秋山殿関連…かどうかはわからない個人的備忘録

ガルちゃん @Garuchan_Kawaii

政界といえば、ライオン宰相として知られる濱口雄幸総理や、友愛でお馴染みの鳩山一郎氏もお客として来ていた。さすがの東京駅。また名前は定かではないが、よれよれの老人で、芸者の囲まれて（というより引きずられて）連れてこられる人もいたという。お金持ちもなかなか大変である。

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直木賞で有名な直木三十五氏もよく来ていたそうだ。ただ直木氏は体が弱く、よく入院している印象があったようだ。 氏が入院した時はじいちゃんが病院（胃腸病院といったそうだ。）まで出向き、持ってきた道具で毎日ヒゲを剃っていた。そのうちに仲良くなり会話をするようになったそうだ。

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じいちゃんは、ある時直木氏に「伊豆の大島に一泊旅行にいくから」と、連れて行かれたこともあった。その時もいつものようにヒゲを剃ってさしあげたそうである。また、氏にはお嬢さん（木の実さん）がおり、「その人がずいぶんときれいなものだったからドキドキした」とはじいちゃんの談。

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この時、年の頃16。なかなかにかわいがられていたようだ。直木氏は菊池氏からの紹介で…というよりは、菊池氏が入院している直木氏のところへじいちゃんをよこした、という感じだったらしい。らしいというのは、どうもこの話は酔っ払った時に出てきた話で、何やら曖昧な具合に話していたからである…

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直木氏は金にも仕事にもずいぶんと無茶を重ねるような人だったようで、その無茶がたたったのか結核を煩い死んでしまった。きれいと評された娘さんも、25そこらで自死。残された奥さん、そして直木氏の愛人はともに80過ぎるまで元気だったというのだから、人間どうなるかわからないものである。

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閑話休題。

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さて、盟友へ使いによこす程度にはじいちゃんを気に入っていた菊池氏。灰皿をもってついてくるじいちゃんのことは、大層かわいがっていたそうだ。氏が店に来たときはいつもじいちゃんがついてまわり、氏もまた、そんなじいちゃんによく話しかけていた。

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突然だが、じいちゃんは山が好きである。山と自然が大好きである。あるとき金沢の三越に支店が出来るということで、じいちゃんが志願して入ったことがあった。じいちゃんの魂胆としては「山が見られるぞ～」という具合だったようだが、あいにく季節は冬。曇が続き、めったにみられなかったそうである。

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予想に反する結果にたいそうがっかりしたじいちゃんだったが、自分の都合でもとのところに帰るわけにはいかず、仕方なくそこでの生活を続けていた。そんななか、見覚えのあるお客が来た。そう、菊池氏である。お互いハッと気付くと、いつものようにじいちゃんが灰皿を持ったそうな。

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そういう具合に菊池氏とは、いろんなところで顔をあわせ、その度に可愛がられていたようである。が、戦中戦後のゴタゴタから菊池氏が死没するまで顔を合わす機会が一切なく、あやふやなままその関係を終えたようである。それでもやはりじいちゃんのなかでは、とても大切な思い出だったらしい。

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そうやって、いろんな人と出会い、いろんなところに行き、いろんなことを体験して、じいちゃんはどんどんと成長をしていった。そんな中、一人の女性を出逢う。ばあちゃんである。

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じいちゃんよりも6つばかし年上だったばあちゃんは、九十九歳まで生きた長生きなばあちゃんで、ぼくもこの人のことはよーく知ってるし、たくさん可愛がってもらった。九十八歳までは自分で買い物に出歩き、九十九歳になってもトンカツが好きなパワフルなばあちゃんだった。

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さて、当時既にベテランとして活躍していたじいちゃんは、富山にあった宮市大丸内の莊司の支店に主任（おそらく店長）の立場で赴いていた。一方のばあちゃんはというと、美容師として働きながら、母校である美容講習所（マリールイズ美容専門学校）で講師をしていた。

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ばあちゃんの働く美容院が莊司の入るデパートに支店を出すということで、ばあちゃんがそこに出てきて…そうして二人は出逢ったらしい。らしい、というのはどうも二人ともそのあたりのことは話したがらなかったらしく、そういう具合に出会いましたよ～といった概要でしか教えてくれなかったようだ。

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なれそめは軽くしか知らなかったが、当時の写真は目にしたことがある。スキーウェアに身を包んだ若かりし頃のじいちゃんとばあちゃん。山に慣れていた爺ちゃんのスッキリとしたシルエットとは対照的に、ばあちゃんは体が丸く見える程着込んでいたのが印象的だった。いい笑顔だったと記憶している。

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ばあちゃんは大層美人さんだったそうで、かの大スター、長谷川一夫ともウワサがあった…なんていう話もあったりなかったり。今はもう無いが、長谷川一夫のファンクラブの歌か何かをばあちゃんが作ったらしい…がこれまたほんとのところはうかがい知れず…真相は闇の中である。

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じいちゃんと出逢う前のばあちゃんは評判もよかったらしく、実姉の旦那さんのいとこにあたるアメリカ在住の日本人との縁談話がもちあがったことがあった。その人の名はジョージ・ナカシマ。アメリカの家具デザイナーであった。じつは僕はこの人と誕生日が一緒だったりする。

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ばあちゃんは乗り気ではなかったし、ばあちゃんの実姉が断っていたこともあり、その話はなかったことになった。先ほどの長谷川一夫のこともそうであるが、自分の知らないばあちゃんの姿を知るのはなんだかこそばゆい気分である。

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…さて、じいちゃんは芝白金の生まれだが、ばあちゃんは四谷の生まれだったそうだ。富山の地には東京者はなかなかおらず、そういうところでも惹かれあるなにかがあったらしい。ほんとのところは二人にしかうかがい知れぬ。

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まぁそんな具合に二人は縁を育み、夫婦の契りをかわしたのであった。そして再び、東京の地へと足を踏み入れる。

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東京に戻ったじいちゃんは、新宿の床屋で働いていた。東京に戻るにあたって莊司をやめてきたようで、どういう経緯かはわからないが新宿に居着いた。その当時の莊司は代が変わったばかりで、先代の息子があとを継いだらしい。またこの息子がとんでもないボンクラ（じいちゃん談）だったそうだ。

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どうやら当時の莊司は店員で野球チームを組んで、跡継ぎの息子は野球が上手い連中だけをかわいがっていた。じいちゃんはそんなトップの姿をみて愛想を尽かしたようで、長年世話になった古巣を出る決心をしたそうだ。なんともはやな話である。

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そんなわけで新宿に居を移したじいちゃんたち。今の新宿紀伊國屋本店前の向かい、しゅうまいの早川亭という定食屋があったが、その隣にあった呉服屋の二階がかつての二人の住まいであった。

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ちなみに母方のじいちゃんばあちゃんも出会いは新宿で、僕と優花里さんも新宿をぶらつくのが好きである。新宿という街に縁があると改めて思ったのはここだけの話である。

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新宿の店でもいろんなお客さんがきたが、映画好きだったじいちゃんがしょっちゅう通っていた新宿武蔵野館の支配人さんもまた、その一人だった。髪を切っていくうちに支配人さんと仲良くなったじいちゃんは、後々武蔵野館に顔パスで入れるようになったという。つくづく人に好かれる御仁である、