入門者のための実話怪談【怪決】加藤アズキ氏による「紙の本は紙束にお金を払っているんだと思う」

アズキさんの本業のお話です。
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織部ゆたか @iiduna_yutaka

先日も年配の方と話したのがそれで、このままだと「紙の本」の時代も終わるんじゃないか、ということで、今の時代に書籍を売る、ということをこのまま続けていっても、ほとんどは売れないものになるんじゃないか、という懸念が新刊書籍を扱う店でもあるらしい。

2015-08-18 17:24:25
織部ゆたか @iiduna_yutaka

これもある種、時代の必然かも知れないけど、いずれ残るものと残らないものとが出て来るんだろうなあ。

2015-08-18 17:26:06
加藤AZUKI @azukiglg

紙媒体の本も電子書籍も商ってる身、そしてそのどっちも読んでる読者という身から「読書体験と媒体の形」というのを考えると、紙の本は縮小はしていきそうな気はしていて、これはたぶん後戻りはできない。

2015-08-18 17:30:08
加藤AZUKI @azukiglg

では、今日に今日、明日に明日全面的に消滅するのか、10年後にはなくなっているのかというと、そういうことはないような気がする。

2015-08-18 17:30:59
加藤AZUKI @azukiglg

ここらへんは「本にお金を出している人たちが、どんな形のものを望んでいるか」によって左右される話だとは思う。 従来の「本」というものは、特に日本人にとって実は「安価な娯楽」の象徴だったとは思う。 ちょっと手が空いたときにさっと読めて、手間がかからず購入費用以上のコストが気にならない

2015-08-18 17:32:48
加藤AZUKI @azukiglg

実際には、家が埋まるほどの本を抱えて、もはや本の倉庫に住んじゃってる人とか、本のために家賃払ってるような人なんかの常識は、一端横に置くことにするw 珍しくはないけどそれがスタンダードでもないので(^^;)

2015-08-18 17:33:36
加藤AZUKI @azukiglg

かつて――というのをどこらへんまで遡るかってのは難しいんだけど、少なくとも源氏物語の時代は本は基本、写本で「増えて」いた。 江戸時代になると活版印刷というか、木版印刷による本の量産が始まってた。 本を所有するというのはそれなりに費用の掛かることで、借りた本を写す写本文化は継続。

2015-08-18 17:35:29
加藤AZUKI @azukiglg

まあ、黄表紙とか娯楽本が出てき始めたのもこの時代で、貸本というのが「文字が読めるが本を買って所有するほどは裕福ではない階層の安価な娯楽」になり始めたのも、まあそこらあたりと考えれば、「安価な娯楽としての読書」ってのは日本においては江戸時代あたりに遡れるのではないかなあ、と思う。

2015-08-18 17:36:51
加藤AZUKI @azukiglg

そこ重要だよね。 だいぶ改良されてきたけど、まだスマホは「バッテリーの残量を気にしなければいけなくて、読書用途はスマホの最優先機能とは言えない」しね。 ライフラインとして期待された機能が多すぎて、読書は後回しになってる。 twitter.com/tentousho/stat…

2015-08-18 17:37:51
転倒小心 @tentousho

@azukiglg バッテリー切れの不安抱えたデバイスで読むのにまだ抵抗感めっさあるけど、これも程度の差なんやろうかなあ

2015-08-18 17:35:00
加藤AZUKI @azukiglg

まあ、話が前後するけど、携帯電話が「ネット端末」になり、或いは「携帯小説」や「SNS」という従来以上に安価な【安い読み物娯楽】が登場した時点で、「紙の本を買って保有して読み、読み終えたら抱え込んでおく」というスタイルは過去のものになったのかもしれんね。

2015-08-18 17:39:14
加藤AZUKI @azukiglg

ほんで、話は江戸に戻るんだけど、江戸時代の黄表紙を読む娯楽みたいなものがなぜ日本に定着できたのかといえば、武士も商人も職人も農民も文字を覚えなければならなかったからであり、日本は文字でシモジモに至るまでの統治が可能な国だったんだけど、その余録として「読む娯楽」が普及したのかなと。

2015-08-18 17:41:14
加藤AZUKI @azukiglg

それでも、江戸時代、和紙がまだ高価なものだった頃(手習いの手本が何世代にも受け継がれ、練習書きは真っ黒になるまで書き込まれた)はともかく、明治大正と時代が下って、洋紙の製造が増え紙が安価になってくると、それに連れて「読書」という娯楽の費用も下がっていったんではあるまいか。

2015-08-18 17:44:13
加藤AZUKI @azukiglg

明治大正時代まできても実は「読み捨てるような本」については和綴じ本が結構あったみたいで、(それ故に保存状態がよくなくてあまり残ってないらしいけど)大切に取っておくわけでもないような本については、相応に安い値段で流通してた、みたいな。

2015-08-18 17:45:43
加藤AZUKI @azukiglg

本の単価は「保存性がよく(装丁が頑丈で華美、紙質がよい)、ページ数が多く、印刷技術がよく(或いは特殊)、内容に重要な価値があるが、【それを欲する人が少ない】」場合は高くなる。 内容が素晴らしいかどうかよりは、「それを欲しがる人が多いか少ないか」で値段が変わる(^^;)

2015-08-18 17:48:21
加藤AZUKI @azukiglg

例えば哲学書とか工学書とかの類は、内容が凄く素晴らしくても、それを理解して欲する人が多いわけではないから、そんなに売れない。 なので、できるだけ良い作りにして(高くても仕方がないと納得できるように)、少ない人数の読者に高額で買ってもらうようにできてる。

2015-08-18 17:49:47
加藤AZUKI @azukiglg

使う文字種が違いますしね。 一方で、「文字が読めて学が付いたけどヒマを持て余した人たち」が、和算や大小暦を色々やってたかと思うと色々胸熱w twitter.com/Rogue_Monk/sta…

2015-08-18 17:51:06
Rogue Monk @Rogue_Monk

@azukiglg ただ「字が読める」といってもレベル差は結構あったようで、 ・黄表紙 ・高札 ・農村の台帳 では漢字の使用率に大きな差があったりしますな。 twitter.com/azukiglg/statu…

2015-08-18 17:49:46
加藤AZUKI @azukiglg

まあ、ぶっちゃけ「たくさん買ってくれる人がいる」というのが当て込めるなら、本の値段は安くできるけど、売る前から「そんなに売れるほど市場がない」とわかってるものは、著者印税と出版社の収益を確保できる価格設定にしないとならないから、それなりに高くしておかないとなんない。

2015-08-18 17:52:19
加藤AZUKI @azukiglg

人気作家で過去数作の売れ行きが読めてる人とかだったら、「だいたい◯冊は売れるから、×円で出せる」というのが見えてくるんだけど、新人だと読めないので「大失敗」だったりすると次からは初版減らしたり単価引き上げたり干したりして調整することになる(^^;)

2015-08-18 17:53:29
加藤AZUKI @azukiglg

ただこれも、「内容が悪いから売れない」のは仕方がないにしても、「実は欲しがってる読者層に、届いていなかった」という営業上の失策のケースもあるし、編集者の目が腐ってたケースだってあるw

2015-08-18 17:54:55
加藤AZUKI @azukiglg

なので、一概には言えないんだけど、それでも「見える市場を十分に事前に確保できてる作者」の本以外は、まあ苦戦する。

2015-08-18 17:55:09
加藤AZUKI @azukiglg

話は今度は読者に移る。 読者は、というか「娯楽習慣として本を読む人」っていうのは、正確には本を読んでるんじゃなくて「文字を読んで時間を消化/消費し、その対価として感動や感心や知識の増加を得ることを楽しみにしている」んだとは思う。

2015-08-18 17:56:43
加藤AZUKI @azukiglg

読む理由は人それぞれだから、決め打ちで「皆こうだ」とはちょっと言いにくいけど、「他人(架空の誰かも含む)の人生を追体験して自分も共感したい」という娯楽と、「他人の経験則を模倣して同じ成果を得たい(実用書はこれ)」とか、まあ色々ある。

2015-08-18 17:58:06
加藤AZUKI @azukiglg

で、それは「紙の本でなければどうしてもできないことか?」というと、別に紙である必然性はどこにもない。 目的は紙束の保有でなく、「内容を自分の脳に写し取ること」なわけだから。

2015-08-18 17:58:51
加藤AZUKI @azukiglg

まあ、一度では理解できないとか、いつか読み返したいけど二度と手に入らなかったら困るとか、そういう保険として本を買って手元に置くんだと思う。 著者へのリスペクトとか、内容に対する対価よりは、「紙束キープ代」って意識のほうが強い人は多そうな気がする。

2015-08-18 17:59:59
加藤AZUKI @azukiglg

僕が作ってる本は224ページ、値段は部数によって多少左右されるけど概ね同じ。 内容は著者に左右されるから、できの良い時と叱られ気味な仕上がりの時とで割と波がある。叱られ気味な仕上がりというのは著者の力不足であったり、読者の琴線の変化(や進化)の結果なので、まあ仕方ない。

2015-08-18 18:01:38