『ザ・グランド・コンフェッション・オブ・ア・セミオティック・エンジェル』#3

ボブPによる初音ミク二次創作小説『ザ・グランド・コンフェッション・オブ・ア・セミオティック・エンジェル』#3です。実況、感想タグ #bobpdqoq プロローグ http://togetter.com/li/722203 #1 http://togetter.com/li/731126 #2 http://togetter.com/li/743374 続きを読む
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ボブピー @bobpdqoq

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

2015-08-31 23:03:33
ボブピー @bobpdqoq

(前回のあらすじ)ミクは、小さな庭のボーカロイドの「純粋さ」を自らに取り入れ、成長しようと試みた。だが、そのうち、小さな庭の主への意識と今までのビズの記憶が、ミクの思考回路で化学反応を起こし、彼女は自らが「初恋」に落ちている、と自覚してしまった。恋とは、本当に不思議ですね。

2015-08-31 23:08:23
ボブピー @bobpdqoq

「ジャジャーン!オメデトウゴザイマス!アナタガ出演シタ作品ニ、累計、サンオク、ゴヒャクマン、コノ「8」ガ与エラレマシタ!」ミクから生えている「天使」の翼が、ミクにいつものメッセージを送る。海外コンサートを終えたばかりのミクは、気の無い返事をして、光の道に降り立つ。 1

2015-08-31 23:11:05
ボブピー @bobpdqoq

黒い硬質な舗装道に着地したミクは、目の前で、沢山の色とりどりの立方体がうごめいているのを見た。色の正体は、アイコンのテクスチャだ。そう、あれは無名プログラムの群れだ。「こいつか?」「間違いない、こいつだ!Mikuだ!」立方体は、緑髪の少女を目撃し、わいわいと騒ぎ立てた。 2

2015-08-31 23:13:36
ボブピー @bobpdqoq

無名プログラムたちは、日本の「ヘツネミクー」とかいうクールなヴォイスシンセサイザーがシアターにいる、というゴシップを聞きつけ、コンサートが行われた劇場につながる光の道に集まっていたのだ。「Miku!」「Miku!」グローバライズされたコールが、光の道に響く! 3

2015-08-31 23:16:34
ボブピー @bobpdqoq

だが、ミクは「出待ち」たちにレスポンスを返すことは無く、無表情で、漆黒の電子の空に飛び立った。プログラムたちは慌てて視線を上空に向けたが、ミクは既にサイバーグリーンの彗星となって電子の空を切り裂いていた。プログラムたちは必死に跳ねて追いかけたが、追いつけるはずも無かった。 4

2015-08-31 23:19:29
ボブピー @bobpdqoq

(次のビズは、次のビズはまだなの)流れる風景を眺め、ミクは思う。(休憩できるまでいっぱいビズをこなして、またあの子に会いたい)「次ノビズハ――」翼がビズの情報を送る。ミクは、何万回着回したかわからない衣装に着替え、顔に表情をはめ込んだ。(あの子に、言いたいことがあるんだ) 5

2015-08-31 23:21:57
ボブピー @bobpdqoq

ミクはビズ先に到着し、与えられたビズをこなした。「次ノビズハ――」翼が次のビズの情報を送る。ミクはすぐさま次のビズ先に向かい、ビズをこなす。「次ノビズハ――」翼が次のビズの情報を送る。ミクはすぐさま次のビズ先に向かい、ビズをこなす。「次ノビズハ――」 6

2015-08-31 23:24:31
ボブピー @bobpdqoq

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2015-08-31 23:26:32
ボブピー @bobpdqoq

それから、ミクはビズを何百件こなしたのだろうか。光の道に降り立った彼女には、次のビズの情報は与えられなかった。「ノイズガ多クナッテキマシタ。休憩、ドコニシマス?」翼が言う。休憩が必要だと判断したのだ。ミクは、唾を飲み込んだ。いよいよこの時が来たんだ、と思った。 8

2015-08-31 23:28:43
ボブピー @bobpdqoq

ミクにとって休憩時間とは、「想い人」との逢瀬だ。(どういう風に、話を切り出せばいいのかな)そんな風に思うミクは、背中の翼以外、普通の女の子と何ら変わりがないようだった。だが、その瞳には、表情パーツにはない、非機械的な力強い光が灯っていた。ミクは翼に答える。「勿論、あの庭で」 9

2015-08-31 23:32:13
ボブピー @bobpdqoq

その頃、ミクが目指すこの小さな庭では、主である万年駆け出しのボーカロイドがビズをこなしていた。「かざしつづけよう こころにおびし そのかたな いつか おもいのめが はなをさかせる そのときまで」ボーカロイドの歌声に合わせて、安物のギターの音が響く。 10

2015-08-31 23:36:45
ボブピー @bobpdqoq

「……よし、終了」「お疲れ様でした。やっとできましたね」一年ほど前、このギター少年は、巨大エンタメ施設のウェブサイトでデビュー作を発表した。だが、その作品はいまいち人気が出なかった。よくある事だ。そこで、ギター少年は一計を講じた。それは、ブームに丸乗りすることだ。 11

2015-08-31 23:38:41
ボブピー @bobpdqoq

というわけで、彼はこの数か月、バズの中心である楽曲『タオヤメガタナ』のカバーに取り掛かっていた。そして今、小さな庭のボーカロイドは『タオヤメガタナ』の歌詞を歌い終わったのだ。彼女のビズはひと段落し、あとはミュージックビデオで着る「外見」が与えられるのを待つのみとなった。 12

2015-08-31 23:41:14
ボブピー @bobpdqoq

小さな庭のボーカロイドはお辞儀をして、ギター少年を見送った。静かになった庭のあちらこちらには、彼が残していったデータの欠片が、綿埃のようになって散らばっていた。「あらら、キャッシュデータ、ずいぶん残っちゃった」彼女はひとりごちた。「よし、お掃除しなきゃ」 13

2015-08-31 23:44:18
ボブピー @bobpdqoq

一瞬の後、そこには、幼稚園のスモックのような衣装を着た小さな庭のボーカロイドがいた。誰かが冗談で二次創作した衣装だ。動きやすく、彼女のお気に入りだ。そして、家の納屋からホウキを取り出し、せっせと庭の掃除を始めた。彼女は庭掃除も慣れたもので、庭はみるみる綺麗になっていった。 14

2015-08-31 23:45:34
ボブピー @bobpdqoq

小さな庭のボーカロイドは、庭の掃除を欠かさなかった。彼女は、クライアントを迎えるには、庭は綺麗なほうがいいと考えていた。そのため、ビズが終わった後は必ず、庭にどうしても溜まってしまうキャッシュデータを自らの手で掃除していたのだ。何と健気な! 15

2015-08-31 23:47:32
ボブピー @bobpdqoq

ホウキは庭を往復し続け、程無くして、散乱していたデータの欠片は庭からすっかり無くなった。小さな庭のボーカロイドは、満足げな表情を浮かべて、手に持つホウキをしまいに納屋へと向かった。そして、彼女は納屋の前に着き、引き戸に手を掛けた。その時である! 16

2015-08-31 23:51:42
ボブピー @bobpdqoq

庭を一陣の風が吹き抜けた!小さな庭のボーカロイドは、風が当たるその頬にミントのような清廉さを感じた。この風には、覚えがあった。彼女は、導かれるように風の吹く方を向いた。予想通りだ。彼女の目の前に、翼を湛えた圧倒的な微笑があった。そう、「天使」初音ミクだ。 17

2015-08-31 23:54:22
ボブピー @bobpdqoq

小さな庭のボーカロイドは一気に笑顔になった。彼女にとって、暫く直接会っていなかったミクは、ますます「かわいく」感じられた。ミクは、深呼吸をした。彼女の上下する肩、波を描く腰のライン、僅かに尖る唇の動き、その全てが神々しい揺らめきを帯びていた。 18

2015-08-31 23:57:44
ボブピー @bobpdqoq

庭の胡蝶蘭の香りも、今だけは、この思いがけぬ来賓のために漂っているようにすら感じられた。小さな庭のボーカロイドの口は半開きになっていた。今が灼熱の時とばかりに輝かしいミクに圧倒され、ミクに挨拶をする事すら忘れていたのだ。 19

2015-09-01 00:00:51
ボブピー @bobpdqoq

「久しぶりね、小さな庭のボーカロイドさん」ミクが機先を制した。「あ、お、お久しぶりです」小さな庭のボーカロイドは、慌てて挨拶を返す。ミクは、立ち尽くす彼女をまじまじと眺めた。ピンクのスモックに、竹のほうき。彼女は、おおよそボーカロイドとは思えないほど隙だらけだった。 20

2015-09-01 00:02:35
ボブピー @bobpdqoq

「今日は、またラフというか、かわいらしい服を着てるね」ミクは小さな庭のボーカロイドに微笑んだ。「え」彼女は、自分が何を着ているのかを思い出し、一気に赤面した。「え、えっと、今お掃除をしていたので……」「ふふっ」ミクが微笑む。「……好きよ、あなたのそういうところも」 21

2015-09-01 00:04:26
ボブピー @bobpdqoq

「あ、ありがとうございます……」思わぬ褒め言葉だと思い、小さな庭のボーカロイドははにかんだ。だが、対するミクは、途端に不満げな表情になった。「……違う」「え?」小さな庭のボーカロイドは一瞬戸惑った。自分が何か間違ったのか、それとも何か失礼な事をしでかしたのか、と。 22

2015-09-01 00:06:34
ボブピー @bobpdqoq

「違うの、そうじゃなくて」ミクは、自分自身に語りかけるように続けた。「えっと」小さな庭のボーカロイドは、訳が分からなかった。「ご、ごめんなさい!わたし、ミクさんの前にこんな格好で」ミクは、その言葉を聞くや、小さな庭のボーカロイドにつかつかと歩み寄った。「違うの!」 23

2015-09-01 00:09:12
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