黄昏町(柊)十二日目

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@hiiragi_r_t_d

【十二日目】 【魂9/力5/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1)、石肌(火耐性、力+1) #hollytk

2015-08-06 22:52:12
@hiiragi_r_t_d

「おはようございます」 清々しい目覚めだ。夕方だが。 予想通り、石化すると安心して眠れる。 「さて、と」 とりあえず移動しよう。[王]のいた役場(だったのであろう建物)がどちらの方角にあるのかも分からないのでは、警告のしようがない。 01 #hollytk

2015-08-06 22:52:35
@hiiragi_r_t_d

とりあえず適当に歩き始めた私は、程なくしてちょうどいい物を見つけた。 「おおー、これは高い」 大きな固定型のタワークレーン。ジグザグに組まれた鉄骨の塊が、夕焼け空に錆色の威容を誇っていた。 これに登れば、かなり遠くまで見渡せるのではないだろうか? 02 #hollytk

2015-08-06 22:53:14
@hiiragi_r_t_d

靴を脱いで手足を硬化させる。この異形を使うと靴より素肌の方が丈夫なのだ。 ガシ、ガシ、ガシ、と確実に。 時々座って休憩を取りつつも、私はクレーンの先端に到達した。 03 #hollytk

2015-08-06 22:55:03
@hiiragi_r_t_d

「おお、いい眺めですね」 周囲に高い建物が無いこともあって、かなり遠くまで見渡せる。 西の果て、視界ギリギリの場所に高いバリケードに囲まれた建物。あれが恐らく[王]の国だろう。 その少し手前には小さな山。あそこには綺麗な貯水池がある。 04 #hollytk

2015-08-06 22:56:20
@hiiragi_r_t_d

目に付いた特徴的な建物や地形を数箇所手帳に書き込んだ後も、私はしばらくそこで景色を眺めていた。 が、いつまでもこうしている訳にもいかない。誰かにこの情報を伝えなければ。 05 #hollytk

2015-08-06 22:56:48
@hiiragi_r_t_d

「降りるか……」 長い長い梯子状のクレーンをもう一度降りるのは億劫だ。私は下を見る。そして大理石の輝きを放つ両手を。 …………これ、飛び降りても大丈夫なんじゃないかな…………… 06 #hollytk

2015-08-06 22:57:09
@hiiragi_r_t_d

これは異形の強度テスト。決して過信している訳ではない。むしろ異形の性能を客観的に見るために必要な行為だ。 もし死んだとしても高所からの墜落死についての情報が得られるし、あわよくば羽や、それに類する異形が得られるかもしれない。 07 #hollytk

2015-08-06 22:58:06
@hiiragi_r_t_d

私は自分に言い訳しながら背中を丸め、手足を内側に畳む。 三角座りで膝を抱えたような格好になった私は、全身を硬化させていく。 そして私は、意を決して飛び降りた。 08 #hollytk

2015-08-06 22:59:06
@hiiragi_r_t_d

一つの岩塊になることで転がって衝撃を逃がすという試みだったのだが、どうやら失策だったらしい。 眼前に猛スピードで近付く地面を見て、私は死を覚悟する。 このまま垂直落下しては、衝撃を逃せない。 09 #hollytk

2015-08-06 22:59:36
@hiiragi_r_t_d

そしてアスファルトの路面に、大穴が穿たれた。 水道管が折れたらしく、高い水柱が吹き上がる。 路面は落下地点を中心に半径4m近くが陥没し、辺り一面の路面に入ったヒビが衝撃の大きさを物語っていた。 10 #hollytk

2015-08-06 23:00:05
@hiiragi_r_t_d

その水煙と粉塵の中、穴から這い上がる者がいる。 「あー……死ぬかと思った……」 私だ。前髪の一部が砕け散っている。 妙な髪型になってしまったが生きていたから成功だ。姿勢を改善すれば前髪を砕く必要も無いだろう。 11 #hollytk

2015-08-06 23:01:09
@hiiragi_r_t_d

私は硬化を解く。ヒビの入っていた髪がバッサリ切れ、パンクな髪型になっているであろう事は想像に難くない。 「これは最後の手段だな……」 あまり普段の移動でホイホイ使いたい手段ではない。 懐の手帳の無事を確認した私は足早にそこを立ち去った。 12 #hollytk

2015-08-06 23:02:06
@hiiragi_r_t_d

「あ、爪割れてる」 右手の人差し指の爪が折れていた。 歩きながらあちこち確認すると鱗も数枚ヒビが入っている。 「………次は足から落ちよう」 そう呟いて前に向き直ると、二つ先の角を誰かが曲がっていった。 13 #hollytk

2015-08-06 23:03:06
@hiiragi_r_t_d

「あれは…………?」 私は追いかける。人間なら用はないが異形持ちなら警告をさっそく伝えねば。 追いかけて角を曲がった先には、誰もいなかった。 「って、見失う訳ないでしょう。そこの電柱の後ろに隠れている人、出てきて下さい。」 14 #hollytk

2015-08-06 23:04:01
@hiiragi_r_t_d

「うわっ!バレた!」 電柱の後ろから少年が出てきた。良かった………これでいなかったら恥ずかしい。 少年は私に向かって駆け込んでくるやいなや迷わず土下座した。 額を地面に擦り付けて懇願する。 「他のひとの居場所を教えるから僕は食べないで下さい!」 15 #hollytk

2015-08-06 23:05:02
@hiiragi_r_t_d

「いや食べないよ……私は人肉を食べる趣味は無いんだ」 「趣味じゃないけど人肉しか栄養にできないから仕方なく人間を食べるんでしょ!僕はやせてて食べても栄養にならないよ!だから助けて助けて助けて助けて!」 土下座したまま訳のわからないことを叫ぶ少年。 16 #hollytk

2015-08-06 23:06:01
@hiiragi_r_t_d

「って………君、その耳は……」 少年の頭には猫のような耳が二つ、ヒョコリと顔を出していた。 「はい!僕は異形持ちです!だからいじめられてておいしくないです!」 もはや因果関係すら定かではない… 「だから食べないって……」 17 #hollytk

2015-08-06 23:06:39
@hiiragi_r_t_d

「ていうか、君さっきいじめられてるって言ったね」 「はい!」 「つまり君は人間と住んでるのかい?」 「はい!その通りです!」 「とりあえず土下座やめようか」 「はい!」 少年は勢いよく立ち上がると今度は私の後ろに回り、肩を揉み始めた。 18 #hollytk

2015-08-06 23:07:09
@hiiragi_r_t_d

私はメモ帳とペンを取り出して少年に尋ねた。 「君の住んでいる所について聞かせて」 「はい!僕はここから東にすこし行った民家で、七人で暮らしています!」 「異形は何人?」 「えっと、ちっちゃい羽のある姉さん、犬の鼻の男の子、僕の三人です!」 19 #hollytk

2015-08-06 23:07:35
@hiiragi_r_t_d

「羽?」 飛べるのなら、少し羨ましい。 「はい!飛べないですけど綺麗な音が鳴らせます!」 なんだ、飛べないのか。 音が鳴るという事はスズムシやコオロギのような羽なのだろうか? 「君達は普段何をしているんだい?」 20 #hollytk

2015-08-06 23:08:07
@hiiragi_r_t_d

「はい!羽の子は家の中にいます!鼻の子は外で見張り番、耳の子…僕はこうやって町を歩き回って、食べ物とかを持って帰ってます!」 「あとの四人は?」 なんとなく想像はつくが、一応聞いておく。 21 #hollytk

2015-08-06 23:08:37
@hiiragi_r_t_d

「はい!いつも家の中で羽の子と遊んだりお酒を飲んだりしてます!」 やっぱり。 「その四人も一緒に探してくれたら良いのにね」 「兄ちゃん達は用心棒だから、普段は休まないと僕達を守れないんです!」 私はその話を聞いて、なんとなくイラッと来たので、 22 #hollytk

2015-08-06 23:09:02
@hiiragi_r_t_d

少し怖がらせてやる事にした。 「へえ、じゃあ私が今ここで君を襲っても守ってくれるのかい?」 右手の口を大きく広げ、少年の首の後ろに置く。 鋭い牙が柔らかい肌に触れ、プツリ、プツリと血の珠が浮かぶ。 23 #hollytk

2015-08-06 23:09:37
@hiiragi_r_t_d

「当然だろう?一撃でドタマ吹っ飛ばしてやるよ」 突然曲がり角から男が現れ、物騒な事を言い出した。 「兄ちゃん!」 ふむ。あれか。私は右手を少年から離す。 鍛え上げた体に恐ろしげなタトゥー。右手には金属バット。 24 #hollytk

2015-08-06 23:10:05