- ryukaikurama
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高速道路を走り続けていると、またもや元艦娘の成れの果てを発見した金剛は艤装のナイフで通り魔のように切りつけて血の池を作り、緑色の看板に見えたマークを確認して小さく息を吐いてから呟いた。 「少しだけ、休憩しますかネー」1
2015-08-08 18:54:34金剛はハンドルを傾けて左にある細い道に逸れてから開けたスペースに入り、辺りを見回しながら目的のモノを発見する。 道なりにあったガソリンスタンドの前に近づき、重く響き渡るエンジン音をゆっくりと静めると、タイヤがアスファルトをキュッ……と擦りながら動きを止めた。2
2015-08-08 18:55:30バイクから降りた金剛は額に浮かんだ大粒の汗を袖で拭いながらサングラスを外し、燃料タンクに給油ノズルを差し込んでからタッチパネルを見る。 『お金を入れて下さい』 「今じゃ、これくらいしか使い道はないデスネー」3
2015-08-08 18:56:19ポケットから財布を取り出した金剛は一枚の紙幣を投入し、OKボタンを押してから給油ノズルのレバーを引いた。 燃料タンクに勢いよくガソリンが入っていくのを感じながらも、金剛の腹部から「ぐぅぅ……」と小さな情けない音が鳴り響く。4
2015-08-08 18:56:50「残念ながら燃料とは別腹なんですよネー……」 少しばかり辛そうな表情を浮かべた金剛だが、心の中では案外嫌とは思っていない。 むしろ、燃料を補充した時点で満腹だと感じてしまったら、自分はもう艦娘ではないと認識してしまうかもしれないと不安になってしまう節さえある。5
2015-08-08 18:57:25「あっちの方に、何か残っていると良いのデスガ……」 そう呟いた金剛は近くにある建物を眺めながら給油を終え、燃料タンクの蓋をしっかりと閉じてからノズルを元の位置に戻した。 タッチパネルの横から出てきたレシートを取ってお釣りを精算した金剛は、バイクに跨がりハンドルを握る。6
2015-08-08 18:57:55金剛は片足を地面につけながら車体を大きく傾け、ハンドルを内側に切りながらアクセルを思いっきり捻る。 エンジンの回転数を高く保ちながら一気にクラッチを解放して後輪が高速回転をすると、タイヤが悲鳴をあげて地面に黒い跡をつけながら180度ターンを決めた。7
2015-08-08 18:58:23ほんの少しつり上げた口元が金剛の気持ちを現していたが、周りにギャラリーはおらず肩を竦めてしまう。 妹たちや提督がこの場に居たのならば……と考えてしまった金剛は頭を振り、気持ちを切替える為に両手で左右の頬を軽く叩いてから建物に向かってバイクを走らせた。8
2015-08-08 18:58:47「辺りに気配は……無いみたいデスネー……」 建物の前にやってきた金剛は、右耳に手を当てて音を探るような仕草をしながら建物全体を見回していた。 視界には道路上に居た元艦娘のような人影は見当たらないが、金剛には目よりも信頼できる機能を艤装に備えている。9
2015-08-08 18:59:20「電探に反応も無いデスカラ、最低限で大丈夫デショウ」 バイクから降りた金剛はシートを軽く撫でてから建物の入口であるガラス扉へと向かう。 大きなヒビがいくつも入った扉を手でゆっくりと押しながら、注意深く辺りを確認しつつ内部の捜索を開始した。10
2015-08-08 18:59:42天井に取り付けてある蛍光灯の多くは破損しており、照明の効果を発揮していない。 いくつかはまだ光っているものの、グロー球が切れているのかチカチカと点滅を繰り返して眼に悪そうだった。11
2015-08-08 19:00:02「熱感知モードを……ONデスネー」 金剛が小さく呟きながらサングラスのブリッジ部分を人差し指でクイッと上げると、レンズ部分にパソコンで表示されるウインドウのようなモノがいくつか表示され、小さな電子音が何度か鳴った。12
2015-08-08 19:00:22視界には温度によって区別された画像が重ねられ、周囲の状況が分かり易くなる。 金剛はぐるりと身体を360度回転しながらチェックを行い、危険がないと判断してから肩の力を抜いて小さく息を吐いた。13
2015-08-08 19:00:45「さて、それじゃあ食料がないか探してみますネー」 天井付近に取りつけられている土産物売り場の看板を見つけた金剛は笑みを浮かべ、ゆっくりとした足取りでそちらへと向かう。 途中にある区切りの為の扉を開いてからもう一度熱感知を使い、安全を確認してから捜索する。14
2015-08-08 19:01:14売り場にあるテーブルの上には値札があるが、肝心の売り物は見当たらない。 「先客がすでに、持ち去った後のようですネー……」 サービスエリア独特のまんじゅうの名称が書かれている文字を見た金剛のお腹は悲鳴をあげ、恥ずかしげな表情を浮かべていた。15
2015-08-08 19:09:33「腹が減ってはなんとやら……と言いますけどネー」 近くにあった薄汚れた人形を手に取って眺めてから元の場所に戻し、売り場を隅々まで調べていく。 しかし食べられそうな物は全く見つからず、落胆した表情を浮かべてため息を吐こうとしたところでレジの後ろにある扉を見つけた。16
2015-08-08 19:02:13「フム……。鍵がかかってますますケド……」 艦娘である金剛にはそれはさしたる問題ではないと、ノブを力任せに引っ張って無理矢理こじ開けた。 多少大きな音が鳴ったものの、辺りに元艦娘が居る訳でもないので大丈夫だろうと奥へ入る。17
2015-08-08 19:02:39「どうやらここは、事務所みたいですネー」 事務机に背丈より少し大きなロッカーが部屋の隅に置かれ、真ん中には大きめのテーブルといくつかの椅子があった。 テーブルの上に封が開けられた梅味のガムがあり、中身を見ると数枚程残っているようだ。18
2015-08-08 19:03:06「お腹の足しにはなりませんケド、ないよりはマシデース」 ガムをポケットにねじ込んだ金剛は他に何かないかと机やロッカーの中を物色する。 鍵を扉と同じように力任せにこじ開けていくつかの飴玉をゲットした金剛は、少し呆れたような表情をしながら部屋を後にした。19
2015-08-08 19:03:37「もう少しお腹が膨れるモノが欲しいネー……」 土産物売り場を後にした金剛は再び天井に取り付けてある看板に眼をやり、フードコーナーの文字を見つけてから足を向けた。 続く 20
2015-08-08 19:04:14深海感染 -ONE- 第一章 その2 『サービスエリア』 完 ご意見ご感想があれば宜しくお願いいたします。
2015-08-08 19:04:30