黄昏町(柊)五十二日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【五十二日目】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

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私が目覚めると、周りに転がっていた男達の死体が消えていた。 彼らもきっと、この町のどこかで目覚めているのだろう。 「…移動しないといけませんね」 私はふらふらと立ち上がり、歩き始めた。 01 #hollytk

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そして一歩目を踏み出した瞬間、私の後頭部に衝撃。 一言も発する事なく、私は意識を刈り取られた。 02 #hollytk

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「これは……生きているのかね？」 後頭部がズキズキと痛む。 「おそらくは。念の為、『薬』を投与し手足を拘束しています」 体が動かない。手足の自由が効かない。 「『薬』を使ったのかね？この程度のバケモノ一匹に？」 私は、目を開いた。 04 #hollytk

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私をまるで珍しい生き物のように眺めているのは、でっぷりとした体をスーツに詰め込んだ老人だった。 「おお！生きているぞ！」 口が動かない。老人は側に立っている男にまくし立てる。 「本当に生きているぞ！君に任せて正解だった！」 「喜んで頂けたなら幸いです」 05 #hollytk

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まだ、体は動かない。先程の会話から察するに、麻酔の類か。 「で、このバケモノを使えば、わしの望みも叶うのだな！」 「ええ、勿論ですよ組長。ですがその前に」 男の右手が、老人から死角になる位置で動く。 「貴方には消えてもらいます」 06 #hollytk

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男は懐から拳銃を取り出す。 そして鈍い輝きを放つそれを老人に向け、躊躇なく引き金を引いた。 抑制された発砲音が空を裂き、老人の胸に鮮血の花が咲く。 柱に手足を括り付けられ、声も出せずに私はその光景を見ていた。 07 #hollytk

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倒れた老人の体にもう数発の弾丸を撃ち込んだ後、男は指を鳴らす。 「全て燃やせ」 「はい」 物陰から現れた数人の黒服に言葉少なに指示を出した男は、振り返ることなく去っていった。 08 #hollytk

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鋭い目をした男達が、柱に、床に、壁に、そして私に透明な液体をかける。 独特の刺激臭が目を突く。灯油だ。 「全員退避。点火する」 「了解」「了解」「了解」 全員が表に脱出した事を確認した後、男は懐からジッポーライターを取り出し、火を付けたまま放り込んだ。 09 #hollytk

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勢いよく燃え盛る廃屋の中で、私はなす術もなく転がっていた。 隣で同じように転がっている老人の亡骸を見ながら考える。 この老人は組長と呼ばれていた。組長。拳銃。黒服の男達の手際の良さ。老人の無警戒ぶり。 「ヤクザの跡目争い、ですかね」 10 #hollytk

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バケモノすらも道具にして、したたかに生きる人の欲望には、素直に感心する。が、だからと言って私まで燃やす事は無いんじゃあないだろうか。 炎が老人の亡骸を包み、柱を包み、一瞬にして私をも包んだ。 熱いというより、苦しい。急激に酸素が奪われ、肺が呼吸を強制する。 11 #hollytk

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吸い込まれた熱気が喉と気管と肺を灼く痛みは、まさにこの世の地獄。 喉を掴み苦しむ私はいつからだろうか、恐怖と苦痛と朦朧とした意識の見せる幻を見ていた。 宙に浮かぶユキが、燃え盛る両手で私の頬を撫でる。炎のように揺らめく黒髪の端が、火の粉になって空へ飛ぶ。 12 #hollytk

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私は灼ける喉でユキの名前を呼ぶ。お前はこんなにも苦しい思いをしたのか。お前はこれに耐えて、なおも笑って生きたのか。 ユキの幻が笑って首を横に振る。そして私の耳元に唇を寄せ…… 13 #hollytk

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燃え盛る天井が崩れ落ち、ユキの幻ごと私を押し潰した。 14 #hollytk

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──────── 【五十二日目】 【死亡】 【魂-2/『半透明』を失い『火玉(火耐性、探索+1)』を入手】 【魂13/力13/探索4】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、火玉(火耐性、探索+1) 15 #hollytk

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[町]君を捕らえた住人たちは、廃屋の柱に君を括りつけた。廃屋ごと燃やす気だ。《火耐性所持で脱出【魂+1】、不所持で焼死【魂-2/異形『火玉(火耐性、探索+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

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【組長】本名不詳。黄昏町が異界化する前から裏の秩序を保ってきた。 本来ならばとうの昔に引退してしかるべき程に老衰しているが、この町の特殊さ故に他の組からちょっかいをかけられる事も無く、反乱分子を周到にバケモノの餌にする事で覇権を保っていた。 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

【若頭】本名不詳。黄昏町が異界化してから産まれた、組長の私生児。幼い頃から周囲の人間が消される所を見て育ち、組長の右腕として粛清を行っていた。 彼が父の粛清を決意したのはある女性幹部が非業の死を遂げた事と関連があるとされるが、彼がその件について口を開く事はない。 #hollytk