- katsuragi_rivea
- 876
- 0
- 0
- 0
【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 陽は既に水平線から離れ、海と空を青く照らしている。 風は少し冷たく海上を吹き抜け海面に細かく波紋を映し出す 辺りには砲撃による轟音と…空を駆ける海鷲達のエンジン音が捻りをあげ風を切っていた。
2015-06-09 00:16:01【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 黄金色のオーラを纏う異形の影が複数。 人型の形こそすれどその手には盾のような物を携えている影が一つ 重巡リ級flagship、その主砲8inch三連装砲が火を吹き轟音が鳴り響く。 砲弾が着弾し信管が作動…破片と爆発で海面に水柱を立てていた。
2015-06-09 00:18:08【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 海面にいくつも立ち上がる水柱の合間を縫って三人の艦娘が白い航跡(ウェーキ)を描き駆け抜ける 先頭は北方迷彩をあしらった漆黒のマントを風になびかせ駆け抜ける重雷装艦、木曾。 緩急をつけた加減速と之字運動で敵重巡から放たれる砲撃を寄せ付けない
2015-06-09 00:19:11【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 木曾の後方には二名の駆逐艦が彼女を追うように同様に疾駆していた 初霜と磯風。 艦娘達の証言から紡がれる"あの大戦"における「坊ノ岬沖海戦」で奮闘した彼女達 敵艦爆から夥しく降り注ぐ爆弾を恐れることなく対空迎撃を行いつつ前進する
2015-06-09 00:20:26【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 軽やかな軌道で美しい舞のような回避を見せる初霜と 当たるか当たらないかというギリギリのラインを勇敢に進む磯風 まるで落ちる爆弾のほうから避けている。そのようにすら見える どちらも高練度の駆逐艦娘。神通仕込みの艦隊運動で鮮やかに戦場を駆け巡る
2015-06-09 00:21:23【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 先を進む彼女達の姿を艦上偵察機、彩雲の目を通し…航空母艦龍鳳は羨むような目線を向けていた 龍鳳「…(どうしてみなさんはあんな風に…迷いなく戦えるのでしょう…?)」 自分よりも遥かに小柄で耐久性にも劣る駆逐艦の彼女達の目には一切の揺らぎがない
2015-06-09 00:22:26【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 龍鳳の近くでは金剛が先を進む三隻の援護射撃を行っている 大口径の主砲から発せられる雷鳴のような轟音。砲塔から吹き出すド派手な炎と… 備え付けられた主砲から交互に砲撃を繰り出す度に 反動を抑えるため体を仰け反らせる様子がその威力を物語っている
2015-06-09 00:24:07【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 金剛の砲弾が着弾したことを知らせるために着色された紅色の水柱が敵空母ヌ級FSの足元に立つ 炸裂した破片が突き刺さり命中こそしなくともそれは効果的な一撃になる ヌ級が大きくバランスを崩したところへ赤いマーキングが二本入る彗星甲型が狙いをつける
2015-06-09 00:25:18【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 加賀「ここは譲れません」 静かに呟く加賀 航空母艦加賀の機体から放たれた五十型(500kg)の爆弾が吸い込まれるかのようにヌ級に命中し大きな火柱を上げる その上では烈風隊が制空権奪取のために飛び回り、敵機を炎と黒煙で包み海面へと落としてゆく
2015-06-09 00:27:16【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 加賀の艦載機の練度は一航戦の名に恥じぬもの。みるみるうちに敵機は落とされその数を減らしてゆく 何より…その搭載数、発艦された艦載機の数は龍鳳とは桁違い 圧倒的…その一言に尽きた。 コンプレックスさえ感じ…さらに彼女の心に暗い影をさす
2015-06-09 00:29:01【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 龍鳳「…(本当に私はここにいてよいのでしょうか…)」 思わず自らの首にかかる赤いネクタイを強く握り締める。 このネクタイは大切なお守り… 彼女は不安に駆られるとこれを握り締める癖があった
2015-06-09 00:30:15【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① これをくれた主は…"あの大戦"の時において何かと縁があった 佐世保の幸運艦…あの呉の雪風と並び称されたほどの実力者 戦場を共にした二人がこの世界で再会した時、大いに喜んだものだ。 この"お守り"はその時に彼女から贈られた物
2015-06-09 00:33:43【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① そんな彼女がこのネクタイとともに贈ってくれた言葉を思い出す… 「龍鳳は…"過去"のことを気にしてるんだね…でも、止まない雨はないさ。 いつかその龍鳳の憂いを晴らしてくれる。そんな提督の下で戦えるといいね」 彼女は…そう言ってくれた。
2015-06-09 00:34:44【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① ーーー止まない雨はない。それを晴らしてくれる…"彼"が果たして本当にそんなことが出来るのか… 龍鳳「…(提督…何故こんな私を艦隊に…)」 龍鳳が思いを巡らせた時間はほんの数秒に過ぎなかったが、 その数秒は戦闘時において非常に大きな隙となる
2015-06-09 00:36:24【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 加賀「敵機直上!避けなさい!!」 龍鳳「えっ?」 加賀が声を張り上げる。それに気づき真上を見上げる 直掩機が張り巡らせる防衛の網をくぐり抜けた一機の敵艦爆が青い光を宿し 隙を見せる"航空母艦"へとその搭載された爆弾を落とすその瞬間が目に映る
2015-06-09 00:37:38【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 心臓が大きく跳び跳ねる 油断、慢心。気を抜けば死=轟沈が手招きをしてくる世界。 一瞬の隙を見せることも許されない。 ーーー避けられない…龍鳳は身構えた。 いずれ訪れる激痛…恐怖の感情に支配される。冷や汗が滲むのが感じ取れた
2015-06-09 00:38:55【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 次の瞬間、彼女の体は横へ突き飛ばされ何者かが割り込んできた。 一瞬の出来事だったが"庇われた"…そのことを"何者か"の横顔を見て理解する 龍鳳「金剛さん!?」 金剛「…油断してはダメデース!」 …龍鳳は信じがたい光景を目にする
2015-06-09 00:40:04【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 金剛は落ちてくる爆弾に「拳を叩きつけた」 それは目にも止まらぬスピードで起爆するよりも先に圧し折れた"屑鉄"が海面へと姿を消す 時間差で起爆したのか"屑鉄"が消えた位置で水柱が上がる その飛沫が顔にかかるがその光景を呆けて眺めるより他なかった
2015-06-09 00:42:24【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 咄嗟の出来事にますます頭は混乱した 人の体を手にしたとはいえ…今、目の前にいる戦艦が行ったことはにわかに信じがたいことだった。 「爆弾を」「素手で」「処理した」…ありえない… それでいてなおかつ「余裕」といった表情を浮かべる金剛に畏怖を抱いた
2015-06-09 00:44:16【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 金剛「大丈夫デスか?」 片目ではウインクをしながら優しい表情で微笑みかけてくる。 足に力が入らない龍鳳に"傾斜復元"…その助けのために座り込む彼女に手を差し伸べてくる。 龍鳳は何も言葉に出来ないままその手を握り返した
2015-06-09 00:45:31【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 加賀がそんな様子をため息混じりに見つめていた。それは安堵か…はたまた呆れかはわからないが 程なくして木曾達が進んだ先の方向からおどろおどろしい叫び声が上がる。 勝利。敵の間際の声がそれを告げたのだった…
2015-06-09 00:47:29【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 海上で静止する六隻はしばしの暇(いとま)へと移っていた 磯風と初霜が望遠双眼鏡で水平線の向こうへと目をやり、周囲の警戒に当たる。 加賀は弓の弦を引くなどして装備の調子をチェックしている。 それぞれが思い思いの形で訪れた暇を過ごしていた
2015-06-09 02:06:27【冬E4篇:碧花絢爛】了篇① 旗艦である金剛は通信機を片手に艦娘母艦司令部宛に打電でもしているのだろう (視界に浮かんでいる)電子パネルの操作をしているのか… 手と指を動かす動作を繰り返している。 龍鳳「…(お礼…言いそびれちゃったな…)」 そんな旗艦の姿を見つめる龍鳳
2015-06-09 02:07:50