【ミイラレ!第十話:隠し神のこと】(実況付き)
- RiverInWestern
- 1662
- 0
- 0
- 0
「若旦那のご両親には、このことはお伝えになるので?」「……ことが長引くようならな。あまり心配はかけたくないんじゃが」「ごもっともで。……おや?」巡は不意に目を細める。「僧正坊殿。その肩についている髪の毛はなんです?」「なに?」天狗は狼狽し、己の肩を払った。10 #4215tk
2015-08-02 15:02:02床に落ちたのは、一本の髪の毛。色こそながれと同じ黒色。しかし長さが明らかに違う。長すぎるのだ。「しまった」ながれが舌打ちする。「儂としたことが気づかなんだ!小雨め……!」そして首を傾げる巡に向き直った。「御伽よ、すまんが頼まれてくれい。厄介者がやってきおる!」11 #4215tk
2015-08-02 15:04:12「ははあ、厄介者?」巡が怪訝な顔で首を傾げる。今ひとつ事情を把握していないのだ。「それはその……髪の毛の主という判断でよろしいので?」床に落ちた黒い長髪に目をやる。それにしても恐ろしく長い。下手をしたら、小柄な天狗の身長を超えるのではないだろうか。12 #4215tk
2015-08-02 15:06:03「そうじゃ」ながれはやきもきした様子で手を組む。「向こうを発つときにつけられていたとなると、間違いなく今の会話も聞かれておる。であれば彼奴のこと、すでにこちらに向かい始めておるに相違なし!」「はあ、相違ありませんか」気のない様子で巡が返事をする。13 #4215tk
2015-08-02 15:09:06目を怒らせるながれの前で、巡はひらひらと手を動かした。すると宙に浮く小蜘蛛が出現。「その厄介なお方とやらがまっさきに向かうのは?」「学舎じゃろうな。なにより四季坊のおるところに行くはずじゃ」「なるほど」巡は気怠げに手を振る。小蜘蛛がふわりと飛び、消えた。14 #4215tk
2015-08-02 15:12:06「ま、ひとまず草江の嬢ちゃんに知らせておくとしましょう。あとは退魔師どもの手腕に任せるということで」「退魔師でどうにかできるやつではないぞ、小雨は」ながれの指摘にも、巡は肩を竦めるばかり。「ながれ様が仰るなら相当の怪異なんでしょうねえ」ぬけぬけと言う。15 #4215tk
2015-08-02 15:15:05「あたしはこう見えて荒事が苦手でして。そういう怪異の前に準備もなしに出るのは辞退させていただきます」ながれが眉間にしわを寄せる。自分より格下ではあろうが、この鬼女は相当に古く、強力な怪異だ。それがわざわざ本性を隠し四季に近づいている。目的が読めぬ。16 #4215tk
2015-08-02 15:18:05四季はあのとおり、少し怪異を信用しすぎるきらいがある。幼少期に自分たちが構いすぎたのが原因とはいえ……彼に近づいて悪事に利用するものもいないとは限らない。故に、御節介と思われようと側にいてやる必要がある。鋭い視線で巡を射抜きながら、ながれはそう結論づけた。17 #4215tk
2015-08-02 15:21:42授業も終わり、昼休み。「四季、お昼一緒に食べない?」席を立とうとした四季の元にやってきた怜は、開口一番そう言った。「んー、そうしたいけど……まずお昼買ってこないといけないからさ」「買ってくる?お弁当、持ってきてるんじゃないの?」四季は苦笑した。19 #4215tk
2015-08-02 15:24:13「巡さんにそこまで頼むわけにもいかないじゃない……それに、高校生になったら一回くらい購買って利用してみたかったんだ」「そっか」怜は少し首を傾げ、何事か考えていた。ややあってから頷く。「じゃあ行こう。私もついてくから」「え?でも」「いくから」20 #4215tk
2015-08-02 15:27:12有無を言わせぬ語調に、四季は黙って頷いた。何名かのクラスメイトの好奇の視線を浴びながら教室を出る。購買部があるのは校舎の一階。「混んでるかなあ」「かもね」他愛のない会話をしながら階段へ。と、そこで四季は足を止めた。「どうしたの?」怜が不思議そうに振り返る。21 #4215tk
2015-08-02 15:30:16「いや」四季は曖昧な返事をする。なにか視線を感じた気がしたのだが。「なんでもない。行こっか……あ、待って!」「今度はなに?」歩き始めようとした怜が苛立たしげな声とともに再び振り向く。「ごめん!でもさ、怜。肩に」「肩?」彼女が首を傾げる。22 #4215tk
2015-08-02 15:33:03