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黄昏時の空の下、鬼女と悪魔が睨み合い、悪魔の後ろでは魔女が笑う。いかにも幻想的な風景。しかしそれを見上げる通行人はここにはいない。すでに異界の内だからだ。鬼女は油断なく相対する二人の怪異を観察する。部屋からわずかに感じられた視線の主は、この二人に相違あるまい。1 #4215tk
2015-07-27 20:06:30魔女の前で黒い翼を広げ、殺気立った目でこちらを睨むのは悪魔。退魔師の情報が正しければ、名はトリル・クロスロード。自分から見てもその霊気は圧倒的。正面からぶつかっては、勝てるかどうか。……ついで巡は背後の魔女に視線を移し、眉をひそめた。妙な気配だ。2 #4215tk
2015-07-27 20:09:11「私の顔になにかついてる?」おどけた態度で魔女が問う。「そうですねえ、仮面がついているくらいしかわかりませんが」巡は軽い口調で答える。道化を模した仮面の後ろで、魔女がくすくすと笑った。鬼女は眉根を寄せる。あの魔女、どうにも霊気の質が掴めない。3 #4215tk
2015-07-27 20:12:31「何の用だ、虫ケラ」威圧的な態度で悪魔が唸る。仁王立ちのまま空中で静止。「わざわざ死ぬためにケンカ売りに来たのか?」「いえいえ、喧嘩だなんてとんでもない」にこやかな笑顔で巡は両腕を軽く上げてみせる。「不穏な気配がしましたんでねえ、見に来ただけなんですよう」4 #4215tk
2015-07-27 20:15:07「へぇー!あそこからでも見てるのがわかるんだ」魔女が感心したように言う。「すごいんだねぇ」「昔からの妖怪を舐めてもらっちゃ困ります」悪魔から目を離さぬままに返答。「いえ、こちらもまさか『学校の魔女』殿とは思いませんでねえ。よければちょいと時間をいただけませんか」5 #4215tk
2015-07-27 20:18:09「お話のお誘い?それは光栄!」魔女が弾んだ声を上げる。「面白いお話を聞かせてほしいなぁ」「怪談の類でよろしいんなら、いくらでも」飄々と返す巡の心中は、穏やかではない。悪魔が放つ重圧がいつ本格的になるかもわからぬからだ。「ですがその前に、少しご提案ができればと」6 #4215tk
2015-07-27 20:21:16魔女が小さく首を傾げる。視線で促され、巡は先を続けた。「どうですかねえ。一度、うちの若旦那の元に御足労願えませんか」その言葉に、悪魔がわずかな反応を見せる。成る程、たしかにあの少年に執着があるか。それを視界の端に捉え、彼女は魔女へと視線を向ける。7 #4215tk
2015-07-27 20:24:05「彼のところに?」「ええ、そうです。うちの若旦那はお優しい方でね、あまり切った張ったはお好みではないんで。ちょうどいい機会ですんで、少し話し合いの場を持てればと」「なるほどなるほど。魅力的な提案だね。ねぇ、トリル?」笑みを含んだ声で魔女が悪魔に問いかける。8 #4215tk
2015-07-27 20:27:07悪魔は答えない。暗い視線で巡を見据えるだけだ。「けど、そっかー……うーん、どうしようかなぁ」魔女がわざとらしく悩みのポーズを見せる。ややあってから、彼女はあっけらかんと答えた。「うん。悪いけど、今日はパスするよ」「なんですと?」思わず巡は眼を見張る。9 #4215tk
2015-07-27 20:30:11正直な話、彼女にとっては寝耳に水だ。悪魔の事情も考えれば、乗ってくるものと考えていた。「今日はパス。だってさあ」魔女が笑う。くすくすと。「そうしちゃうと、すぐに話がついちゃうもの。そんなのつまらないじゃない?」その言葉と同時。巡の後方に新たな気配が現れた。10 #4215tk
2015-07-27 20:33:05悪魔は答えない。暗い視線で巡を見据えるだけだ。「けど、そっかー……うーん、どうしようかなぁ」魔女がわざとらしく悩みのポーズを見せる。ややあってから、彼女はあっけらかんと答えた。「うん。悪いけど、今日はパスするよ」「なんですと?」思わず巡は眼を見張る。9 #4215tk
2015-07-28 20:17:03正直な話、彼女にとっては寝耳に水だ。悪魔の事情も考えれば、乗ってくるものと考えていた。「今日はパス。だってさあ」魔女が笑う。くすくすと。「そうしちゃうと、すぐに話がついちゃうもの。そんなのつまらないじゃない?」その言葉と同時。巡の後方に新たな気配が現れた。10 #4215tk
2015-07-28 20:19:07