ラヴ・ディアス『北(ノルテ)―歴史の終わり』について

2013年、フィリピン製作、カンヌ国際映画祭ある視点部門出品
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ロラン @malgre_nuit

ラヴ・ディアス『北(ノルテ)ー歴史の終わり』犯した罪に苦しむ男。冤罪ながらも慈悲に芽生える男。夫を待ちながら子供と生きる女。彼らの人生を、光や音、色彩、風景の限りを尽くしたあらゆるショットに描く4時間。もはやこの映画に出会うために今まで映画を観てきた。そう言っても過言ではない。

2015-07-27 07:06:44
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』本作は冒頭、やがて殺人を犯す青年とその濡れ衣を着せられる男の家族がクロスカッティングされるが、背景や照明の差異によって、初めは異なる地点にいるように演出される。一家のいる村のイルミネーションが、窓から青年の部屋に照らされ、初めて同一舞台だと明される。

2015-07-27 07:15:04
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』他者との位置関係や台詞など、殺人を犯すまでに青年には、その契機が綿密に演出され、実行後の佇まいも長回しのショットに収められる。その一方で、濡れ衣の男は、僅か2カットで逮捕される。そして、青年が村に帰郷する終盤は、序盤の構図と行動が反復され続ける。

2015-07-27 07:10:07
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』同一舞台にいる三人の主格はその後、異なる地点へと隔てられ、それが並行して描かれる。そのため、ランタイムは長尺だが、ラヴ・ディアスの他作のような直線的な「時間」を描く映画とは異なる。その代わりに、海や山道、荒地など、あらゆる空間が映画の舞台となる。

2015-07-27 07:19:18
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』長回しが主体の撮影は、時に人物が画面外に消えても固定で廻り続け、さらには、主観や空撮など、様々な距離やアングルのショットが用いられる。とりわけ、2カット目の逆光に照らされた青年と、拘置所に収監された夫を自宅から見つめるかのような妻のアップが忘れ難い。

2015-07-27 07:11:42
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』青年に殺される少女が口ずさむ歌や、冤罪の夫の鉄格子越しの弾き語りが印象的だが、4時間以上のランタイムで、劇伴は一度も使用されない。相対的に、殺人シーンなどでの犬の鳴き声(犬の可視/不可視の差異はあるが『ラルジャン』を想起させる)や風などが鮮烈に響く。

2015-07-27 07:20:39
ロラン @malgre_nuit

『北(ノルテ)ー歴史の終わり』Norte, the End of History(2013, Philippine)directed by Lav Diaz. pic.twitter.com/bebGHn1OgF

2015-07-27 07:25:35
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