黄昏町(柊)十九日目

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@hiiragi_r_t_d

【十九日目】 [ハンドアウト]「ぐ」「り」「こ」 最後の3つを上って、君は振り返った。黄昏色に照らされた土手の階段には、誰もいない。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547#黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

2015-08-13 19:00:13
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「ぐ」「り」「こ」 私はコンクリの階段を、土手の上まで登りきった。 振り返って眺めた川原にも、土手の階段にも、土手の上にも、誰一人いない。 「結局、誰もいなかったな……」 ベンチとグラウンド、散らばるトンボやボールを見ながら私は左手をさする。 01 #hollytk

2015-08-13 19:02:32
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この町に来て間もないころ、この場所で私は一人の少女と出会った。 その少女は醜い自分の左手を嫌っていて、私はそれを引き受けようとしたのだ。 私の企みはうまくいったのだろうか?その結果は少女しか知らない。 02 #hollytk

2015-08-13 19:04:49
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「今日も夕焼けが綺麗ですね」 もはや口癖になりつつある一言を呟いたその時、私の左肩に焼きごてを押し付けられたような痛みが走った。 「ぐっ……がっ…」 肩を押さえた右手に触れるのは生温い液体。血だ。 そして肩に突き刺さる、これは…矢? 03 #hollytk

2015-08-13 19:06:37
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頭がクラクラする。視界がグニャリと歪み、私はその場にうずくまる。 血を流しすぎたか?……否だ。この程度の出血で意識が危うくなるほど、私の身体は人間を残してはいない。 ならばこれは毒だろう。麻痺?酩酊?死んだら解けるのだろうか…… 04 #hollytk

2015-08-13 19:08:24
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そんなくだらないことを考えながら、私は意識を失った。 05 #hollytk

2015-08-13 19:10:04
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「………きろ!」 誰かの声が聞こえる。怒気をはらんだ男の声。 「……てあげなさい」 何に、何をするって?よく聞き取れないな。すまないがもう一度言ってくれないだろうか? 「…れでも喰らえ!」 06 #hollytk

2015-08-13 19:12:16
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男の声。鈍い音。左足に激痛が走る。 「ギャァッ!」 私は悲鳴を上げて飛び起きる。 「目は覚めましたか?」 ここは窓のない部屋。目の前には三人の男。切れかけた蛍光灯が明滅する。 07 #hollytk

2015-08-13 19:14:13
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ベストを纏い、煙草をふかす屈強な男。 ジャンパーを羽織った線の細い男。 そしてスーツを着てネクタイをきっちり締め、髪を七三に分けた眼鏡の男。 「目は覚めましたか?」 眼鏡の男が再度質問した。 08 #hollytk

2015-08-13 19:16:34
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「はい。」 ベストの男の持つ大きなハンマーを見ながら、私はゆっくりと頷いた。 左腕には力が入らないし、まだ身体は痺れてロクに動かない。 更に相手は鈍器と、今は見当たらないが弓を所持している。 状況は最悪、だ。 09 #hollytk

2015-08-13 19:18:23
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「今から我々が貴方に質問をします。貴方はそれに答える。いいですね?」 眼鏡の男は更に付け加える。 「答えなかった場合、残念ですが痛い目に遭ってもらいます」 つまり、尋問か。 10 #hollytk

2015-08-13 19:20:09
@hiiragi_r_t_d

私は投げやりに答える。 「どうぞお好きに」 何を答えたところで結局私は死ぬだろう。 「まず貴方の懐から出てきたこの手帳について」 眠っている間に抜き取ったのだろう。眼鏡の男は私の手帳をパラパラとめくりながら質問する。 11 #hollytk

2015-08-13 19:22:12
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「この手帳に書かれている事は全て真実ですか?」 「あなたは自分の手帳に嘘を書くんですか?」 「やれ」 ハンマーが振るわれる。右足が砕かれる。 「もう一度聞きます。この手帳に書かれている事は全て真実ですか?」 12 #hollytk

2015-08-13 19:24:46
@hiiragi_r_t_d

「ああ…そうだ」 私は痛みをこらえながら答える。 あの手帳には、この町で出会った全ての異形や物事が書かれている。 「なるほど……では次の質問です。」 13 #hollytk

2015-08-13 19:26:19
@hiiragi_r_t_d

眼鏡の男による尋問は、私が手足の全てを砕かれるまで続いた。 14 #hollytk

2015-08-13 19:28:43
@hiiragi_r_t_d

「ふむ、もう砕く場所がありませんね。それではこれで質問は最後です。」 そう言うと眼鏡の男は目を細め、私を睨みつけながら質問した。 「団長を殺したのは貴様か?」 「団長?」 15 #hollytk

2015-08-13 19:30:16
@hiiragi_r_t_d

聞き返した私に男はハンマーを振り下ろそうとしたが、手足が既に挽肉になっていたのでやめた。 「我々『黄昏町第二自警団』のリーダーですよ。そんじょそこらのバケモノでは相手にならない。貴方のような強力な異形を持たない限りね」 16 #hollytk

2015-08-13 19:32:27
@hiiragi_r_t_d

「なるほど………でも残念ながら私じゃあないですよ」 「そうでしょうね。団長を殺せるようなバケモノなら我々では到底太刀打ちできないでしょう」 えらく信用されていたらしい。異形抜きでそんなに強い人がいるのなら一度は会ってみたいものだ。 17 #hollytk

2015-08-13 19:34:19
@hiiragi_r_t_d

「心当たりは?この手帳には死んだ者は生き返るとありますが」 「残念ながら、そんなに強い人には会った事がないです」 「そうですか………」 眼鏡の男は懐から自分の手帳を取り出すと何やら書き込んだあと、部屋から出ていった。 18 #hollytk

2015-08-13 19:36:18
@hiiragi_r_t_d

眼鏡の男が去った後、のんびりと煙草をふかしていた男に私は質問を投げてみた。 「私はこの後どうなるんですか?」 男は平坦な声色で答えた。 「団の全員が揃った時に処刑されるだろうな。火炙りは効かないんだろ?良かったな」 19 #hollytk

2015-08-13 19:38:12
@hiiragi_r_t_d

「火炙りにされる事も?」 「大抵はそうなる。見せしめには丁度いいからな。」 「なるほど。それ以外は?」 「普通は水責めだが、水死しない奴もいるからな。そういう奴は切り刻まれるか、薬だ。」 20 #hollytk

2015-08-13 19:40:22
@hiiragi_r_t_d

私が鱗を持っていることは既に知られているし、切り刻まれるか、薬を飲まされるということか。 「あなたはそれを見て楽しいですか?」 男は煙を私に吹きかけながら答える。 「俺は雇われだ。てめえらにもあいつらにも恨みはねえ」 傭兵。そういう生き方もあるのか。 21 #hollytk

2015-08-13 19:42:17
@hiiragi_r_t_d

私は咳き込みながら男に問う。 「ゲホッ、いつから傭わ、ゲホッ」 私の苦しむ様を笑いながら眺めていた男は更に煙を吹きかけて答えた。 「この町に来る前からだぜ、カタギのあんちゃん。」 私のこれ以上の質問を拒むように男は私から離れると、扉の前で見張りを始めた。 22 #hollytk

2015-08-13 19:44:54
@hiiragi_r_t_d

男が見張りを始めてしばらくすると、眼鏡の男が十数人の男を引き連れて部屋に入ってきた。煙草をふかしていた男が敬礼する。 「処刑の時間だ、バケモノ」 「楽に殺してくださいね」 「楽には殺さん」 楽に殺してくれと言っているのに。 23 #hollytk

2015-08-13 19:46:14
@hiiragi_r_t_d

私の不平には耳を貸さず、眼鏡の男は手足の折れた私を運ばせた。 24 #hollytk

2015-08-13 19:48:07