『ウェン・ワン・ドアー・シャッツ・アナザー・オープンス』#1

テキストカラテ。しかな=サンのテキストカラテ『ギター・サウンズ・ライク・サンダーボルト』(http://togetter.com/li/839235)とリンクしています。
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ジュセー @shiroboshi2

ポイズナーもまた、機械的返答をし、通信を切ろうとしたのをロブストボアは止めた。そして考え込む。「あの辺りには確か……ブラックチューター=サンの潜伏疑惑があったな。彼がセクトのニンジャを殺めるなどというウカツをするとは思えん。別な野良ニンジャの可能性……」 25 #S57Ninja

2015-07-14 21:52:59
ジュセー @shiroboshi2

彼はポイズナーに、見込みある野良ニンジャならスカウトせよ、反抗するようであれば容赦なく殺害せよ、と伝えた。ポイズナーは機械的に答え、両者の通信は終了した。「最近は野良ニンジャの増加が目立つことよ……む?」彼は再びIRC通信機を取った。 26 #S57Ninja

2015-07-14 22:04:43
ジュセー @shiroboshi2

通信相手は……末端のニンジャ。ロブストボアはそのニンジャと通信を繋げる。ニンジャの名はムエボーラン。アマクダリに恭順するヤクザクランのヨージンボを勤めているニンジャだ。ムエボーランは、謎の野良ニンジャによって所属するヤクザクランが崩壊したことを報告した。 27 #S57Ninja

2015-07-14 22:10:31
ジュセー @shiroboshi2

そして、その野良ニンジャを追うための増援要請をした。「フーム。ヘルハウンド=サンを殺った野良ニンジャではないな。位置が遠すぎる。フーム……まぁ、増援は寄越してやろう。ムエボーラン=サンでは少々の不安があるでな。ペリノア=サンを遣わそう」 28 #S57Ninja

2015-07-14 22:14:20
ジュセー @shiroboshi2

ロブストボアはその旨をムエボーランに伝えると、通信を切った。顎をさする。「野良ニンジャ……実際目障りなものだ。システムによる秩序の世界には邪魔な……僅かなエラー……故に早期の対処をせねばならん。つくづく面倒なことであるよ」彼は目を閉じた。 29 #S57Ninja

2015-07-14 22:17:52
ジュセー @shiroboshi2

ミグチはアヤミを連れ、廃墟へと忍び込んだ。人の気配はない。ヨタモノの溜まり場の形跡も無い……ヨタモノがいたところで、ミグチはニンジャであり、何ら問題は無いのだが……安全に越したことはない。こちらにはアヤミがいる。極力戦闘は避けねばなら無い。 31 #S57Ninja

2015-07-14 22:24:33
ジュセー @shiroboshi2

「おい。着いたぞ。休……め……」ミグチはアヤミを振り返り言う。言おうとした。そして、溜息を吐いた。微かな寝息。アヤミは既に眠っているようだった。「おいおい……安心し過ぎだっての……」彼は半ば呆れたように独り言を放った。 32 #S57Ninja

2015-07-14 22:29:08
ジュセー @shiroboshi2

(……なにしてんだろうねぇ、俺は)ミグチは物思いにふける。ニンジャになる前の時期の事。ニンジャになった直後の事。アマクダリ・セクトに所属していた時期の事。システムによる秩序というものに重圧を感じ、セクトを抜けた時期の事。そして、今。 33 #S57Ninja

2015-07-14 22:33:32
ジュセー @shiroboshi2

衝動的だった。フシギだった。自分は、ニンジャなのに。か弱き少女を助けるなど。ニンジャなのに。義憤に駆られるなど。ミグチはアヤミを見る。安らかな寝顔だ。あの時ミグチが助けなければ、アヤミはあのままネオサイタマの闇に蹂躙されていたことだろう。 34 #S57Ninja

2015-07-14 22:42:21
ジュセー @shiroboshi2

「なぁ、おい、ブッダ殿。こんな事になっちまってからよ。頼むから最後まで見届けてくれよな……」ミグチはヒビだらけの窓ガラスから覗くドクロめいた月を見る。『インガオホー』。そう月が呟いた気がした。 35 #S57Ninja

2015-07-14 22:49:15
ジュセー @shiroboshi2

ミグチもまた、休息を取った。アヤミがいるため、眠りはしない。周囲に警戒を張り巡らせる……ニンジャが一人、それ以外に複数の気配。ニンジャではない。クローンヤクザだろう。ミグチは立ち上がる。「もう割れちまってんのか。休息の暇もありゃしない……」 36 #S57Ninja

2015-07-14 22:54:13
ジュセー @shiroboshi2

立ち上がったミグチは羽織っていたジャケットを脱ぎ払った。そしてそれをアヤミに被せ、ヒビだらけの窓ガラスの側に立つ。眼下には……やはり、ニンジャが一人に、クローンヤクザが……六人。クローンヤクザの人数にだけ注目すれば、大した戦力ではない。 37 #S57Ninja

2015-07-14 22:59:44
ジュセー @shiroboshi2

だが問題は、ニンジャだ。たった一人のニンジャだが……その身体はスモトリめいており、四肢は丸太めいて太い。まず間違いなくビッグ・ニンジャ。(面倒な奴が来やがったなぁ、おい……ブロンズゴーレム、だったか奴は?)ミグチは注意深く観察を続ける。 38 #S57Ninja

2015-07-14 23:10:12
ジュセー @shiroboshi2

ブロンズゴーレムは、ミグチには気づいていないようだ。アンブッシュを仕掛けるべきか。彼はカタナを握る手に力を込めた。彼に宿るは名無しのソウル。装束もメンポも生成できなければ、スリケンを生成することも叶わないサンシタのソウル。ジツも無し。 39 #S57Ninja

2015-07-14 23:15:02
ジュセー @shiroboshi2

故に彼はカラテを鍛えた。ノー・カラテ。ノー・ニンジャ。かつて彼のメンターを務めたカラテ戦士たるニンジャの教えだ。ミグチは窓ガラスをゆっくりと、音を立てずに開く。そして、一度深く息を吸い、吐き……キッと目を見開くと、開けた窓から飛び降りた。 40 #S57Ninja

2015-07-14 23:20:10
ジュセー @shiroboshi2

落ちる。落ちる。彼はカタナを突き立て……「イヤーッ!」「グワーッ!?」アンブッシュ!しかしやはりビッグ・ニンジャ。大した傷はつけられぬ。「「「「「「ザッケンナコラー!」」」」」」クローンヤクザが一斉銃撃!「イヤーッ!」ミグチはカタナを荒っぽく抜く。 41 #S57Ninja

2015-07-14 23:23:30
ジュセー @shiroboshi2

「イヤーッ!」スモトリめいた巨体の、山のように盛り上がった肩を踏み台にミグチは跳躍。クローンヤクザの一斉銃撃の数発が巨体にめり込む。 しかし、ニンジャはビクともせず!なんたるビッグ・ニンジャの巨体の誇る筋肉が生み出す非凡なるニンジャ耐久力か! 42 #S57Ninja

2015-07-14 23:27:23
ジュセー @shiroboshi2

「フゥーッ……痒いぜ実際」ニンジャは巨体を揺らしながらミグチへ向き、緩慢なアイサツを繰り出す。「ドーモ、ブロンズゴーレムです」ミグチは高い跳躍から着地、そしてアイサツ。「ドーモ、ブロンズゴーレム=サン。ブラックチューターです」両者の目線がかち合う。 43 #S57Ninja

2015-07-14 23:30:01
ジュセー @shiroboshi2

「ブラックチューター=サンとな。これは、これは。ウカツをしでかした野良ニンジャが、よもやブラックチューター=サンとは」ブロンズゴーレムは哄笑する。「俺が何故派遣されたかはわかるだろう」「ああ、わかっているさ。俺のカタナの錆になりにきた」「……ほざけ!」 44 #S57Ninja

2015-07-14 23:40:21
ジュセー @shiroboshi2

ブロンズゴーレムが叫ぶと同時に、クローンヤクザ六人が完全に揃ったヤクザスラングを言い放ちながら一斉射撃の姿勢をとる。その額に次々刺さっていくスリケン。ナムサン!何が起きたのか!読者の中にニンジャ動体視力の持ち主がおられれば、その方にはわかっただろう。 45 #S57Ninja

2015-07-14 23:44:36
ジュセー @shiroboshi2

ブロンズゴーレムが叫ぶ直前の数秒。ニンジャにとってはあまりに長いその時間の中でミグチは懐からスリケンを取り出し、投擲した。計六枚のスリケンは、六人のクローンヤクザを即死せしめた。彼はその事実を確認する暇もあらば、カタナを構えブロンズゴーレムに突撃する! 46 #S57Ninja

2015-07-14 23:46:42
ジュセー @shiroboshi2

「小癪な!」ブロンズゴーレムはどっしりとビッグ・カラテを構え迎え撃つ。「イヤーッ!」ミグチのカタナ!「イヤーッ!」ブロンズゴーレムは防御の姿勢を取る。カタナが弾かれる!「イヤーッ!」休む間も無くミグチのケリ・キック!「イヤーッ!」防御! 47 #S57Ninja

2015-07-14 23:48:57
ジュセー @shiroboshi2

「イヤーッ!」ブロンズゴーレムは防御を解き、ビッグ・カラテを打ち出す!「ノロマが!」ミグチはこれを楽々と回避。ブロンズゴーレムの背面へ即座に回り込み、「イヤーッ!」カタナを突き出す!「グワーッ!」ブロンズゴーレムの背へカタナが深々と突き刺さる! 48 #S57Ninja

2015-07-14 23:52:10
ジュセー @shiroboshi2

「小癪!」ブロンズゴーレムはカタナの刺さった背に力を込める。カタナはブロンズゴーレムを貫き通すことなく、中途で止まる。背骨にすら到達ならず。引き抜くのは困難。「フハハ!無駄な足掻きはやめよブラックチュ」「イヤーッ!」ミグチの飛び蹴り!「グワーッ!?」 49 #S57Ninja

2015-07-14 23:55:31