(漫画原作者、元編集者の)喜多野土竜先生による「プロレスと電子書籍」

(漫画原作者、元編集者の)喜多野土竜先生による「プロレスと電子書籍」についての 意見をまとめてみました (実際には「プロレスと吉本とアップルと電子書籍」という感じかもです・・・) (喜多野土竜先生のTwitterアカウント) 続きを読む
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喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

【プロレスと電子書籍】01:日本のプロレスはスッカリ下火になっていますが、まだ元気だった時代の話を。アメリカではWWE(オールドファンにはWWFまたはWWWF)が全国制覇しましたが、昔はニューヨークを中心とした弱小団体でした。全米的にはNWAが最大の団体で、他は弱小。

2011-01-09 14:07:47
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

02:自分たちの世代だと梶原マジックに乗せられて、NWA・AWA・WWFを世界三大タイトルなんて言ってましたが、実際はNWAが独占禁止法に触れないように、存在を見容認されただけ。アメリカは独禁法の縛りが強く、Appleが倒産すると困るのはMicrosoftと言われたのはこのため。

2011-01-09 14:23:09
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

03:そもそも、NWAは全米のプロモーター(興行主)の寄り合い団体。そこは日本の大相撲の地方巡業のシステムに似ていて、チャンピオンが全米をサーキットし、地元の英雄と戦うという構図。これに対して、代替わりしたWWFのビンス・マクマホン・ジュニアがケーブルテレビを利用し、攻勢に出る。

2011-01-09 14:26:12
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

04:ケーブルテレビの資金力と、ハルク・ホーガンという選手を獲得してWWFは人気を高め、もともと寄り合い所帯のNWAは勢力を弱め、内部ではジム・クロケットやフリッツ・フォン・エリックなど独自興行を打つ興行主が続出、さらに勢力減退。だがジム・クロケットもWWFに興業戦争に敗れる。

2011-01-09 14:32:39
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

05:しかしここで、WWFの隆盛を見て、CNNの創業者にしてメディア王のテッド・ターナーがクロケットの興行権を買収して、WCWが発足。こうして両団体は激しい興業戦争を開始する。さすがに資本力の差は圧倒的で、有力選手をWWFから引き抜き、ついにWWFの象徴のホーガンまで移籍する。

2011-01-09 14:39:59
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

06:視聴率戦争でもWCWが優位に立ち、WWFは苦境に。ここでWWFは視聴率戦争から一歩引き、まずはハウス興業の充実を図る。実際に会場に足を運び、金を払ってくれる客を大事にして、彼らが次の興業でも来たいと思わせるような、試合内容の充実を選手に要求し、マクマホン氏も陣頭指揮した。

2011-01-09 14:43:36
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

07:何をプロレスの歴史を延々語ってるんだと思った方、ちゃんと電子書籍と関係がある。テレビの視聴率を「単行本の売上」に、ハウス興業を「雑誌の一話ごとの読み応え」に置き換えれば、ここ10年の出版社の状況と、いろいろと通底する部分が見えてくるのではないか?

2011-01-09 14:47:35
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

08:ライバル会社の人気作家を引き抜き、それで単行本は莫大に売れ、会社に利益をもたらす。それはサラリーマンとしては正しい業績の上げ方のひとつではある。問題は、その作家(作品)に、ハウス興業に耐え得る訴求力、次の興行に客を呼ぶ力があるか(あ、興行をずっと誤変換してた!)。

2011-01-09 14:51:44
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

09:テレビの視聴者は、ほぼ毎回視聴しているので、前の興行でコイツが裏切って、今回はその制裁マッチが組まれたとか、かなり長いスパンで流れを追う。ハウス興行に来る客もその流れの人間は多いが、当然一見さんも多い。その一期一会の客の心を掴み、次に繋げられるかが重要。そこに熱が生まれる。

2011-01-09 14:55:16
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

10:ケーブルテレビを利用して一躍時代の寵児になったWWFは、苦境で興行の基本に立ち返って、ついにWCWとの興行戦争で、視聴率でも逆転する。WCWは内部的な問題を抱え、求心力を失い、また親会社のアイム・ワーナーの赤字部門切り捨ての方針によって瓦解。テレビも撤退し、WWFが買収へ。

2011-01-09 14:59:57
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

11:WWFがどの雑誌で、WCWがどこかの憶測は読む人の判断に任せるとして(笑)。1995年に漫画バブルが崩壊し、1997年に発行部数首位の座を奪われたジャンプは、Dr.マシリトのモデルになった編集長が新人育成に力を入れて、2001年に退くまでの間に、多数のヒット作の種を撒く。

2011-01-09 15:09:51
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

12:翻って、日本のプロレス。衰退の原因は、総合格闘技の慎重や、暴露本の問題など多種あると思う(個人的にはターザン山本排除の動きあたりで嫌気がさした)。日本のプロレスはテレビ依存で、地上波テレビがないと地方興行は難しく、テレビが付かない団体は多くが消えて言った。

2011-01-09 15:12:59
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

13:後の総合格闘技ブームを用意する、プロレスの格闘技スタイル導入の時期、日本にはその路線とはまったく別の、インディープロレスが生まれる。開拓者は剛竜馬のオリエンタル・プロレスだったが、これは短期で瓦解。大仁田厚のFMWが、真逆のキワモノ路線で一気にブレイクする。

2011-01-09 15:15:33
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

14:膝を壊して一度は引退した大仁田には、従来のプロレスは難しかったし、格闘技風プロレスはもっとムリ。そこでノーロープ有刺鉄線電流爆破超大型地雷爆破マッチのような行う。キワモノと揶揄されたが、このスタイルはハウス興行においては、大きな力を発揮した。いやハウス興行にこそ適していた。

2011-01-09 15:18:48
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

15:例えば、電流爆破をテレビで見ても、その爆発音はテレビの音量の限界以上は伝わらない。爆破の閃光も同じ。だが、会場に入れば爆破音は耳どころか全身を震わせ、閃光は網膜に残像を残し、息を飲むとなりの観客の動きさえも場を盛り上げる要素となる。これぞライブの力!

2011-01-09 15:22:06
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

16:もっとも、FMWはその後悲劇の団体になるのだが、そこは割愛。そうやってFMWがテレビという援助がなくても、興行で何とか黒字を出せる可能性(あくまでも可能性)を見せると、雨後の筍のように全国にインディー団体が乱立。こんなにもプロレスラーになりたい人間がいたのかというほどに。

2011-01-09 15:25:43
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

16:もっとも、FMWはその後悲劇の団体になるのだが、そこは割愛。そうやってFMWがテレビという援助がなくても、興行で何とか黒字を出せる可能性(あくまでも可能性)を見せると、雨後の筍のように全国にインディー団体が乱立。こんなにもプロレスラーになりたい人間がいたのかというほどに。

2011-01-09 15:25:43
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

17:この状態、実は最近の電子書籍の動きにもちょっと似ている。テレビ局(出版社)という大きな後ろ盾がなくても、個人が少人数で、試合(作品)のクオリティーをのみ頼りに、自主興行を打てる可能性。ただ、現実は甘くない。インディー団体のエースは、かつてのメジャー団体の所属選手が多い。

2011-01-09 15:28:32
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

18:佐藤秀峰先生とか、やはりメジャーな出版社のメジャーな雑誌でヒット作を飛ばした実績(と資本金)がある。まったく無名の新人が徒手空拳、作品のクオリティーだけで売れるのか? 現在のヒット漫画家のように単行本が出るたびに数千万円以上の印税が入る状態を売れると規定するなら、まずムリ。

2011-01-09 15:31:32
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

19:ただ、己の身を養い、好きなことで何とか食っていくだけなら、可能かもしれない。そこで参考になるのが、みちのくプロレス。地方興行を考えるなら、テレビが付かないとプロレス興行は地方では苦戦する。第一次UWFも、これで苦戦した。都市部で破客が入っても、地方では難しい。

2011-01-09 15:34:04
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

20:だがそれは、地方巡業と年間200試合いう力道山の時代のスタイルに固執して、パラダイムを転換できなかったせい。地方を切り捨て、大都市圏で大きな興行を打ち、黒字を出すという方向にシフトしたのが第二次UWF。他のインディー団体もそれに習ったが、みちのくプロレスは逆を行った。

2011-01-09 15:36:41
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

21:名前のとおり東北を主戦場とし、小さな公民館や体育館を借りての興行。客は何十人から、多くても300人レベル。それではとても食えないと思うかもしれないが、例えば格闘技興行のメッカ・後楽園ホール(JR水道橋・約2000人収容)と比較してみればいい。

2011-01-09 15:42:37
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

22:平日9時から22時の間、6時間で63万円。土日祝の16時から21時の使用は102万9000円。これにいろいろとオプションが付く。それでも交通の便も良く、確保するのは簡単ではない。ところが、東北の公民館や体育館は、5千円とか1万円とか、時には好意で無料とか。この差は大きい。

2011-01-09 15:46:41
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

23:もちろん、それでも興行は大変だが、近場の町村で興行して移動距離を短くするとか、工夫次第でいろいろ可能。加えて、みちのくプロレスのスタイルは、空中殺法を主体としたメキシコのルチャ・リブレがベースなので、一見さんにも分かりやすく、楽しい。親子で楽しく観戦できる。

2011-01-09 15:50:09
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

24:会社を起こしたグレートサスケは、岩手の進学校を卒業していて、地元に伝手もある。よく調べたら、牛しかいないように見える東北の寒村でも、数百人レベルは人口があるので、娯楽が少ない東北ならば、受ける可能性はある。またメキシコ修行時代、そういう小規模会場での興行も経験した。

2011-01-09 15:52:50