![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「明神君に水着を選んで欲しい。」電話越しの彼女の声はとても真剣で、その内容を深く考えず、俺は反射的に「任せてください!君に1番似合う水…水着!?」と言ってしまった。水着…あの下着と変わらない、露出度の高いあの水着を、俺の好みで彼女に…。俺に微笑む笑顔の下の、素肌を想像しかけて、
2015-08-10 13:29:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
全力で頭を振り、携帯電話越しの声に集中する。「…神君!?どうかしたの?」「いえ、問題ありません!えぇ。問題があるとすれば、理性がどこまで持つかという事です。」「理性?」…しまった!!!「こっ、こちらのことです、気にしないでください!それよりも、待ち合わせの日時ですが」
2015-08-10 13:41:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
次の日から、ネットで女性用の水着をリサーチしようとブラウザを開く度に、彼女の首から下の肌を想像しそうになって、ブラウザを閉じて自分を叱咤する。いくら俺が一般的な高校生と同等の、異性に対する本能的な興味があったとしても、それを彼女へ向けるのは言語道断!
2015-08-10 13:56:14![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そうやって、幾日か過ぎた待ち合わせの日。彼女を待たせることがないように、1時間前から駅前で気持ちを落ち着けていると、10分前に小走りで彼女がこちらへ手を振ってやってきた。「待たせちゃったかな?ごめんね、みょ…堅梧くん。」少し恥ずかしそうにはにかみながら、俺の名前を言い直す彼女は、
2015-08-10 14:08:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
確かに俺を好きだと言ってくれて、2人きりの時はできるだけ名前で呼び合おうと約束した。しかし、いざ対面で直接言われると、普段の何倍も彼女が愛おしく思える。「俺はそこまで待っていませんし、待ち合わせ時間は10分後ですよ?緑さん。」…よしっ!完璧に言えた!「…あっ、そうだよね。」
2015-08-10 14:21:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
みるみるうちに、彼女の頬が紅く染まっていく。か、可愛らしい…。「堅梧くんっ!…そんな優しい目でじっと見られたら、私…。」彼女が俺に背を向けてしまった。「すみません、つい見惚れてしまって。」眼鏡のズレを直すと、彼女の荷物をそっと持ち、さりげなく隣へ並ぶ。
2015-08-10 14:34:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
以前の俺なら、他人が入ることを嫌ったパーソナルスペースに、今【彼女】が立っている。過去の俺が知ったら、驚愕するだろう。「まだ本格的な夏ではありませんが、日差しが強くなる前に出発しましょう。」そう言って彼女の手に触れると、遠慮がちに俺の手を握ってくれる。この温度が幸せなのだろう。
2015-08-10 14:44:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
電車で移動して着いた大型ショッピングモールは、俺のリサーチ通りに広いイベントスペースを使って、流行りの水着を販売していた。彼女を見ると、楽しそうにキョロキョロと展示されているマネキンを見ている。「これ可愛い!あっ、でも、こっちも可愛いな!」
2015-08-10 14:52:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「…あっ、ごめんね。今日は堅梧くんに選んでもらうんだよね。どれがいいかな?」俺を見上げて微笑むと、比較的露出度の低い水着のコーナーへと進んでいく。「そうですね…他の男の前に、緑さんの肌を晒すのは許せませんから、こういうのはどうでしょうか?」パレオのついた水着のコーナーを見て、
2015-08-10 15:02:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼女のイメージと合う色の水着を手に取る。俺の手元を覗き込んで水着を見た彼女は、安心したように笑って、「サイズは………うん、大丈夫!試着してくるね!」大事そうに水着を抱えて、出口近くの試着室へと駆けて行った。俺はその姿を見送ると、休憩スペースで今日のデートプランを再確認する。
2015-08-10 15:13:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ここまでは、ほぼ予定通り。彼女の水着を買い終えたら、ショッピングモールの中にあるレストランで食事をして… (〜♪) スマホから特別な着信音が鳴り、画面には彼女の名前が表示されている。「はい、……えっ!?俺に見て欲しい、ですか!?は、はいっ、今戻ります。2分待ってください!」
2015-08-10 15:19:27![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
心臓が破裂するのではないかというほどの心拍数を自覚しながら、試着室の前に立つ。「みっ、緑さん?俺です、明神です。お待たせしました。」「はい?」目の前のカーテンからは別の女性の声がして、「堅梧くん!こっちだよっ!」ザッという音と共に、彼女の声が隣から聞こえて、その方向を向く。
2015-08-10 15:27:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「に、似合う…かな?」もはや天使や女神とすら形容しうる、彼女の可愛らしい水着姿に、「はい、似合うというよりもむしろ緑さんの為に誂えたと言っても過言ではなくそのまま家まで持ち帰りたいとすら…あっ!」「え?ごめん、早口だったから、よく聞き取れなかったんだけど…。」
2015-08-10 15:38:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
落ち着くんだ、俺!あくまで高校生として清い交際をしているのであって…「似合わなかった、かな?」悲しげな顔で胸に手を当てて俺を見上げる彼女に焦点が合って、「ちが、断じて違います!!!あまりに似合いすぎて狼狽しているだけです、えぇ。俺の見立てに間違いなど断じてありませんとも!」
2015-08-10 15:50:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ふふっ、選んでもらった水着が似合わなかったらどうしようって、昨日の夜から不安だったから、すごく安心したよ。」そう言って彼女は試着室へ戻ると、元の服へと着替え、会計を済ませていく。その間俺は、彼女の嬉しそうな姿を見つめながら、彼女を抱きしめたいという衝動と戦っていた。
2015-08-10 15:58:34![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その後は俺のデートプランを見せながら、彼女と買い物をしたり、映画を見たりした。が、その間のほんの一瞬、彼女の悲しげに潤んだ瞳を、彼女の紅い頬や唇を意識しては、鼓動が早まるのを悟られないよう必死で、映画にいたっては、内容など頭に全く入ってこなかった…。
2015-08-10 16:08:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
帰りの電車は微妙な時間だからか、人もまばらで、俺達は隅のボックス席に隣り合わせて座ると、心地よい揺れに身を任せながら、他愛ない話をしていた。しばらくして、彼女から返事がなくなり、隣を向くと彼女は長い睫毛を伏せて、今にも眠りそうだった。「ゆっくり眠ってください。肩、貸しますから。」
2015-08-10 16:16:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そう小声で言いながら、彼女の頭をそっと撫でる。相変わらず返事がないまま10分は経ち、もう1度彼女に声をかけようとすると、安らかな寝息と共に、かすかな呟きが聞こえた気がした。「…ごくん…」寝言を盗み聞くのは卑怯だが、俺の名前を呼ばれたので、そのまま彼女の顔を見つめる。
2015-08-10 16:25:10![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「…キス……欲しいよ。」穏やかな寝顔のまま、確かに彼女はそう呟いた。俺の聞き間違いである確率はないことはないが、しかし間違いなくキスと、欲しいと言った。今日1日の彼女の姿が走馬灯のように思い出され、ずっと抑えていた衝動が胸にこみ上げる。しかし待て、明神堅梧!早まるな!時期尚早だ。
2015-08-10 16:36:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼女の眠っている、意識のない間に唇を奪うなど、男として許せん!それに、キスは別れ際に俺から…「だめ、だよね…」オレンジ色の夕日が照らす、人のいない電車の中。まるで世界に俺達しかいないようで、咎めるものなど存在しないようで、彼女の頬に手を添える。「だめじゃ、ないです。」
2015-08-10 16:48:05![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼女を起こさないよう、触れるだけのキスをする。重なった唇の感触が、柔らかい幸せともっとしたいという衝動になって、彼女への愛を深くする。「愛しています、ずっと変わらずに。緑」かき消すようなアナウンスが鳴ると、彼女がぼんやりとした様子で目を覚まして、俺を見る。「どうかしましたか?」
2015-08-10 17:00:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「へ?あ、あの…」唇を押さえて、彼女がうつむくので、彼女に気がつかれていたのかと言い訳を探し始めると、「夢でね、少し前のこと…見てたの。」涙声の彼女は俺の方を見て、微笑む。…頭の中の理性を消し、想いのままに彼女を抱きしめる。後で誰に何と言われようが、今俺は、彼氏として愛したい。
2015-08-10 17:13:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「へ?あの…」「俺の我儘で構いません、このまま抱きしめさせてください。」「うん、ちょっと恥ずかしいけど、堅梧くんがそうしたいなら…。」腕の中にある、俺に違う世界を見せてくれる彼女を感じたくて、俺の手で幸せにしたくて、言葉にならない気持ちのまま、今日のスケジュールにない行動をする。
2015-08-10 17:23:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
俺という方程式に、君という値が加算されて導き出した答えは、愛という形のないものだった。それを今、抱きしめることで証明した。「君を、離しません。」「えっ?次降りる駅だよ?」たとえ君という値が予想し得ない変動をしても、答えは君への変わらぬ愛です。君との答え合わせ<結婚>は先ですが。
2015-08-10 17:41:55