稲川淳二のつぶやき怪談　2015年9月21日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

もう声も出ないで見ていると・・・

稲川淳二 @Junji_Inagawa

前を向いていた真っ青な女が、スーッとこっちを向いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

濡れた髪の毛が、顔に貼り付いたまま、こっちを向いたその顔。 その女の人、こちらに向けた顔半分がない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ぶつけられた反対側の女の顔は、グシャグシャに潰れて、なかったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うわーっ！」 従業員は悲鳴をあげて、転がるように廃車の山から逃げ降りた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

足腰が立たない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

這ったままで、やっとの思いで事務所までたどり着き、 ご主人である社長に、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「しゃ、社長！あの車、いけねぇよ～ォ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

脂汗を流して、全身に鳥肌浮かべていきさつを話したんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

おそらく、その女の人が雨の降る日にあの車を運転していたんでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ワイパーを動かしながら運転中、 相手の車にぶつけられて、顔半分が潰れて死んだんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

本人は死んだ事を知らないのか、 悔しい思いで死んでいった車から離れられないのか、どっちかでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

運転席にいた女の人、 廃車になった車で、今でも運転しているんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ワイパーを動かしながら。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

女の人の思いを残したままの廃車だったんでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ご主人は思い出すように、 「稲川さんねぇ、たまにそんな因縁のある車がくるんですよねぇ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「匂いで分かるんですよ、血を吸った車は・・・」 「殺人に使われた車なんかね、あれはイヤなもんですよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私は聞きながら、解体屋さんの廃車を見上げていたんですけどね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（あれってまさに車の屍が集められている場所なんだなぁ） と思いましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

人に使われている時は、輝いていた車が、 最後は潰されて錆び付いちゃって哀れな姿にさらされて。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

何か廃車の悲しいすすり泣きが、今にも聞こえてきそうなんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（車の墓場なんだなぁ） ご主人の話を聞いて、つくづくそう思いましたねぇ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「つぶやき怪談」いかがでしたか？ 怖・楽しい時間を、楽しんで頂けましたでしょうか？ 喜んで頂ければ、何よりです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

不定期なんですが、また「つぶやき怪談」やりますんで、 よかったら遊びにきて下さいね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

皆さん、節電には気を配って下さい。 そして、何か、自分が出来ることを、試してみて下さいね。