【邪悪の樹――三ツ牙】第一戦闘フェイズ――第二の樹

火の町
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【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

【第一戦闘フェイズ——第二の樹】 『引き裂く者』より『残酷(@toe_ap)』 『断ち切る者』より『愚鈍(@ToeIlith)』 火が燻っている。小さな火が燻り続けている。崩れ落ちた瓦礫の山は、此処が町だった名残か。……人がいた気配は、微かに感じられる。 #邪悪の樹

2015-08-06 20:10:11
マリー・ルモワーニュ @btl_az

硬質な地面のジャリ、とした感覚に思わず顔を顰めた。 燻る火。崩れ落ちた瓦礫の山は何も面白げなものなど映さない。 「館の外がこんなものなら、別に外になど出る必要はないかもな…」 独りごちた言葉は誰に向けるまでもない。火の中に消えていく。

2015-08-07 18:22:00
マリー・ルモワーニュ @btl_az

当てもなく、とはいえ真っ直ぐ先を急ぐ。 ――誰かいる、と。 微かな気配が、心ざわつかせるその気持ち悪さに更に顔を顰めた。

2015-08-07 18:22:03
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

扉の向こうは室内ではなかった。屋敷の中しか知らない彼は焼け崩れた街である、とは認識できなかった。少なくとも、今の彼には。 …彼はこの光景を知っている。けれど、特に何かしらの感情を抱いたりなどはしない。今の彼にその記憶はないからだ。

2015-08-07 21:07:05
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

…そして。彼がこの先記憶を取り戻したとしてもこの光景に関する記憶は戻らないだろう。何故ならその記憶は、あの屋敷に来るよりもずっと前に失われた記憶であるからだ。 …もう戻ることのない、隣にいた誰かだけが覚えている記憶。

2015-08-07 21:07:58
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

彼は眼前に広がる焼け跡と瓦礫とを醒めた目で一瞥して、残り火の爆ぜる音の中に、別の音が混ざるのを聞いた。音の方を見遣る。 黒っぽい何かが動いている。こちらに来る。銀が含まれているのか、動くたびにちらちらと暗い火の色が揺らいでいる。あれは、何なのか。

2015-08-07 21:08:13
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

…この光景が、何かしらの要因があって作り出されるものだと彼が知っていたのなら、ここを焼いたのは貴方か、などと聞いたかもしれないが。この光景に原因があるなんて思い当たりもしなかったので、何かがこちらにくる、それをただ眺めるばかり。

2015-08-07 21:08:27
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

ひとがたをしているとようやく認識した頃に、手紙の内容を思い出した。勝利をと。あれに勝てば、何かを得られるのか。曖昧な感覚の、その答えを。 ひとがたの方を向く。見据えるような眺めるような確かなのか曖昧なのか、といった視線を向けて、彼はそれが来るのを待った。

2015-08-07 21:10:52
マリー・ルモワーニュ @btl_az

視界に、ヒトを捕えた。 羽織る白衣に火光のちらつきが反射している様。 その容は己や仲間達と似れど、先の白い赤の髪も、薄青の瞳も、己の知る者では―――いや、 「……お前は…」 眉を顰めた。見覚えがあった。 館にある肖像画、その中の一つ。間違いない。

2015-08-07 22:03:47
マリー・ルモワーニュ @btl_az

歩む足を止める。しっかりとその姿が目に見ゆる場所。 「人間…にしては私の知る形と少し違うな。だがお前は二つの脚で立ち、風貌は人間に似すぎている。お前は一体何者だ」 問えど答えが戻ってくることには対して期待なんぞしてはいない。 口がきけるかも、言葉が分かるのかも分からぬのだから。

2015-08-07 22:04:03
マリー・ルモワーニュ @btl_az

「まぁなんだっていい、私はすぐ戻らねばならんのだ」 返答を聴かず、二の句を繋げる。 早々に遊戯は仕舞にして、館に戻り菓子を作らなければならない。 勝てばいい…つまり殺してしまえばいい。手加減する必要がないのなら其方のほうが余程楽。

2015-08-07 22:04:17
マリー・ルモワーニュ @btl_az

知らぬモノなら、情も沸かぬ。 ジャリ、とその場で地を踏み鳴らす。舞い散る羽根。 「――堕えろ」 その声と共に、羽根の刃が立ちはだかる者へと一直線に降り注ぐ。

2015-08-07 22:04:26
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

何故気付かなかったのか。どれ程の時間それを眺めていたのかなど考えるのも億劫なくらいに毎日毎日毎日毎日眺め続けていた、あの肖像画のうちの一枚に、よく似た顔があったと。僅かに目を見張っり、それから問いかける声に応える前に飛来したそれへ対応する。

2015-08-07 22:45:40
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

数歩跳び下がりながら羽織っていた白衣を飛来する羽根を巻き込むように脱ぎ捨てた。羽根が白衣に刺さる音を聴きながら同時、『転換』。白衣で防ぎきれなかった部分は身体を鉄にして。軽い音を立てて羽根が足元に落ちるのに構わず、目を眇め改めてひとがたを見る。

2015-08-07 22:45:54
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

何者かと問われた。 なんだっていいと切り捨てられた。 戻らねばならぬと零した声も聞き取れた。 「…それは、」 薄青の目が剣呑さを帯びる。 「すべて、」 地面を踏み躙るよう踏み締めて、 「――こちらの、台詞だ!」 蹴り上げるように駆け出した。胸元、鎖の先で歪なリングが小さく鳴る。

2015-08-07 22:47:13
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

…元々、そう気性が荒いわけではない彼だ。勝利をと手紙にはあったけれどその方法に関しては漠然としていた。けれど、危害を加えられたのなら話は別だ。…彼の性質か、あるいは染み付いた習慣か。攻撃と思われる行為を働かれたのなら、容赦も何もなく、殺すまでのこと。

2015-08-07 22:47:39
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

…遠いいつか。隣にいた誰かを××××為に、自然と身についたものだった。身体に染み付いたそれらの理由を今はまだ彼は知らない。けれど身体がそう動くのなら、それに従うまでのこと。

2015-08-07 22:48:00
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

下がった分も含め一気に距離を詰め、何もなければそのままそれの寸前で停止、腰を落とし『転換』し錐のようにした拳を振り抜く。狙うは鳩尾。避けなければそのまま錐は胴を貫くだろう。

2015-08-07 22:48:09
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

…僅かに。感覚が薄くなっていくのには、彼はまだ気付かない。

2015-08-07 22:49:40
マリー・ルモワーニュ @btl_az

聞き慣れた声より幾分低い聲。 「奇怪な」 刺さることの無い肌は硬化したのか元々なのか。 それはそれで厄介だと思考した脳は一時停止。 詰め寄られ反射的に後ろに下がったものの、貫かんと振りぬかれたそれは肌を掠めた。

2015-08-07 23:23:00
マリー・ルモワーニュ @btl_az

「ッ――…それがお前の罪か」 片足を軸にその場で舞えば、再び舞い散る黒い羽根。 産み出された幾多の羽根は、傷つけるためではなく視界を奪う為。 そしてもう一方に向けた数枚は、辺りに燃ゆる脆い瓦礫を崩す為。

2015-08-07 23:23:09
マリー・ルモワーニュ @btl_az

黒い視界に乗じて、崩れる音に乗じて、それの背後をとり――気付くことが、避けることがなければそのままその背に幾つかの羽根の刃が突き刺さるだろう。

2015-08-07 23:23:17
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

振り抜いた錐が手応えと呼ぶには僅かな感覚を残し躱される。一撃で仕留めるつもりだった、その苛立ちはしかし表すことなく無表情。そのまま視界を覆う勢いのない羽根の群れへ飛び込むように、振り抜いた拳について行くように、地面を蹴り上げ錐にしていた腕を『転換』。

2015-08-08 00:16:23
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

両手で着地し回し蹴る瞬間、両脚を『転換』し両刃の剣へ。もろに食らったなら、深い裂傷を負うだろう。 奇怪など言われるまでもない(――聞き飽きた)。 罪など知らない(――いつからかこれは己に備わっていた)。

2015-08-08 00:17:05
【愚鈍】イーリシォーティータ @ToeIlith

何も知らない。何もわからない。だから来た。専守防衛を気取るではないが、先に攻撃したのはあちら。危害を加える意思を持っているのなら容赦のほどは必要無し、瓦礫の崩れる音を聞く。そんなものに興味はない。先ほどの羽根の群れの意味など知らない。意図など知らない。知る必要性も感じない。

2015-08-08 00:17:27