいっている様子である 12

2015-07-25 22:14:27
葛葵中将 @katsuragi_rivea

龍鳳が赤城や加賀などの代表的な空母同様に弓矢を射て艦載機に変え発艦させる それに対しての葛城は梓弓を携え、ヒトガタをその矢に織り込みそれを射ることにより艦載機を発艦させる 姉二人とは少しばかり違う発艦方法 龍鳳や翔鶴にスタイルが近いゆえに葛葵艦隊にて教えを受けている 13

2015-07-25 22:16:05
葛葵中将 @katsuragi_rivea

最初の頃こそ、過去の記憶から高角砲を構えてしまう癖に苛まれた葛城であったが今はある程度抑えられている 光を放ち空へと飛び立った赤蜻蛉達、編隊を組み飛びゆく姿に少し見惚れつつ二人の航空母艦は見送る。 まだその姿を見せぬ相手の艦載機達に警戒をしながら気を入れ直した 14

2015-07-25 22:17:55
葛葵中将 @katsuragi_rivea

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2015-07-25 22:18:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

やがて…葛城の装備する一四号対空電探に反応が見られた。 葛城「一四号電探に感あり!数は…五◯から六◯!」 PPIスコープが視界に表示され、それを通し送られてくる情報を読み上げる 龍鳳「葛城!高度と方位の報告をお願いします」 葛城「え、えぇ…そうね!」 16

2015-07-25 22:19:44
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛城は焦っている様子が周りから見ても明らか。高度と方位の報告を忘れるほどに… 龍鳳「翔鶴さんの艦載機の合計は…84。20機足りないです。」 葛城「となると…別方位からの波状攻撃ね!」 額から一筋の汗を流し、緊張が走る。はだけた着物の袖はバタバタと風になびいていた 17

2015-07-25 22:20:53
葛葵中将 @katsuragi_rivea

直掩機と"相手"の艦載機が既に交戦を開始し、入り乱れたドッグファイトを繰り広げる。 …葛城と龍鳳に支給された赤蜻蛉は紫電改二とほぼ同型 対する翔鶴に与えられたのはヤーボ(62型爆戦)…性能では有利のはずが… 葛城「嘘…押されてる…!?」 その練度の差は形となって現れる 18

2015-07-25 22:23:03
葛葵中将 @katsuragi_rivea

次々と撃沈判定を受け、海面へと落とされていく葛城&龍鳳の赤蜻蛉達。 それを双眼鏡で遠目に見ていた朝霜はボヤく… 朝霜「あーあー…あたいの仕事、増えるねぇ…」 葛葵「ラムネもう一本あげるから(*‘ω‘ *)頼むよ」 朝霜「…はいよ。」 19

2015-07-25 22:24:07
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛城はスコープで別方位から飛来する艦載機をさらに捉えた。 葛城「第二次、敵艦載機接近!数は二◯!高度は右二◯度、高度は二◯◯◯!」 葛城がさらなる焦りを募らせる様子に龍鳳は一喝を入れる 龍鳳「葛城!落ち着いて!対空砲火の準備もしましょう」 葛城「え、えぇ…!」 20

2015-07-25 22:25:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

別方位から飛来した"相手艦載機"は戦闘の輪に入ってくる様子はなく上空をただ旋回を繰り返すばかり 葛城「(…何かを狙っているのかしら?)」 そちらに気を取られ至近弾を一発、許してしまう 葛城「このままじゃいけないわ。龍鳳、第二次発艦!始めるわ」 21

2015-07-25 22:27:11
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛城「今飛び立っている子達も一旦帰ってこれる子は帰ってきて!」 第二次発艦の準備が整い、交代で艦載機を繰り出そうとし、現在飛び立っている赤蜻蛉達に指示を飛ばす葛城。 双眼鏡でそれを見ていた"司令官"はぼそりとつぶやいた 葛葵「…送り狼。」 睦月「えっ?」 22

2015-07-25 22:28:13
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛城の飛行甲板に戻ろうと引き返す艦載機達。 その瞬間を狙っていたと言わんばかりに… 葛城「えっ!?旋回していた相手艦載機、急降下!!」 …里心ついた敵は落とすのが容易い。かつての海軍航空隊のエースはそう言った。 "送り狼"が牙を剥く。 23

2015-07-25 22:29:27
葛葵中将 @katsuragi_rivea

急降下してくる"送り狼"達に赤蜻蛉達は撃墜判定を加えられ、 さらに爆弾も落とされ葛城は大きくその足のバランスを崩す 葛城「わ!わわ!ちょっと!!」 龍鳳もその近くにいた。彼女もまた…"相手機"へとその注意を向けていてそれに気づいていなかった 龍鳳「えっ!?葛城!?」 24

2015-07-25 22:30:46