GC大戦EX・ライオネル襲撃2-⑦

猫憑ノコ @okurisuzume

#ライオネル襲撃 ガタガタ。ライオネルの部屋に、慌ただしい足音が響いた。 開いた扉の先には、真っ赤に染まった肩と腕を抑えたカッツェ。 兵士たちに半ば連行されるかのように同行され、むすっとした顔で何もない空を睨んでいる。

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「出陣前に、随分なサマじゃないか。身体の管理は、傭兵の側の責任だと言うのは常識だろう」 読書中、顔を上げて見えたカッツェに、嘆息して声をあげる。 「自分の戦闘能力が商品価値だっていうのはわかっているのだろう?　出陣前に傷だらけになるのは契約違反とは思わんかね」

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「どこで喧嘩をふってきたのかは君の能力と態度に免じて詮索しないでおくが……手当をしたまえ。これは命令だ」 傷だらけの仲間を見て、彼はどこまでも冷酷だった。どこまでもうんざりする様に、大きくため息を吐くと、青年騎士が手当の手配をする。 >N

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 「ザックス、やつが居やがったんだよ。あいつめ、適当なこと言って逃げやがって。 おい下衆卿、アンタの領地の管理甘いんじゃないのか？アタイの鼻がなかったら、アンタは暗殺されてたかもしれないんだぞ」 素直に手当てを受けながらも、彼女は冷酷な言葉と痛みに顔をしかめる。

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 優しい気づかいの言葉など帰ってこないのは分かり切っていたことだが、それでも不本意とはいえこのような雇い主を受け入れてしまったことが、なんだか悔しかった。

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「……」 その言葉に帰ってきたのは、絶句。 「前言を撤回するよ。よくやったと言わせてくれ給え」 数テンポ遅れて、彼の賞賛はやってきた。 「この領地の近辺にザックスが、それも自ら……」 驚愕の表情は、包帯を巻く青年騎士にも伝達した。

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「全く……流石に予想外な行動だよ。ここまで大胆とは思わなかった」 ふぅ、ライオネルは嘆息し、そして書を閉じる。 彼は、頭を下げた。 「その通りだ。領地近辺にザックス達の侵入を許したのは不手際だろう。謝罪する。そしてよくやった」 彼にしては、素直な謝罪。

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 だがしかし、そこは下衆卿と呼ばれる所以だろうか 「……で、ザックス側の被害は?　どうだね。一太刀でも与えられたかね」 ビジネスライク、二言目には、カッツェにはその様な事を問うた。 自分の損得に関係することに、興味は絶えない。 >N

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 ……本人らには暗殺の意思などなかったようだが、悔しいから黙っておこう。 かけられた言葉に、カッツェは小さく舌打ちする。 「ああ、足に噛みついてやった。お前のところの兵が来なけりゃ、骨を砕いてやったものを。余計なことをしやがって」

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 「……骨にまでは届かなかったが、牙は深く刺さったはずだ。しかし、あっちには聖印の力もあるし、魔法師もいるからな……そして奇跡をぽんぽん起こすやつだ、次の日にゃ完治していてもおかしくないぞ」 窓の向こう、ザックスの駆けて行った空を睨みながらため息をつく。 ＞L

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「なるほど。……まあその傷ならば、うちの兵士が来なければ、骨を砕く代わりに君の首が飛んでいたとは思うがね……」 そういって歩みだし、彼女の肩口に手をかざす。《治癒の印》。ライオネルの聖印から光が溢れだし、包帯に巻かれた傷口が塞がっていく。 >N

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 不意に近づいてきた彼の手に、カッツェが一瞬びくり、と身を震わせる。が、すぐに治癒の光に気付き、彼女の目が丸くなった。 「……怪我はアタイの責任じゃなかったのかよ」 複雑な気分だ。そう思った。　＞GM

中西詠介/Lord_Phantasm @lord_phantasm

#ライオネル襲撃 「契約の討伐対象に攻撃を加えたなら通常の業務の内だよ。それとも、私闘罪で地下牢にでもいきたいかね?」 あくまで論理的に、冷静にそう答える。 「それに、貴重な戦力に、傷物のまま出陣してもらう訳にもいかない。だろう?」 >N

猫憑ノコ @okurisuzume

＃ライオネル襲撃 「……」 彼は論理的で冷静で、下衆だった。 「……勝手にしてくれ、アタイも勝手にする」 なんだか納得できなかったが、ライオネル卿の言う通りだった。今は来るべき戦いに備えなければ。 痛みが引いていくのを感じながら、彼女はもう一度小さく息を吐いた。　 （終）