ついった小説のようなもの

「「深夜のレストラン」で登場人物が「ときめく」、「跡」という単語を使ったお話を考えて下さい。」だそうなので
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ユィリラント @Yuyrilant

ついった小説書いてみんのか

2011-01-09 19:45:14
ユィリラント @Yuyrilant

人がまばらな、深夜のレストラン。1人の若いシェフが、客が食べた後の食器を片付けていた。空っぽのワゴンが、皿やカップ、ナイフやフォークで埋まっていく。 #twitnovelike

2011-01-09 19:54:50
ユィリラント @Yuyrilant

「ありがとうございました、またお越しくださいませ」中央の大テーブルを占領していた一団が帰って行った。それに声をかけてから、彼はまたワゴンを押して食器を片付けに、別のテーブルに行った。 #twitnovelike

2011-01-09 19:57:53
ユィリラント @Yuyrilant

そこで彼は、おや、と思った。窓際の席に、小柄な女性がいた。いや、むしろ少女といった方が正しいかもしれないというほど、小柄で細く、あどけない顔立ちをしていた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:00:11
ユィリラント @Yuyrilant

彼女の前に置かれたサーモンステーキの皿は、全く手が付けられていなかった。ただ、窓の外の闇を見つめて時々思い出したようにため息をつくのが聞こえた。いったいどうしたのだろう、と彼は思った。 #twitnovelike

2011-01-09 20:03:34
ユィリラント @Yuyrilant

彼は思い切って、声をかけてみることにした。「失礼いたします。どうかなさいましたか」「えっ?」彼女は声をかけられたことに驚き、彼のほうを振り向いた。しかし目が合った瞬間、気まずそうに視線をそらした。 #twitnovelike

2011-01-09 20:08:10
ユィリラント @Yuyrilant

「いえ…何でもありません。すみません、何でもないんです」そういいながらも、彼女の様子は明らかに何かありそうだった。「差し支えなければ、温めなおしてきましょうか?その方がおいしく召し上がれますよ」サーモンステーキはすっかり冷めていた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:11:40
ユィリラント @Yuyrilant

「あ…はい、お願いします」彼女はそういうと、皿を彼のほうに少しだけ寄せた。彼はワゴンに乗せた食器を重ね、場所を空けてサーモンステーキの皿を乗せた。彼は厨房に戻る途中、彼女のいた席の方を振り返ると、彼女はまた窓の外を見つめていた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:14:39
ユィリラント @Yuyrilant

使い終わった食器を流し台に移し、サーモンステーキを温めなおすようコックに頼んだ。彼は食器を洗おうとしたが、近くにいたウェイターが代わりに洗ってくれていたので、そのまま頼んだ。 #twitnovelike

2011-01-09 20:18:25
ユィリラント @Yuyrilant

しばらくしてサーモンステーキの温めなおしが済んだとのことで、彼はコックから皿を受け取って彼女の元へ運びに行った。彼女はやはり窓の外を見つめていたが、彼はその表情に変化を見て取った。 #twitnovelike

2011-01-09 20:21:08
ユィリラント @Yuyrilant

先ほどまではただぼんやりとしていた瞳が、どこか哀しげに潤んでいる。やはり何かあったのだ、と彼は思った。テーブルにゆっくりと近づき、「お待たせいたしました、サーモンステーキを温めなおしてきましたよ」と彼は声をかけた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:24:23
ユィリラント @Yuyrilant

「あ…ありがとうございます」彼女は何事もなかったかのように微笑んだが、潤んだ瞳からすっと零れた涙の跡まではごまかせなかった。 #twitnovelike

2011-01-09 20:25:59
ユィリラント @Yuyrilant

もう一度、彼は声をかけてみることにした。「何かつらいことでもありましたか?先ほどからとても哀しそうなお顔をされていますが」「えっ…」そこで彼女は初めて自分の頬を伝う涙に気がつき、あわててナプキンを取って拭った。 #twitnovelike

2011-01-09 20:28:09
ユィリラント @Yuyrilant

その仕草が何だか子どもっぽくて、彼はつい口元を緩ませた。しかし彼女は何か事情を抱えているのだ。笑ってしまっては失礼だ。彼は決心して、事情を聞いてみることにした。 #twitnovelike

2011-01-09 20:30:42
ユィリラント @Yuyrilant

「つらい時は、誰かに話した方が楽になることもあります。差し出がましいかもしれませんが、私でよろしければ話し相手になって差し上げますよ。もちろん、他の誰にも喋ったりはいたしません。それは約束します。…お嫌なら、話さなくても結構ですが」 #twitnovelike

2011-01-09 20:35:21
ユィリラント @Yuyrilant

彼女はたっぷり30秒は黙った後、「…お仕事に差し支えはありませんか」と遠慮がちに尋ねた。彼は声を潜めて、「大丈夫ですよ。この時間帯なら人は少ないですし」と囁いた。そして「ああ、もちろん食べながらで結構ですよ」と付け加えた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:39:11
ユィリラント @Yuyrilant

彼女はサーモンステーキを少々ナイフで切り分け、フォークでおずおずと口へ運んだ。そして何度かゆっくりとかみしめ、それをのみこんでからまた口を開いた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:41:00
ユィリラント @Yuyrilant

「…私、これからのことについて兄と喧嘩をして…私には私なりの考えがある、あなたには分からないでしょうけど、と言ったら、出て行けと言われてしまって…家を飛び出してきてしまったんです」そう言うと彼女はまたサーモンステーキを切り分け、フォークで口に運ぶ。 #twitnovelike

2011-01-09 20:44:12
ユィリラント @Yuyrilant

「…言い過ぎたとは思います。でも、あの時は頭に血が上って自分を抑えられませんでした。頭を冷やしてから帰ろうとしましたけど、なんだか気まずくて…」彼女はまたサーモンステーキを切り分け、口に運んだ。だんだんペースが速まってきた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:46:02
ユィリラント @Yuyrilant

「もう少し冷静に話し合えばよかったのに、どうしてこうなってしまったのかと思うと…何だか哀しくて」そう言うと彼女はサーモンステーキの残り細切れにし、一口ずつほおばっていく。なるほど、と彼は思った。 #twitnovelike

2011-01-09 20:50:03
ユィリラント @Yuyrilant

「確かにあなたのおっしゃるとおり、冷静に話し合うことが必要だとは思います。ですが、今日のところはまずお家へお帰りになって、お兄様に無事なお姿をお見せになってください。きっとあなたのことを心配なさっていることでしょう」 #twitnovelike

2011-01-09 20:52:20
ユィリラント @Yuyrilant

「そして言い過ぎたとお思いになるのなら、一言ごめんなさいと謝ればよろしいでしょう。きっと許してくださると思いますよ」彼は自分の思うところを言って、微笑んだ。彼女はそのメガネの奥に光る紫色の細い双眸に射抜かれたかのように、目を見開いた。 #twitnovelike

2011-01-09 20:58:15
ユィリラント @Yuyrilant

「はい、そうしてみます。…あの、色々とありがとうございました。あと…」急にいたたまれないような気持ちになり、彼女は席を立とうとした。「…鮭、おいしかったです」と一言添え、彼女は伝票と小さな鞄を持ってレジのほうへ向かった。 #twitnovelike

2011-01-09 21:03:44
ユィリラント @Yuyrilant

「いえいえ。お役に立てたのならば幸いです。ありがとうございました。」彼はそういって一礼した。 #twitnovelike

2011-01-09 21:04:31
ユィリラント @Yuyrilant

会計を済ませて足早に店を出た彼女は、すぐに近くのベンチにへたりこんでしまった。「どうしよう、余計帰れなくなってしまった…また、別の人を好きになってしまった…どうしよう」思考がぐるぐると同じ所を旋回する。まだ胸の奥が熱い。 #twitnovelike

2011-01-09 21:07:55