ペイルホース死す! #5(実況なし)

ダイハードテイルズ出版局・本兌有によるツイッター連載小説"ペイルホース死す!"より @diehardtalesによる#5のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/783878 #2 http://togetter.com/li/785219 #3 http://togetter.com/li/791349 続きを読む
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ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

黒玉で装飾された白鋼の回転式拳銃は、少年にはおよそ不釣り合いだ。少年がザラカの軽蔑の眼差しを意識しながら弾丸の再装填を行ううち、通路角から白磁の犬が飛び出し、彼らに向かって激しく吠えた。「幸先よし」ザラカが腕を組んで言った。犬は跳ね、壁を蹴ってキャプテン・デスに襲いかかる。34

2015-08-01 14:45:14
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少年は襲いかかる白磁の犬に慌てて左の銃を向ける。銀河に悪名高き凶賊の長が愛用した魔銃は持ち主の鼓動と筋肉の動きを読み取り、同調し、大きくそれた照準を修正する。彼が後ろに倒れながら引き金を引くと、顔の前で白磁の犬の頭部が爆ぜて飛んだ。ザラカは鼻を鳴らす。近づいてくる複数の足音。35

2015-08-01 14:49:14
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犬は城内を巡回する生きた警報装置だ。すぐさま、付近の兵士が駆けつけてくる。キャプテン・デスは今度こそ再装填を済ませる。ザラカは腕組みしたまま微動だにしない。「その銃はこの太陽系の産ではない。あの忌まわしき男が愛したのも道理よ。宝の持ち腐れだ」「今はぼくのものだ」「文化破壊だ」36

2015-08-01 15:00:42
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大勢の足音が曲がり角際まで押し寄せ、ピタリと止まった。今度は犬ではなく、拳大のガラス球が転がってきた。少年は反射的に手をかざした。ザラカは腕組みしたまま床を蹴り、少年の脇を通り過ぎ、そのガラス球を稲妻の如き速さで蹴り返した。「な……」「嘘……」どよめきは爆発音に掻き消される。37

2015-08-01 15:04:53
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KBAM!閃光が晴れ、音の残響が磨かれた宮殿の壁を震わせる中、ザラカは怯んだ敵兵の群れの中へ滑り込んだ。「撃て!」「何だこいつの……」「アーッ!」「助け……」彼らは死ぬ前に叫び声をひとつ発するのがやっとだ。ザラカは青の装飾を身に着けた兵士六人をまたたく間に蹴り殺した。38

2015-08-01 15:10:55
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キャプテン・デスは我に返り、ザラカを追って奥へ走った。そして凄惨な殺戮の痕に佇むザラカに慄いた。竜人はやや腰を落とし、前方の広間に続々と集まる青の兵を見据えた。「狙え!」「たった二人だ!」光弓。彼らの兵装は光だ。宮殿を弾薬や火の煤で汚すことはまかりならぬ。39

2015-08-01 15:14:59
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「ぬうう、うう」青兵のしんがりで、身を伏せていた歪な巨兵が身をもたげた。頭は並の人間と変わらぬが、首から下は五倍大きく、 六つの乳房を揺らし、腰には青い絹の腰布ひとつ。自然の産物ではない。それは地獄のような肉体の化身。双子王の片割れである〈東の白夜〉の肉体信仰概念の顕示だ。40

2015-08-01 15:29:20
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「貴様らは……」青兵が誰何する。だが言葉は続かなかった。ザラカが床を蹴り、舞った。最前列の者達の四肢が引きちぎれながら飛び、宮殿広間を鮮血が汚した。彼らはがむしゃらに光弓を撃つが、互いを溶かして殺すばかりだった。ザラカの舞いはおぼろであり、つねに四つ五つの残像を残した。41

2015-08-01 15:36:16
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キャプテン・デスはザラカの舞いを前にして、ほとんどわけもわからず、二丁の拳銃で援護の射撃を行った。殺戮の竜巻が少年の恐怖を夢じみてぼんやりと現実感のないものに変えていた。白鋼の銃は狙いを助け、少年が殺人することを助けた。少年は撃ち続け、弾丸を再装填し、また撃ち続けた。 42

2015-08-01 15:40:09
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「あああ!」巨兵がザラカに濡れた岩のような拳を叩きつけた。ザラカはこの時初めて両手を用いた。手と手が円を描き、真正面から拳を受けた。ザラカは衝撃に押され、もはや生者まばらな広間を後ろに滑った。彼はヒュルルと音を立て、白い煙の筋を吐いた。「ああああ!」巨兵が逆の手を振り上げた。43

2015-08-01 15:44:42

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キャプテン・デスはザラカの舞いを前にして、ほとんどわけもわからず、二丁の拳銃で援護の射撃を行った。殺戮の竜巻が少年の恐怖を夢じみてぼんやりと現実感のないものに変えていた。白鋼の銃は狙いを助け、少年が殺人することを助けた。少年は撃ち続け、弾丸を再装填し、また撃ち続けた。 42

2015-08-03 22:36:59
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「あああ!」巨兵がザラカに濡れた岩のような拳を叩きつけた。ザラカはこの時初めて両手を用いた。手と手が円を描き、真正面から拳を受けた。ザラカは衝撃に押され、もはや生者まばらな広間を後ろに滑った。彼はヒュルルと音を立て、白い煙の筋を吐いた。「ああああ!」巨兵が逆の手を振り上げた。43

2015-08-03 22:37:07
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BLAMBLAM!キャプテン・デスは銃を動かし、巨兵の腕を撃った。巨兵はバランスを崩し、ザラカに向けていた濁った眼をキャプテン・デスに動かす。残る青兵がザラカめがけ果敢に向かってゆく。光弓から熱線を放つ。巨兵はキャプテン・デスに、振り上げた拳を打ち下ろした。竜人は舌打ちした。44

2015-08-03 22:43:09
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「う」「あ」「が、」竜人の三度の踏み込みで三人の青兵が宙に跳ね上げられた。その者達は致命的部位に掌打による損傷を受けており、手足をばたつかせて血泡を散らした。ザラカは斜めに跳んだ。そしてキャプテン・デスを狙った腕を横から蹴りつけた。KRASH!巨兵の拳が柱を砕いた。 45

2015-08-03 22:46:32
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「黙って邪魔にならぬようにしておれ!」傍らに着地したザラカはキャプテン・デスを睨んだ。「白兵戦にはリズムの組み立てというものがある」「自分の身は自分で守らないといけないんだろ」少年は言い返した。「ぼくも必死なんだ。それとも、ぼくを守ってくれるのか」「減らず口を……」46

2015-08-03 22:49:29
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「あああああ!」巨兵が吠えた。柱にぶつけた腕で再びキャプテン・デスをめがける。ザラカは少年の横に滑るように動き、巨大な腕に肘打ちを叩きつけ、弾き返した。「あああああ!」キャプテン・デスは息を呑み、両手の銃で巨兵の濁った両目を狙った。BBLAMNN!「ああああ!」両目が爆ぜた。47

2015-08-03 22:54:21
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

巨兵は大木じみて後ろへ倒れ込み、2、3人の青兵を巻き添えにした。既にザラカはクルクルと回転しながら跳躍していた。竜人は揃えた両足を鞭のように繰り出して巨兵の脳天に着地。頭蓋骨と脳とを踏み砕いた。残る青兵は未だ抵抗を止めなかったが、キャプテン・デスは機械のようにそれらを殺した。48

2015-08-03 22:57:58
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「上だ」少年は広間の螺旋階段を駆け上がる。ザラカは無言で続く。回廊を走り進むと、大理石の床の夥しい血を拭き清める緑衣の侍女が二人。青ざめた馬の襲撃と無関係に、<夕闇>の緑兵と<白夜>の青兵が相争った痕だ。「あれは?」ザラカが訊いた。「違う」少年は答えた。侍女が彼らに気づいた。49

2015-08-03 23:05:18
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「待ッ」キャプテン・デスは反射的にザラカを止めようとした。侍女が叫び声をあげかけたが、その時すでにザラカは至り、首骨を折って殺してしまった。もう一人の侍女の悲鳴はやはり音となる直前に、ザラカの無慈悲な回し蹴りによって断たれた。「なんてことを。兵でもないのに」「警報機と同じだ」50

2015-08-03 23:08:36
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「それは……」「それは?」ザラカはキャプテン・デスを見、肩をすくめ、首を傾げてみせる。「それは?」「……いや。それでいい」「時間の無駄だ」ザラカは促す。彼が先導することはない。キャプテン・デスは死体から目をそらし、回廊沿いの扉に手をかける。グローブの磁気が施錠機構を破壊する。51

2015-08-03 23:15:51
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

長方形の部屋には無数の絵画と陶磁器が規則正しく飾られている。それらを吟味する時間は無いし、少年にはその金銭的価値をはかる素地もない。「双子の王が戯れに買い集めた奴隷を横取りし、それで?」ザラカが不意に尋ねた。「興味があるのか」少年は呟いた。「それはそうだ」と竜。 52

2015-08-03 23:30:59