備忘録のカウントが面倒になった

たぶん9か10
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ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「聞いてなかったぞこの馬鹿…」 「あ、ごめん。…ふーん、そっか、国広ちゃんは長い方が好きか。おっけー、じゃあ切るのやめて今まで通りにするわ」 「……待て、やっぱり前髪は切れ」 「厭よ。珍しく国広ちゃんがどっちがいいかはっきり言ってくれたのに」 「…」 「…舌打ちしたわね今」

2015-09-14 01:08:18
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「…それで愚痴言いにきたの兄さん。あの人ブラフ得意なんだから素直に言うこと聞いたら駄目だよ。って言うか何で言わなかったの、どっちの髪型でもいいけど顔は見える方がいいって」 「……いや、他の連中に評判が良かったとかあの馬鹿が言いだすから」 「どうしよう兄弟がすごくめんどくさい」

2015-09-14 01:10:54

▼「誘拐するとしてメリットは?」と真顔でしばらく考え込んだがネタが無い。

ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

俺の馬鹿はあれで敏い。が、さすがにこう言われた時は目眩がした。 「あたしを誘拐するメリット考えたのよ。多分うちの研究室の持ってる予算か権利目当てでしょ?あたしの使用権あげるって言ったら案外素直に引いてくれて」 「この馬鹿」 怒鳴らなかったのを褒めてほしいくらいだ。

2015-09-14 20:55:47
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「勝手に交渉しちゃまずいよねぇ。あたしの使用権って研究室の許可要るし。備品管理室の担当さんの承認も要るし」 「この馬鹿」 二度目だった。馬鹿はきょとんとしていて、こちらの苛立ちがまるで理解できていない顔だ。この馬鹿。俺はどうすればいいんだ。一人で途方に暮れる羽目になる。

2015-09-14 20:59:00

▼小狐ちゃんと次女テイク2

ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

咽喉を鳴らして笑う。小狐、お前、少し姉さんに似て来たか。酷く不本意な評ではあるが、この女性は姉に心酔しているから、彼女の価値観から言えば最上級の褒め言葉であろう。小狐丸はそこまで判断して、しかし矢張り並べられるに不本意な相手であったので、嘆息を漏らす。

2015-09-15 00:34:20
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「お前を呼んだのは姉さんだからな。性質はある程度通じるんじゃないのか」「勘弁願えますか、ぬしさま。小狐の主はあなたお一人ですよ?」告げた所で彼女が信じていないことは、知っていた。

2015-09-15 00:34:58
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「…何故似ていると?」今後の為にも判断基準は確認しておきたい。問えば、小狐丸手ずから手入れを施している艶やかで見事な黒髪の女は、長い前髪の下、背後の藤棚を振り返る。小狐丸がつられてみる先、先の娘の姿は、近侍の纏う襤褸に隠れたか、あるいは隠されたか、後者であろうなと知れた。

2015-09-15 00:36:38
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

女は目が見えていないから、振り返ったのは小狐丸の視線を誘導するためだけの所作であろう。 「あの娘に私を預けた辺りが」 「…単にぬしさまが好きそうな柔い娘であったので、それだけですが」 不本意を声に乗せれば、彼女はまた、咽喉を鳴らす。猫のように笑った。

2015-09-15 00:38:15
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「噛めば千切れそうに柔い娘だよ。容易に人を近づけて、私の性など知らぬだろうに」 「…そういう容易い娘を好みなさるのはぬしさまでしょう」 声が些か拗ねたものになった。女は触れた手で彼の腕を撫ぜる。 「何だ、焼き餅か、小狐の癖に可愛いことを」 「…ぬしさま」 「冗談だよ。怒るな」

2015-09-15 00:40:24
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

歩き出す。背後で聞こえた可愛らしい声に一度彼女が振り返ったが、小狐丸は一応窘めておいた。この女性、色恋の類をまるきり信じていない癖に他人のそれには興味津々という傍迷惑な悪癖がある。――あるいはそれこそ、彼女の方こそ、あの外道で下種で悪党の姉に、そこだけ似ているのかもしれないが。

2015-09-15 00:42:52
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「さてぬしさま、今日の手土産は何になさいますか」 話題を変えようと提案するとそうだな、と彼女は思案気に。 「――あの柔い娘は姉さんの獲物としては些か好みが外れるか」 「近侍が山姥切国広でしたが」 「…姉さんの執心しているのは隣の本丸のアレだけだからな、誤解のないよう言っておくが」

2015-09-15 00:45:01
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

何故、と問うと、長身の彼女は面白そうに笑って一言だった。 「あの人はな、自分に殺意を向けてくれる相手しか認識できないのさ」 「…傍迷惑な御仁ですね」 「だから私が傍に居るんだよ、小狐」 「…そのぬしさまの傍に居る私の身を慮って頂きたいですなぁ」 「帰ってからな」

2015-09-15 00:46:48
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

膝枕をしておくれ、と彼女が強請る。かしこまりました、と笑って狐は応じて、それからはて、と女を見遣った。 「あの娘の膝枕はお気に召しませんでしたか。その辺りもお好みかと思いましたが」 「大変柔らかくて良かった。オミにも報告しておこう」 「何故」 「あれとは女の趣味が合う」

2015-09-15 00:49:07
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

――そうですか、と小狐丸は曖昧な笑みで誤魔化した。あの娘の近侍も苦労しているんだなぁと思ったがまぁどうでも良かろう。

2015-09-15 00:50:17
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

「膝枕と、それからそうだな、髪の手入れも」 「いつも通りではありませんか、ぬしさま」 「いつも通りが贅沢なんだよ、小狐は分かっていないなぁ、長生きの癖に」 成程と、年経た大妖にも、稲荷の遣いにも例えられる幻想の刀は笑った。短い時を生きる人間との日常は、いかなる価値にも確かに勝る。

2015-09-15 00:53:24

▼お月見

ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「月が綺麗ね、国広ちゃん!」 どう返すべきか。彼女なので恐らく夏目漱石なんて知るまい。と思っていたら予想通りであった。 「はい望遠鏡」 「望遠鏡」 「今日は晴れの海が綺麗に見えるの。そして今日の空の接続先は23世紀よ」 「…23世紀の晴れの海」

2015-09-27 22:00:03
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL まぁ言いたいことは分かった。23世紀の月面。彼女の郷里だ。 「見えるのか?」 興味を引かれないと言えば嘘になるか。問うと彼女はぐっと親指を立てた。 「見えないわ」 「何の為に今の説明があったのか説明…いやしなくていい。どうせ意味が分からないんだろ知ってる」

2015-09-27 22:02:48
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 呻きつつもとりあえず望遠鏡を受け取る横で、彼女は団子を口に放り込み、縁側で足を揺らしている。団子を用意したのは歌仙兼定だった。 ――ちゅうしゅうのめいげつって何? という彼女の発言に彼が膝をついていたことは忘れておこうと思う。

2015-09-27 22:06:50
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「はー。満月が綺麗に見えるからお月見する、そういう風習?ふーん。地上の人って変なこと考えるのね」 「へんなこと…」 歌仙兼定の肩を優しく叩いて励ましていた燭台切が信じられないものを見る目を向け、次いで俺の方を見た。何でだ。俺のせいじゃない。

2015-09-27 22:07:44
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL とはいえこうして縁側から空を見上げる彼女はそれなりに楽しそうではある。 見上げる先。丸い月は常より大きくも見えた。夜闇を照らすそれが綺麗だ、と感じる心の動きがあるのは確かで、道具に過ぎない己の出自を考えればそうした感受性があること自体、不思議ではあるが。

2015-09-27 22:10:34
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 「…ああ。確かに綺麗だな」 ぼんやりとしたまま呟くと、横に居た彼女は団子を飲みこんで、濃茶の瞳をこちらに向けた。 「国広ちゃんの方が綺麗よ?」 毎度のことだが喧嘩売ってるのかこの女は。 「…あのな」 「前にも思ったけど月が似合うわよねーキミ」

2015-09-27 22:20:59
ズボラ女は頑張らない @nmkmn1201

@tkhime_TL 頬杖をついて、彼女は庭で揺れる薄へ目線を戻した。足を揺らしている。 月を見上げる彼女を見ている時、不意に輝夜姫の逸話を思い出すと言ったら笑われるだろう。月に――故郷に帰りたいのか、そう尋ねた事もあるが、「帰る場所が無い」とはぐらかされた。

2015-09-27 22:24:39
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