黄昏町(柊)四十六日目

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@hiiragi_r_t_d

【四十六日目】 【魂16/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

2015-09-10 22:07:57
@hiiragi_r_t_d

町の探索を続けていた私は、悪臭に悩まされていた。 「……匂いますね」 血の匂い。これだけ広範囲に届くとなれば、一人や二人ではないだろう。 一体、何が起きているのか。私は匂いの原因を見に行くことにした。 01 #hollytk

2015-09-10 22:09:04
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「えーと、こちらでしょうか」 民家の屋根の上から、遠くを見渡す。 いくつかの屋根を渡りながら探していると、前方に真っ赤に染まった通りがあった。 02 #hollytk

2015-09-10 22:11:21
@hiiragi_r_t_d

私が降り立った通りには真っ赤な血溜りが広がっていた。 道の両脇には無数の人間の骸が積み上がり、家々の壁にまで血が塗り付けられている。 積み上げられた骸の山が崩れ、その中の一つが私の足元まで転がる。 その生首は、私が先日見逃した少年だった。 03 #hollytk

2015-09-10 22:13:36
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不意に、後ろから声がかかる。 「牙は実に便利だ」 振り返った私の眼前には、男が一人。 まるで中世の貴族のような身なりをしているが、その礼服はスカーフ、ボタン、留め金一つに至るまで血に染まっていた。 04 #hollytk

2015-09-10 22:15:14
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男は血で染まったカイゼルひげを引っ張りながら得意気に続ける。 「あの厄介な人間共を食ってしまえるし!君が欲しいなら分けて差し上げよう」 そして私を見ると、優雅に一礼した。 「まあ、君に牙が必要とは思えないがね、ムッシュー」 05 #hollytk

2015-09-10 22:17:35
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私も軽く一礼を返す。 「御丁寧にどうも。これは全て貴方一人で?」 「ああ、そうだとも。君のように好奇心旺盛な客人を招こうと思ってね」 「招いて、何を?」 「なあに、少し話し相手が欲しかっただけだとも。そこらへん、適当にかけたまえ」 06 #hollytk

2015-09-10 22:19:34
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そこらへん、と言われてもここにあるのは骸の山だけだ。しかし彼があまりにも自然に座るので、私も向かい合う形で骸の山に腰掛けた。よほどぎっしり積み上げたのだろう、死体の山は少し沈み込みながらもしっかりと体を支えてくれる。 「どうだね?我輩の自慢の椅子は」 07 #hollytk

2015-09-10 22:21:08
@hiiragi_r_t_d

「素材について考えなければ、とても良い座り心地ですね」 「ふむ……君はまだ人間を気遣うタイプだったのかな?だとすれば悪い事をしたね」 「いえ、お気になさらず。」 別に、人間を殺す事が悪い事だ、などと言うつもりは無い。 ただ、無駄な殺生が好きではないだけだ。 08 #hollytk

2015-09-10 22:23:27
@hiiragi_r_t_d

「実のところ、我輩もここまでやるつもりはなかったのだ。こやつらが生意気にも我輩に向かって「自殺しろ」などと命令するものでな」 私の一件で懲りて人数を増やしたもののハズレを引いた、といったところか。 「なるほど、それは仕方がないですね」 09 #hollytk

2015-09-10 22:25:29
@hiiragi_r_t_d

彼は大きく頷きながら続ける。 「そうであろう、そうであろう。人間ごときが我々に命令するなど、不敬も甚だしいのだ。本来ならばひれ伏し許しを乞うべきところを、あの不届き者どもめ…」 なにやら彼の機嫌が悪くなってきた気がするので、私は話題を変えることにした。 10 #hollytk

2015-09-10 22:27:18
@hiiragi_r_t_d

「貴方はこの町に来てから長いのですか?」 私の問いかけに、彼は鷹揚に頷いた。不健康なまでに青白い顔にかかった光沢のない黒髪をかきあげながら、彼は口を開く。 「うむ、もう数年ほどであろうか。だがまあ、我輩の長い人生の中では瞬き一つのように短い時間だ」 11 #hollytk

2015-09-10 22:30:00
@hiiragi_r_t_d

男の外見は、さほど歳を取っているようには見えない。どう多めに見積もっても、40に届かない程度だろう。 先程からの言動といい、彼はまるで… 「吸血鬼、に見えるかね?」 彼は真っ赤な唇を大きく歪ませ、ニヤリと笑う。鋭い牙が覗く。 「……よく分かりましたね」 12 #hollytk

2015-09-10 22:31:55
@hiiragi_r_t_d

「よく言われるのでな。だが我輩はそう呼ばれる事を好まぬ」 「では、なんと呼べば?」 私の投げた問いに、彼は更に笑みを深めながら返す。 「牙爵。そう呼びたまえ、客人」 13 #hollytk

2015-09-10 22:33:23
@hiiragi_r_t_d

その後も私と彼…牙爵さんはしばらく話し込んでいた。 彼は時々ハムをつまむように骸から一部をもぎ取って食べながら話していたので、私が席を立つ頃には彼の椅子は半分ほどの大きさになってしまっていた。 14 #hollytk

2015-09-10 22:35:10
@hiiragi_r_t_d

「さて、そろそろ日が沈みますし、私はこれで失礼させていただきます」 「ふむ、そうであったな。全く、この町の忌々しいことよ!我輩の独壇場には一人のオーディエンスも呼べぬどころか、主演の我輩が立ち入り禁止とはな!」 彼のテンションも高い。 15 #hollytk

2015-09-10 22:37:49
@hiiragi_r_t_d

「また会うことあらば、存分に語り合おうぞ!さらばだ!」 「ええ、また会う……日……」 私の別れの言葉を最後まで聞くこともなく、彼は去っていった。 まばたき一つのうちに彼の姿はかき消え、後には彼の髪のように黒々とした、カラスの羽が一枚。 16 #hollytk

2015-09-10 22:39:12
@hiiragi_r_t_d

町のどこかで、カラスが一声高らかに鳴いた。 「…………気のせいですよね」 彼がカラスに変身?まさか。 「あ、そういえば」 彼…牙爵さんに、私の名前を教えていなかった。 「まあ、聞かれませんでしたからね」 17 #hollytk

2015-09-10 22:41:22
@hiiragi_r_t_d

たとえ名前を知らなくても、彼なら私を見分けられるだろう。なんとなくそんな気がした。 「さて、濡れ衣を着せられる前にトンズラしましょうか」 この状況、大量殺人犯に疑われても仕方ない。 自警団でなくとも、これは流石に問答無用で有罪だ。 18 #hollytk

2015-09-10 22:43:31
@hiiragi_r_t_d

そういえば自警団以外にも、連携してバケモノを狩っている集団がいた。 「あれは何者なのでしょうね」 明日はあの集団について、調べられたら調べてみよう。 私はそう決めると、今日の寝床を探し始めた。 19 #hollytk

2015-09-10 22:45:40
@hiiragi_r_t_d

──────── 【四十六日目】 【生存】 【魂±0】 【魂16/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 20 #hollytk

2015-09-10 22:45:53
@hiiragi_r_t_d

[町]「牙は実に便利だ」男爵風の男は得意げに話す。「あの厄介な人間共を食ってしまえるし!君が欲しいなら分けて差し上げよう」《男の誘いに乗るなら、君は戮され異形を得る【魂-1/『牙(力+2)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-09-10 22:46:08