- treeofevil
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ただ、視界を覆われる前に見た姿に追いすがるように追撃を加えるだけ。 己の身に何が起きようとも、これを殺すまでは関係ない。
2015-08-08 00:17:31…身体を支える両腕の先、両手の感覚が消え失せたことに気付いているけれど。断たれたわけでもないのだから、感覚がなくとも動くのだから。彼がそれに頓着する理由はない。
2015-08-08 00:21:40「ぁ ぐっ…、」 右腕を裂き露わになる肉と滲む鮮血。 抑えども止まらぬ血と痛みに顔を顰めても、敵の姿を視界から逃すことはしない。 「…鈍いな」 感覚が、感情が。動きではなく、何かが。 隠せども、音を鳴らせども焦りも何もない、頑固とした岩のような人形のよな。
2015-08-08 00:47:34しかしこれは一体何だ。全身が武器とでもいうのか。だとしたら近距離は得策ではない。 幸いこの周囲は瓦礫の山だ。妨げるものは幾らでもある。 跳び下がり距離を置く。そのまま瓦礫の街へ。 「――蝕め、墜えろ」 追われることを拒むように、羽根刃の追撃。そのまま瓦礫へと身を隠し奥へ。
2015-08-08 00:47:42…残酷な程、時は待ってはくれやしない。 何れ失われる感覚に、視界に聴覚に大地に空に風に炎に光に――全てを奪われ残る闇に。 その変わらぬ貌は苦痛に、恐怖に歪むのだろうか。
2015-08-08 00:48:17肉の裂ける音と両脚の確かな感覚に、しかし満足するでもなく下がるそれを更に追う為両脚を『転換』し下ろす。ただそれだけをこなす機械仕掛けの人形のよう。 …鈍い、など。言われなくても承知している。 そのまま音の方へ駆ければ遮るように羽根が飛来するから、両腕を鉄に『転換』して打ち落とす。
2015-08-08 01:45:16打ち落とした隙に瓦礫が邪魔でそれの姿が見えなくなるから、目を一瞬眇めて足を『転換』。鉄槌にして蹴り飛ばせば派手な音を立てて瓦礫が吹き飛ぶ。炙り出せればそれで良し、瓦礫の下敷きになるのならまたそれでも構わない。…屍体の確認が面倒ではあるが。
2015-08-08 01:45:27刻一刻と感覚が失せていくのを承知で、しかし一切構うことはない。まだ動くのだから。確かに些か覚束ない。けれど、動かしている感覚がなくてもまだ動いているのだ、何を構う必要があるだろう。
2015-08-08 01:45:31派手な音を背後に、滴る血を残して奥へ奥へと駆けていく。 確かに己の禍罪は効いているはずだというのに、まるでそんなものがないような。 まさに機械。もしこれが本当にそうであるなら非常に分が悪い。 ――焦ってはいけない。時が味方するのは己だ。 蝕むものは確実に。機械も何れ錆びつくもの。
2015-08-08 02:33:43それがこの瓦礫全て粉々になる前だといいのだが。 とはいえ、このまま逃げるだけでは何れ追いつくかもしれないし瓦礫の下敷きになるやもしれない。 「…誤算だったな」 扉を潜る前、これは遊戯だと告げたことが。己の覚悟が足りぬことが。 舌を打った。唇を噛む。双眸を閉じ――開く。
2015-08-08 02:33:53そして次の瞬間には地面を爪弾いて反転。その者に向かい、再び瓦礫が崩された時を見計らい飛び込むだろう。 距離に比例する己の禍罪。ならば、肉薄する程の距離を。 少しの時間、相手が膝をつくそれまでに相手の攻撃を避けきれぬのなら、己は其れまでだったという事。
2015-08-08 02:33:58瓦礫が崩れて舞った灰や散った火の粉が視界を埋めたから、瓦礫を蹴散らしたのは早計だったと鉄槌を足に『転換』しながら思う。 焼けた地面に鮮やかな赤色が点々と残されていて、それが奥へと続いているのを見てとって、瓦礫で潰れてはいなかったと知る。それなら追うだけだ。
2015-08-08 11:22:12周囲を舞う灰が概ね落ち着くのを待って、白く霞む赤い跡を追う。 …視界が悪いのは、灰がまだ舞っているからだと、彼は己の状態を誤認した。 感覚の朧な足を動かす。地面を踏んでいるという実感が曖昧で、けれど彼は構わず進む。両腕は歩き動いている身体に括り付けられた重石のように揺れている。
2015-08-08 11:22:26そのくせ持ち上げれば動くのだからやはり構わない。だから遅れた。何が。気付くのが。感覚の無さが、腕を持ち上げたときの反応の遅れを惑わせた。 …彼は、相手が何を使い何を行い、その結果として感覚を失わせている、その結果だけに気付いている。
2015-08-08 11:23:43重ねて言うならやたらとばら撒いていたあの羽根に関係があるのかもしれないとも思ってもいるのだが、かといって何をどうすればこうやって感覚が失われていくのかとかそんなことは分からないし、一応毒か何かかとは思ったけれどその場合でも解毒剤などあるのかも不明。
2015-08-08 11:24:21ならばやはり対処法など思い浮かばないので、彼は構わないとした。構わないとするより他にないのだし。 構わないとしたとはいえ、やはり朧に消え失せていく感覚は彼の意思はともかく身体に影響を全く与えていないわけではなくて、やや遅々とした歩みになりながら、白く霞んだ視界で血の跡を追う。
2015-08-08 11:25:06先ほどの蹴りでは、あれはまだ死なないだろう。だってこうやって逃げる余裕があるのだし。反転して、あれはまだ反撃に移ることができるのだろうとも。
2015-08-08 11:25:20…深傷を負い逃げた敵を追いかけて手酷い反撃を貰ったことなど、数え切れないほどあるのだから(…いつか、遠い、いや、然程遠くもないいつかの日々に?)歩みが慎重になるのも当然で。だから尚更彼は己の状態に気付かない、気付けない。自分の足音を始めとする、周囲の音が遠くなっていることにも。
2015-08-08 11:26:31生物とは、例外なく正体不明の未知に怯えるもの。 なんぞ勝手も分からぬ、今まで確かに動いていたものが当たり前でなくなることに一度は絶望するもの。 そうだと、そうであると書物での物語も己の知識でも刷り込まれていた。 だのに、あれはそうではない。
2015-08-08 23:55:05確固として変わらぬ薄青の瞳。まるで心も鉄そのものの様。 化け物――いや、あれはそういうものではない。何か決意めいたものが。 ふるりと頭を振った。まだ戦いの途中だと。余計なことは考えるなと己に言い聞かせて。 そして駆けた。瓦礫の陰から、真っ直ぐと飛び込んだ。
2015-08-08 23:55:15「―――墜えろ!孤独たる深淵に」 伸ばす手は、その者の首を掴むように伸ばされて。 ――やはり己は焦っていたのかもしれない。 こんなことをすれば、相手からの攻撃は避けられないというのに。
2015-08-08 23:55:17彼がこうして執拗に追うその理由は、至極簡単で、けれど彼はこうやって執拗に追うようになったその原因を今はまだ思い出せない。思い出せないけれど身体に染み付いている。だから彼は追う。息の根を止めるまで。首と胴を別つまで。 (だってそうしないと××を×れない)
2015-08-09 14:44:03(その理由も今となってはもう取り戻せないけれどそれでもそうしなければならなくて、) (彼らにそう告げた、彼らは帰ると言っただから理由はそれだけで充分で、) (そうするのが己に残された唯一で××はそれをどう思っていたかなんて知る由もなくてけれどそれでも××なければならなくて、)
2015-08-09 14:44:25思考が乱れる。思考に何かが混ざる。停滞に似て緩やかに流れる屋敷での日々の中、感情を揺らすことがあまりなかった彼は思考が乱れていることにすら気付けない。何かが混ざって思考が乱れていることにすら気付けない。何か、知らないような、知っているような、そんな『何か』に気付かない。
2015-08-09 14:44:51けれど別にそれは何か彼の行動に支障を与えるわけではない。そして乱れた思考の中で思うのは、彼らとの(そして遠いいつかの××との)約束。 (かならずかえるよ) (かえってくるから) (また、これからも)
2015-08-09 14:45:04